全国の高校生たちがビジネスアイデアを競い合うコンテスト「第10回 マイナビキャリア甲子園」の決勝大会が3月9日、10日に渋谷ストリームホールで開催された。
記念すべき第10回は、過去最多となる1万人以上が参加。3月9日は「Group Creation」部門、3月10日は「Group Innovation」部門でそれぞれプレゼン大会を実施し、優勝チームが選出された。
今回は、3月9日に実施された「Group Creation」の決勝大会の様子をお届けしたい。
■過去最多となる1万125人がエントリー!
「マイナビキャリア甲子園」は、企業や団体が出題するテーマに対し、高校生チームが課題解決に挑むビジネスコンテスト型探究学習プログラムだ。2014年にスタートして以来、参加者数は年々増加し、第10回の節目となった今年は過去最高となる全2,736チーム、計1万125人が参加した。
今年のテーマは「BEYOND DECADE(10年を超える)」で、このテーマに基づいて各企業・団体が出題したテーマの中から、高校生チームが1つずつテーマを選択して自らのアイデアを披露。今年から部門が分かれ、新たな価値を創造する「Group Creation」と、既存のサービスや価値を再編集し、新たな価値を生み出す「Group Innovation」部門でそれぞれ優勝、準優勝、審査員特別賞を表彰する仕組みが採用された。
今年2月には、1次審査(書類審査)、2次審査(プレゼン動画審査)を突破した72チームによる準決勝大会が実施され、決勝大会に進出する全12チーム、計35名が選出された。
決勝大会では、約半年にわたって熟考したアイデアを各チーム10分の持ち時間でプレゼンし、両部門の優勝チームを決定。審査基準は、「情報収集力」「テーマ分析力」「実現可能性」「持続可能性」「社会的影響力」の5つに加え、Group Creationでは市場に存在しない新しい価値が創造できているかが問われる「新規創造性」も対象となった。
「Group Creation」部門で、それぞれ決勝に勝ち残った代表チームは下記のとおり。
- エルテス代表|Andante(さいたま市立大宮国際中等教育学校)
- 住友林業代表|Jupiter(筑波大学附属高等学校)
- たかの友梨ビューティクリニック(不二ビューティ)代表|可能4姉妹(國學院大學久我山高等学校)
- 生命保険協会代表|質疑応答独占(渋谷教育学園幕張高等学校/麻布高等学校)
- 全農代表|らーめん。だ(豊島岡女子学園高等学校)
- J-POWER代表|クローバー・ジャーニー(東京工業大学附属科学技術高等学校/千葉県立幕張総合高等学校)
■優勝者はチーム「質疑応答独占」! バーチャル時代、精神もカバーする“精命保険”が必要
今回の「Group Creation」で優勝に輝いたのは、渋谷教育学園幕張高等学校と麻布高等学校に通う二人組で結成されたチーム「質疑応答独占」。生命保険協会が出題した「ITの発達による10年後、その先の社会を想像し、その社会において生命保険会社が提供すべき新しい価値を提案せよ」というテーマに対し、独自のアイデアを示した。
チーム「質疑応答独占」は、「もはや生命保険は時代遅れで、ここ10数年で世界はめまぐるしく変化している。例えば、SNSによって誰しもがクリエイターの時代となり、人々はアカウントを切り替えることによって自己を転々としている」と定義する。
そして、コロナ禍を経て急速にバーチャル市場が拡大し、世界はリアルからバーチャルへ変容したこと、近年のジェンダーの意識の変化によって、体の性より心の性、つまり物質より精神が重視されるようになってきていることなどに着目。
「つまり、世界は物質から精神に自己の定義の内面化が進んでおり、これまでのような肉体に対する保険以上に、精神に対する保険のニーズが高まる。私たちは今の生命保険ではなく、精神をカバーする“精命保険”を提案したい」
10年後には、誰しもメタバース空間に集まる未来がやってくるとチーム「質疑応答独占」は予測。しかし、法整備が整っていないメタバース空間はいわば無法地帯で、法整備にはかなりの時間を要すると見込んでおり、だからこそメタバースと保険の組み合わせは次世代のキラーコンテンツであると主張する。
「例えば、人格保険加入者のAさんは、メタバース空間で何者かに悪意を持ったなりすましをされ、自分のアバターに悪いイメージがついてしまった。一度ついたイメージはなかなか払拭できないので、新たなアバターでやり直したい。しかし、すでに課金もしていて、リスタートのハードルが高いとAさんは考える。
でも、人格保険、精命保険なら金銭補助によって新たなアバターを作成し、リスタートが可能。今回は事例としてメタバースを挙げたが、この保険は汎用性があり、多くの可能性を秘めている」
ビジネス的側面でいえば、保険加入者の低年齢化と保険加入対象の増加から従来の生命保険以上のユーザー獲得が見込めると指摘。VR市場の拡大に伴い、市場規模も拡大するであろうとの展望も語った。
審査員として参加したSenjin holdings CEOの下山明彦氏は、「めちゃくちゃ面白いプレゼンだった。サービスもすごくイメージができたし、ゲームに課金してそこが拠り所になっている人たちも増えていく中で、それを加速していくイメージができた」と絶賛した。 表彰式でトロフィーを授与したマイナビ執行役員の小作正幸氏は、「圧倒的なクリエイティビティの高さが評価につながった。実現可能性には課題が残るものの、独自かつ新規創造性において抜群の高さを誇ったことが審査員の中で一致した」と評価した。
準優勝を果たしたのは、さいたま市立大宮国際中等教育学校に通う高校生らで結成された4人組チーム「Andante」だ。
エルテスが設定した、「行政サービスがデジタル化された10年後、誰もが快適に暮らせる次世代都市を目指し、エルテスグループが推進すべき事業を提案せよ」というお題に対し、AIがオープンデータから地域のニーズを分析し、その解決に向けた学生団体とのつながりをオンライン上で形成するサービス「コライブリー」を事業展開すると提案した。
審査員特別賞は、東京工業大学附属科学技術高等学校と千葉県立幕張総合高等学校に通う高校生コンビの「クローバー・ジャーニー」が受賞。電源開発(J-POWER)の「10年後の地域社会の姿を自由にデザインし、その実現に貢献するJ-POWERグループの新たなビジネスを提案せよ」というお題に対し、全国の閉鎖ゴルフ場を活用した「グリーンエナジーハブ構想」を提案して注目を集めた。
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