リモートワークの浸透によるライフスタイルや価値観の変化、住宅価格の高騰などを受けて、郊外移住を検討する人が増加中です。これを読んでくださっている方の中にも、都心から郊外へ希望エリアを変えた人も少なくないのではないでしょうか。

広々とした公園などの豊かな緑、広い間取り、都心部よりも安い価格・・メリットも大きい郊外立地ですが、購入する場合、気になるのはやはり将来的な資産価値。そこで今回は、「こんなはずじゃなかった」と後悔しないための「買っていい郊外物件」の見極め方を解説します。

  • 郊外物件を買うなら「6つの条件」で見極めを - "資産価値が下がりにくい"郊外物件とは? (画像はイメージ / PIXTA)

■郊外物件を検討する人、なぜ増加?

以前の記事(「【最新版】東京近郊「分譲で住みたい駅」TOP30 - 東急沿線の人気が再燃! 1位 & 2位は昨年と変わらず」)で、人気が高いエリアの「郊外化」が進んでいる、というお話をしました。実際に弊社(Housmart)で2021年から3年間続けて実施した、首都圏でマンション購入を検討している方へのアンケート結果でも、その傾向が顕著に表れました。郊外や地方の名前が挙がる「その他」の回答数が2年連続で伸びるなど、居住エリアのニーズが多様化していることが伺えます。コロナ禍以降のライフスタイルや価値観の変化は定着傾向にあるようです。

  • 資料提供: ハウスマート

また、探しているうちに希望エリアを変更した人のうち60%以上が「都心から郊外へ」変えたといいます。

  • 資料提供: ハウスマート

郊外移住を検討する人が増えている背景には、次のような市況やニーズの変化が影響しているでしょう。

  • コロナ禍以前よりもリモートワークや在宅ワークなど働き方の自由度が高まった
  • 在宅時間が増えたことで、より広さや明るさなど居住性の高さを求めるように
  • 物件価格の高騰
  • 物価上昇による予算の見直し

■郊外物件こそ、資産価値を重視せよ

コストパフォーマンスに優れた物件が見つかりやすいのは、郊外物件の魅力の一つです。ただ、もしも購入するのであれば、将来的に手放す可能性も含めて「資産価値の高い」物件を選びたいもの。どこでも高い交通利便性や生活利便性が得られ、買いたい人の絶対数が多い首都圏・各都市圏と比べ、買い手の数も流動性も低い郊外は間違えると「売りたくても売れない」物件を買って後々後悔する可能性が高いのです。

仮に現時点では住み替える予定がなかったとしても、人生何があるかはわかりません。引っ越しのタイミングで家を売ることになったとしても、きちんと買い手がつく物件=資産価値の高い物件を購入しておけば、売却時に困ることもありません。泣く泣く二束三文で売ることになれば、引っ越し先の選択肢を狭めることにもなってしまいます。自分や家族の将来的な可能性を狭めないためにも、しっかり見極めておきましょう。

では具体的にはどんな物件がいいのか? ずばり「買っていい郊外物件」の条件は、下記の6項目になります。ポイントは「『そのエリアで買いたい人』のニーズを押さえること」です。

1.都心部への交通アクセスがよい
2.生活利便施設が充実している
3.物件としての「強み」がある
4.駅から物件までの周辺環境が充実している
5.再開発やまちづくりの計画がある
6.周辺環境が将来的にも損なわれない

それでは早速、一つずつ見てみましょう。

■資産価値が下がりにくい郊外物件、6つの条件

【1】都心部への交通アクセスがよい

郊外に住む場合、都心部への交通アクセスの良さが重要です。仮にご自身がリモートワークで出勤する必要がなかったとしても、次にあなたの家に住む人もそうであるとは限りません。都心部に出やすい立地であれば、物件の大きな魅力となります。具体的には複数路線や新幹線が通るようなターミナル駅(東京駅・品川駅・新宿駅・池袋駅など)へのアクセスのしやすさ(30分以内・直通か)が鍵です。

【2】生活利便施設が充実している

次に、生活利便施設が充実していることもポイントです。スーパーは自転車圏内に複数あるか、もしくは大きなスーパーがあるか。保育施設が駅までの道中、あるいはマンションのすぐ近くにあるか。さらに休日や日中にパートナーやお友達、家族で過ごせるカフェなどのサードプレイスがあると、なお良しです。

生活利便施設は、必ずしも駅前になくても構いません。郊外の大規模物件に多いのは、駅を中心にした駅前広場やインフラとセットの大型開発されているマンションか、工場や企業の所有地だった広大な土地等がディベロッパーによって大型開発されたケース。後者の場合、駅から離れていることもあり、マンション敷地圏内にスーパーや保育施設、クリニックなどの生活利便施設、さらには駅までのバスなどの交通機関も用意されている場合も。「家の徒歩圏内・自転車圏内でどれだけ便利に過ごせるか」を一つの基準にしましょう。

【3】物件としての「強み」がある

さらに見たいのは、物件としての「強み」です。例えば、こうした要素が挙げられます。

  • 公園が近い立地
  • 魅力的な学区である
  • 大規模マンションの共用施設やコミュニティが充実している
  • 眺望のよさ

公園が近くにある物件は、お子さんがいる家庭だけでなくDINKs(ご夫婦のみ)や単身世帯にも人気です。また、人気の公立小学区・中学校の通学区圏内のマンションは、それだけで高値がつくことも。さらに、先ほどお話ししたような大きな敷地内に豊富な商業施設が揃っている場合、マンション住民のための共有施設が充実しており、大規模マンションならではの生活圏やコミュニティが醸成されていれば、それも付加価値になる場合があります。

眺望のよい物件は、開放感やステータスにも繋がるのでいつの時代も強みになります。これは住戸の方角や周辺建物との関係が影響するので、内覧時にチェックしましょう。内覧前にGoogleマップ等で推測することもできます。

【4】駅から物件までの周辺環境が充実している

先ほどお伝えした点にも繋がりますが、駅徒歩距離は郊外物件の場合、絶対的価値にはなりません。それよりも重視したいのは、家のまわりでどれだけ生活が整うか、ということ。また、駅から自宅までに保育施設やスーパー、商店街があったり、緑道や公園が整備されていれば駅までの往来で用事が完結できるので便利。駅徒歩距離はさほど重要ではなく暮らせるでしょう。これはさすがにネット上では判断できないので、ぜひ駅から物件までの間を歩き回ってみてご自身の目で確認を。

【5】再開発やまちづくりの計画がある

まちは生き物です。そこに住む人も年をとっていきますし、人気のあるエリアは常に人が新しく引っ越してきて、家族を作ったりそこで商売を始めたりします。そのためには、市区町村の自治体レベルでのまちづくり計画がしっかり描かれていることが必要です。移り変わる時代に合わせて、今あるまちの課題に対して、きちんとどう対処していくかのビジョンがあるまちであれば、今後も「そのまちに住みたい」という人がいる、つまりあなたのマンションを買いたいと思ってくれる人がい続ける、ということになります。すでに再開発が終わったばかりの郊外エリアであれば別ですが、こうしたビジョンが見えない郊外エリアはちょっと心配です。

自治体の公式ホームページで調べることができるので、ぜひ購入前には市区町村や最寄り駅周辺で計画があるか、それはどういった内容の計画なのか、一度チェックしてみてください。

【6】周辺環境が将来的にも損なわれない

これは少し上級編にはなりますが、周辺が落ち着いた住宅街で暮らしやすそう・・など、物件のすぐ側の周辺環境がメリットだと思った場合に、将来もその環境が維持されるかどうか確認しておくと安心です。確認する一つの方法としては、「用途地域」を参照します。用途地域とは、都市計画上、都市を住宅地、商業地、工業地などいくつかの種類に区分して、その土地の使い方をあらかじめ定めたもの。「住居専用地域」に指定されていれば、住宅のための地域として保護されていることになるので、工場や大規模な商業施設、ホテルや風俗店などは建設できません。将来にわたって、住宅街としての環境で暮らしつづけることができます。

用途地域は、ご自身で調べるか担当の不動産会社に確認してみましょう。調べ方は難しくありません。「市区町村 × 用途地域」もしくは「市区町村 × 都市計画図」などでネットで検索すると市区町村がアップしている情報が確認できるでしょう。電子化されていない場合は、役所で問い合わせましょう。

また、物件の眺望がよいなど、物件のすぐ側の好条件が将来維持されるかを推測することもできます。隣接する土地が公共の公園や緑地、公立の小中学校、神社仏閣などである場合、区画整理などよほどのことがない限りは長期にわたってその敷地が保たれると考えられます。いきなり高層のビルが建つ、高速道路になる・・ということは考えにくいので、一つの基準値とするとよいでしょう。

■郊外物件でわからないことは、地元の不動産会社に聞いてみよう

いかがでしたでしょうか。もしも検討しているエリアの特性や、同じくそのエリアを選ぶ人たちの属性やニーズがわからない・・という場合は、その地元の不動産会社に聞いてみるのもいいでしょう。そのエリアに特化している不動産会社であれば、住んでいる人たちの中でしか知らないような学区人気や居住エリアの人気の良し悪しなども把握しているはず。そうした質問から「買っていい物件」を見極めるだけでなく、「信頼できる不動産会社」を見つけることにもつながるはずです。