文●九島辰也 写真●三菱



 三菱から新しいトライトンが発売された。我々ピックアップトラック好きにはたまらないモデルだが、実は三菱にとっても重要な一台となる。というのも、トライトンはヨーロッパを含む世界約150カ国で年間20万台前後売られているからだ。つまり、軽自動車を含め彼らのラインナップの中での一番のヒット商品となる。



 よって抜かりはないのだが、新型はかなり手が入っている。というか、オールニュー。フレーム、エンジン、インテリア、デジタルプラットフォームの全てが新しい。


すべてが新しくなったトライトンのメカニズム




 個人的に驚いたのは骨格部分の進化。“ラダーフレーム+リーフリジッド”のプリミティブな構造に大きな変化はないと思っていたが、昨今はそうでもないようだ。具体的にはラダーフレームの支柱になる部分にハイテン材、いわゆる高張力鋼板を使用し剛性を高めている。設計の変更もそうだが、素材から見直しているのだからすごい。



 リアサスもそう。リーフリジッドとひと口に言っても、今回はリーフを5枚から3枚に減らすなど大きく手を入れた。これは板間摩擦を減らすと同時に軽量化にも役立っているそうだ。そりゃそう、リーフ2枚分の重量が減った。またダンパーを太くしながら減衰圧を高めるなど柔らか方向に振っているのもポイント。これが道路からの入力に対し、突き上げを低減する。興味深いのは、こういった改良にもトレンドがあること。フォードやシボレーなどトップランナーたちもこうした方向へ舵を取っている。




トライトン GSR

 次にエンジンだが、これもブロックから新設計。4N16型と呼ばれるのがそうで、2.4リッター4気筒ディーゼルとなる。日本仕様の最高出力は150kW、最大トルクは470Nmだが、海外仕様にもこれをトップに110kWと135kWがある。ついでに言っておくと、キャビンも日本仕様は4ドアのダブルキャブ一本だが、海外には2ドアのシングルキャブ、それを延ばしたクラブキャブがある。個人的にはクラブキャブの導入が待ち遠しい。



 トランスミッションは6速AT、駆動方式は2WD/4WD切り替え式の四駆となる。もちろんここにはパジェロ譲りの4WDシステムが搭載される。「スーパーセレクト4WD-Ⅱ」がそれで、ローギアを直結させる4LLcが備わる。ヨンク好きならその実力はご存知だろうが、かなり心強い。しかもそれをダイヤル操作で行えるのだから便利である。


管理型オフロードコースでは実力をもてあますほど



トライトン GLS

 とはいえ、今回用意された管理型オフロードコースではその実力を試すことはできない。通常の電子デバイスでおおよそのギャップをクリアしてしまうからだ。空転したタイヤをセンサーが感知すればブレーキを摘んでトラクションを他のタイヤへ配分してくれる。「ドライブモード」にはグラベル(不整地)、スノー(雪)、マッド(泥)、サンド(砂)、ロック(岩)のセレクトがあるので、ドライバーはそれを選択するだけ。それでも、センターデフとリアデフのロック機構を持っているのは嬉しい。いざとなったら信頼できるのは機械式のロック機構だと今も信じている。




トライトン GSR

 インテリアではダッシュボードが今時になった。7インチカラーのデジタルメータークラスター、9インチのセンターディスプレイなどが目の前に並ぶ。昨年一年間三菱アウトランダーPHEVを乗っていたので、馴染みのあるしつらえだ。マルチアラウンドモニター付きなので、大きなボディではあるがしっかり周辺を認識できるのがいい。




オンロードでの走りはSUVクラス



トライトン GSR

 では実際に走らせた印象だが、オンロードの乗り心地は少し硬めで路面によっては細かいピッチングを感じる。それでもかつてのピックアップトラックとは比べ物にならない良さで、SUVに近づいたのは確か。リーフリジッドでここまでできれば上出来だ。それにパワステのセッティングもグッド。センター周りは軽く、そこから自然に重さが伝わってくる。扱いやすい部類の一つだろう。



 ディーゼルエンジンに関してはターボがうまい具合に働いている。ディーゼルの低回転時の強みにそれが組み合わされ、全領域で思いのほかきれいに回る。というか、あまり飛ばす気にならないので十分。ただアイドリングストップからのリスタートで点火のタイミングが合わない場面があった。ディーゼルエンジンのネガティブ部分だろうがここは手を入れる必要があるかもしれない。


まとめ


 なんて細かい話はともかく、生活を活気つけてくれるのがピックアップトラックの美点。「こいつに乗ってどこへ行こう!」なんて考えるだけでワクワクする。まさにこれこそエモーショナルクルマ。そんなモデルが日本でも増えることを期待したい今日この頃である。