3月に入り、卒業式を迎える時期になった。4月が近づくにつれて、入社または大学進学等で新生活を始めるため、他地方から上京してくる人も多いと思われる。知っての通り、首都圏の鉄道路線はJR・私鉄の路線が無数に入り交じっており、それらが集束する主要駅は、いわば「ダンジョン」のように複雑化している。
今回、都内有数の「ダンジョン駅」とされ、再開発も進む渋谷駅に焦点を当て、同駅で鉄道各線を乗り換える際の近道や目安の時間、経路を実際に歩いて調査した。ただし、今後も工事の進捗によって通路が変わる可能性があるため、当記事は2024年2月時点での情報として見てもらいたい。
JR渋谷駅東口から東横線・副都心線、JR中央改札から銀座線へ
JR渋谷駅を中心に見た場合、東側に東京メトロ銀座線、西側に京王井の頭線の渋谷駅がある。東側の明治通りの地下を東急東横線・東京メトロ副都心線、東側の宮益坂付近から西側のスクランブル交差点にかけて地下に東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線も通っている。
JR線の渋谷駅は、南側から順に「新南改札」「南改札」「中央改札」「ハチ公改札」という4つの改札がある。南改札は1階にあり、山手線ホームの6~9号車、埼京線ホームの3・4号車(湘南新宿ラインの10両編成は7・8号車、15両編成は10号車)付近が近い。3階にある中央改札への階段等は、南改札への階段を挟むように位置している。1階のハチ公改札に近い階段・エスカレーターは、山手線・埼京線ともにホームの新宿方に位置する。
まずはJR渋谷駅の南改札から東口に出て、東急東横線・東京メトロ副都心線の渋谷ヒカリエ改札まで歩いてみる。南改札を出た後、右側の東口に進むと、「渋谷スクランブルスクエア」の1階出入口と階段・エスカレーターが現れる。地下2階へ直行する下りエスカレーターを降り、道なりに直進。通路が開けたところで、東急東横線・東京メトロ副都心線の渋谷ヒカリエ改札にたどり着いた。JR線の南改札前から「渋谷スクランブルスクエア」前のエスカレーターを降り、渋谷ヒカリエ改札前まで、筆者の足で約2分かかった。
JR線から東京メトロ銀座線に乗り換える場合、JR線の中央改札と東京メトロ銀座線の渋谷スクランブルスクエア方面改札を行き来すると良い。両者は同じ階に近接しており、筆者の足だと約30秒で着いた。JR線の中央改札から東急東横線・東京メトロ副都心線の渋谷ヒカリエ改札に向かう場合、中央改札を出てすぐのエスカレーターを乗り継ぎ、1階まで降りることになる。1階まで降りた後は南改札からの動線と同じだった。
東急電鉄と東京メトロの地下ホーム、構造は
東急電鉄と東京メトロのホームは、東京メトロ銀座線を除いて地下化されているため、JR線と比べてより複雑になると考えられる。東急東横線・東京メトロ副都心線のホームは地下5階にあり、ホームからの昇降設備が複数設置されている。その中で横浜方にある階段・エスカレーターを上がると、地下4階コンコースを経て渋谷ヒカリエ2改札(地下3階)に出る。渋谷ヒカリエ1改札へのエスカレーターは7号車の乗降位置からが近い。2・4・5号車付近の階段・エスカレーター・エレベーターからは、東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線との乗換通路に近い位置に上がることができ、ホームの和光市方最前部の階段・エスカレーターは宮益坂中央・東改札(地下2階)につながる。
東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線のホームは、東急東横線・東京メトロ副都心線よりも浅い地下3階に位置する。押上方最前部の階段・エスカレーターは宮益坂中央・東改札に近く、5・6・8号車付近の階段・エスカレーターはJR線のハチ公改札に近い。ホーム中央林間方の階段等は道玄坂改札に通じている。東急東横線・東京メトロ副都心線との乗換階段・エスカレーターはホームの3・4号車付近にあり、地下4階のコンコースに降りられる。
東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線ホームから乗換階段を下り、東急東横線の3・4番線ホームに下りるまで約1分30秒、東京メトロ副都心線の5・6番線ホームまでは約1分15秒だった。もちろん、渋谷ヒカリエ1改札で入場し、乗換階段経由で東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線ホームまで歩くこともできるが、その場合は2分ほどかかる。
東横線・副都心線から銀座線、JR線ハチ公改札から東急線改札へ
東急東横線・東京メトロ副都心線と東京メトロ銀座線を乗り換える場合、東急東横線・東京メトロ副都心線の渋谷ヒカリエ改札から「渋谷ヒカリエ」前のエスカレーターで地上に上がると、すぐ隣に東京メトロ銀座線の明治通り方面改札がある。ただし、縦の移動に時間がかかるため、筆者の足で約2分20秒かかった。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線の場合、隣の表参道駅で東京メトロ銀座線と同一ホームで乗り換えられるので、無理に渋谷駅で乗り換える必要はないだろう。
JR線から東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線に乗り換える場合、JR線のハチ公改札と、東急線の宮益坂中央改札またはハチ公改札が近い。JR線のハチ公改札を出場して右に進むと、宮益坂口に出る。その右手に見える階段・エスカレーターがB7出入口となっており、ここを下ると東口地下広場前に出る。階段を降りた先で道が二手に分かれるが、左手の都営バス定期券発売所があるほうの階段を降りていく。
都営バス定期券発売所前の階段を降りると東口地下広場となり、正面に「UPLIGHT COFFEE」が見える。その左側の通路を進むことで、宮益坂中央改札前にたどり着く。この経路は筆者の足で約2分24秒だった。ちなみに、「UPLIGHT COFFEE」の右側にある通路を進むと、渋谷ヒカリエ1改札と宮益坂中央改札の間に出る。
次に、JR線のハチ公改札から左側に進んだ場合、ハチ公口に出た。この出入口は常時多くの人でにぎわうハチ公前広場や、スクランブル交差点に面している。JR線のハチ公改札(ICカード専用側)を出た正面には、階段の幅が広いA8出入口がある。ここを下ると、地下1階「しぶちかショッピングロード」が続く。途中で左側へ道が分かれるが、曲がらずに直進。その先に自動販売機・証明写真コーナーがあり、隣に地下2階へ降りる階段もある。この階段を降りると、東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線のハチ公改札(きっぷ券売機側)にたどり着く。筆者の足で約1分45秒だった。
ちなみに、JR線のハチ公口では、ICカード専用改札のすぐ隣にも幅の細い階段があり、これを下っていくと東急線ハチ公改札の「MAGNET by SHIBUYA109」出入口付近に降りられた。こちらを通った場合、筆者の足で約1分20秒だった。JR線ハチ公改札のきっぷ券売機はICカード専用改札よりも道路側に位置しており、そちらを利用した場合はもう少し時間がかかると考えられる。
東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線と京王井の頭線を乗り換える場合は、地下ハチ公改札または道玄坂改札から、A5b出入口をめざすと良い。両改札の間にある、柱に京王井の頭線への矢印が掲示された階段を上がると、左手に期間限定スイーツ販売「MY SWEETS」があるので、その通路をまっすぐ進む。壁に京王井の頭線への矢印が表示された階段を上がれば、A5b出入口となる。地上に出てすぐ右手に薬局「サンドラッグ」があれば道順通りだ。
A5b出入口から地上に上がったところで、「渋谷マークシティ」は目の前。あとは出入口前のエスカレーターで2階に上がって直進すれば、京王井の頭線のりばとなる。東急線ハチ公改札のきっぷ券売機前から時間を計ったところ、約3分15秒だった。道玄坂改札から出場した場合は、先に階段を上がり、「渋谷ちかみち」総合インフォメーションとラウンジに挟まれた通路を進んでも「MY SWEETS」前に合流できる。
東急電鉄・東京メトロの宮益坂中央・東改札を通る時に注意してほしいこととして、JR線・京王井の頭線と乗り換える場合は必ず宮益坂中央改札を通らなければならない。宮益坂東改札を出場すると、渋谷駅西側へ抜けるために渋谷ヒカリエ改札前かB1出入口(原宿方面)への通路を経由しなければならず、大幅な遠回りとなる。
JR線・東京メトロ銀座線から京王井の頭線への乗換え経路は
最後に、JR線・東京メトロ銀座線と京王井の頭線の乗換え経路を調べていく。京王井の頭線の渋谷駅は、JR渋谷駅から見て西側にある「渋谷マークシティ」の2階に位置しているため、乗換えに多少時間がかかる。まずはJR南改札から歩いてみる。
JR線の南改札を左側へ進むと、「みどりの窓口」のある西口に出られる。続いてバスのりばに向かって右へ曲がり、公衆トイレの前を通る。突き当たりにあるモヤイ像を目印にしよう。モヤイ像の先で歩道が二手に分かれるので、31番バスのりばがある右側へ進む。高架下の横断歩道を渡ると、「渋谷マークシティ」の1階出入口前にたどり着く。
京王井の頭線の改札・のりばは2階にあるため、出入口前のエスカレーターで2階に上がった後、まっすぐ進めば改札口が見えてくる。JR南改札から西口に出て、モヤイ像前を通り、「渋谷マークシティ」の2階に上がって京王井の頭線の改札前に到着するまで、筆者の足で約4分45秒かかった。東急東横線・東京メトロ副都心線の渋谷ヒカリエ改札からJR南改札を経由しても京王井の頭線に乗り換えられるが、その場合はさらに2分近くかかる。JR線の南改札がある西口を出てすぐの場所に横断歩道があるので、これを渡ってから右折しても良い。
次に、JR線の中央改札と東京メトロ銀座線のスクランブルスクエア方面改札から京王井の頭線に向かって歩く。どちらも改札を出た後、京王井の頭線の案内表示に従い、東京メトロ銀座線の高架沿いを歩いていく。途中にさしかかる階段を下り、「渋谷スクランブルスクエア」の店舗案内が多数掲出された連絡通路を進む。そのまま「渋谷マークシティ」の2階に入るので、直進すれば京王井の頭線の改札口に着く。筆者の足で約4分かかった。JR線の南改札の右側、シャッターの裏側にある連絡階段を上がっても2階連絡通路に合流するが、所要時間はあまり変わらなかった。
JR線のハチ公改札から京王井の頭線への乗換えも、横断歩道を渡ってエスカレーターで2階に上がる。スクランブル交差点を渡ってから左折するか、先に左折してから高架下の横断歩道を渡るかのどちらかになるが、ともに信号の待ち時間次第で、所要時間は3~4分程度が目安になるだろう。なお、「渋谷マークシティ」1階出入口の右手にあるエスカレーターは常時混雑しているので、少しでも急ぐ場合は1階出入口の左手にある階段から2階に上がると良いと思われる。
ここまで紹介していなかったが、JR渋谷駅には新南口もある。利用する場合、埼京線ホームを恵比寿方に進み、旧ホームの一部を使用した連絡通路を渡る必要がある。念のため、埼京線ホームの中央改札方面の階段から新南改札まで時間を計ったところ、筆者の足で約4分20秒かかった。新南口に「JR東日本ホテルメッツ 渋谷」も併設されているが、私鉄各線の改札から最も離れており、乗換えには向いていない。
しかし、新南口から西側の「渋谷サクラステージ」に直結する連絡通路が昨年12月から供用開始したことで、渋谷駅南側の桜丘町地区と渋谷三丁目地区の間が行き来しやすくなった。同時に、西側の「渋谷サクラステージ」と東側の「渋谷ストリーム」をつなぐ自由通路も暫定供用を開始している。先の話だが、この自由通路に接続する新改札口が2024年秋に開通予定、新駅舎「渋谷駅南口橋上駅舎(仮称)」も2026年度に完成予定となっている
今回計測した所要時間は、改札内で乗換え可能な東急東横線・東京メトロ副都心線と東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線を除き、すべて改札外同士で計測した。実際には列車を降りてから改札を出るまでの時間が加わるため、正確な乗換え時間は当記事よりもう少しかかることをご理解いただきたい。いずれにしても、他社線との乗換えに近い改札口と、その改札口につながる階段・エスカレーター等に近い乗降位置を体感で覚えていけば、都心の主要駅でも迷いにくくなるだろう。
首都圏には渋谷駅だけでなく、新宿駅、東京駅、池袋駅、横浜駅など、「ダンジョン駅」と呼ばれる駅が複数存在する。新生活の本格的なスタートは4月からと思われるが、これらの駅を通る予定がある場合、乗換え時間・経路を覚えるべく、事前に下見してみても良いかもしれない。