西武鉄道は、無線式列車制御(CBTC)システムの実車による走行試験を多摩川線(武蔵境~是政間)で実施すると発表した。3月10日から開始しており、営業運転終了後の時間帯に走行試験を行う。

  • CBTC試験車両(西武鉄道101系)

CBTCシステムは、無線技術を活用して列車の位置と速度を常時把握し、列車間の安全な距離を確保するよう速度を制御する次世代の信号保安装置。従来と比べて省設備化されるほか、高度な自動運転や踏切の鳴動時間の最適化など、今後の技術革新の基盤となることが期待されている。

今回の試験では、西武鉄道が開発を進めている「西武式CBTCシステム」の実証を行う。同社の全車両と相互直通乗入車両ですでに搭載されている設備や地上設備の一部を活用したシステムで、効率的にCBTCシステムを実現できるという。

  • 無線式列車制御(CBTC)システム概要図

  • 速度および距離算出試験

  • 列車検知機能試験

おもな検証項目は5項目。「速度および距離算出試験」でCBTC車上装置が自列車の進行方向、速度、移動距離を正しく認識できることを確認。「列車検知機能試験」ではCBTC地上装置が車上装置と無線通信を行い、列車位置を正しく認識できることを確認する。これら2つの情報をもとに、「列車制御機能試験」でブレーキパターンなどの車両制御情報が適正に更新されることを確認する。

「踏切機能試験(基礎機能試験)」は、CBTCによる踏切制御への変更の影響を検証し、踏切内に異常がある場合に踏切手前までに停止するブレーキパターンを出力することを確認する。「踏切機能試験(踏切制御高度化試験)」にて、列車速度に応じて踏切鳴動開始点を切り替えることにより、踏切鳴動時間の適正化が図れることを確認する。

  • 列車制御機能試験

  • 踏切機能試験(基礎機能試験)

  • 踏切機能試験(踏切制御高度化試験)

今後、走行試験での検証結果や鉄道各社の動向などを踏まえて次世代信号システムの方式を決定し、2030年代に全線での導入をめざすとしている。