会社員は基本、会社が行う年末調整によって、確定申告をする必要がありません。しかし、会社員でも副収入によって20万円を超える所得を得ている場合は確定申告が必要になります。たとえば、メルカリでものを売ったことで20万円以上の収入を得た場合はどうでしょうか。いくつかの事例を上げて、確定申告の要不要と、確定申告をしなかった場合にどうなるのかを解説します。
メルカリの売上で確定申告が必要なケース
フリマアプリのメルカリは個人間でさまざまな品物を売買できるサービスです。メルカリで得た収入も、条件に当てはまれば確定申告が必要となります。メルカリで売買したことで得た利益は「譲渡所得」、「事業所得」、「雑所得」にいずれかに該当し、どの所得であるかによって、確定申告の方法が変わってきます。次のケースにおいて、所得の種類と確定申告が必要かどうかを確認してみましょう。
1. 不要な生活用品を売って得た利益
通常、ものを売って(譲渡して)得た所得は「譲渡所得」となりますが、衣類や日用品、雑貨など生活に必要なものである「生活用動産」を譲渡して得た所得は非課税となります。そのため、服や雑貨、生活用品をメルカリで売って利益が出たとしても、確定申告をする必要はありません。ただし、貴金属や書画、骨董品など1個または1組の価額が30万円を超えるものは「譲渡所得」として課税されるので確定申告が必要となります。
2. 楽器やキャンプ用品など趣味で使うものを売って得た利益
楽器やキャンプ用品、スポーツ用品など、趣味で使う道具を売って得た利益は、生活用動産の譲渡になるのか微妙なところです。この場合、確定申告が必要かどうかを判断する方法として、年間の売却益から判定する方法があります。年間の売却益が50万円以下であれば、確定申告は不要となります。これは「譲渡所得」の特別控除額が50万円であることによります。この場合の年間の利益は、それを取得した費用と譲渡費用(売却に要した手数料など)を引いたあとの利益となります。そのため、買った時の値段を下回っていれば、課税されることはないでしょう。
3. 営利目的でものを売って得た利益
メルカリを利用して継続的に利益を上げることを目的に、ハンドメイドの商品を売ったり、商品を仕入れて転売したりする行為は営利目的とされ、それによって得た利益は、「雑所得」または「事業所得」に該当します。たとえば、ハンドメイドのアクセサリーや小物などを販売して、年間20万円を超える利益が出た場合は、確定申告が必要になります。ただし、この場合の利益は、販売収入から必要経費を引いた利益となります。25万円を売り上げて、必要経費が6万円かかった場合は、所得は20万円以下になるので確定申告は必要なくなります。
雑所得と事業所得の違い
営利目的で販売して所得を得た場合、その所得は「雑所得」になるのか「事業所得」になるのか迷うところです。明確な区分はありませんが、国税庁による指針では以下のように区分できます。
一般的に帳簿の作成や帳簿書類を保存している場合は「事業所得」、帳簿の作成や帳簿書類の保存をしない場合は「業務に係る雑所得」とみなされます。しかし、令和4年分以後の業務に係る雑所得は、前々年の副業の収入金額が300万円を超える場合は、書類の保存が義務付けられました。また、前々年分の副業の収入金額が1000万円を超える場合には、確定申告書に収支内訳書などの添付が必要となります。
これまで、営利を目的として継続的な収入を得ているケースでは、帳簿書類の保存をしている場合は「事業所得」、していない場合は「雑所得」と概ね区分ができました。しかし、雑所得でも収入が300万円を超えると書類の保存が義務付けられたことで、個別に判断する必要が出てきました。わかりやすい区分では、「書類の保存があり、かつ300万円超え」は事業所得、「書類の保存なし、かつ300万円以下」は業務に係る雑所得と判断できるでしょう。
*事業所得は青色申告が利用できる
雑所得と事業所得の扱いの違いは、損益通算と青色申告ができるか否かです。事業所得は損失が発生した場合に、給与所得などと損益通算ができます。また、事業所得は青色申告が利用できます。青色申告者になると、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。青色申告をするには、開業届とともに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
メルカリの収入で必要経費と認められるもの
メルカリで商品を販売して、年間20万円以上の収入を得たとしても、それがそのまま所得になるわけではありません。収入から必要経費を引いた金額が20万円を超えた場合に確定申告が必要になります。そこで、メルカリ販売において考えられる必要経費を確認しておきましょう。
- 商品の仕入れ代金
- 仕入れ時の配送料
- 販売手数料
- 梱包材などの費用
- 商品の発送料
- インターネット通信費
- 事務所の家賃や光熱費
これらは一例であり、販売する商品によって、必要経費の内容は変わってきます。国税庁のHPには、必要経費の説明として「総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額」とあります。必要経費として計上するには、直接的に要したものでなければならないということです。
家賃や光熱費、通信費など、普段の生活でも使っている費用は、プライベートと業務を分けて計上する必要があります。これを「家事按分」といいます。それらの費用のうち業務の遂行上直接必要な部分が50%を超えていれば家事関連費として計上できます。つまり、通信費であれば、半分以上を業務で使っていないと計上できないというわけです。ただし、業務に必要である部分を明らかに区分することができる場合には、必要経費に算入して差し支えないとの記述もあるので、記帳を正しく行えば50%以下でも経費にできる可能性があります。
確定申告をしなかった場合どうなる?
最後に、確定申告が必要なケースで、確定申告をしなかった場合はどうなるのかを解説します。
確定申告をしなかった場合は「無申告」として扱われます。無申告となった場合は、納める税金のほかに「無申告加算税」が課せられます。無申告加算税は、納付すべき税額に対して、50万円までの部分は15%、50万円を超え300万円までの部分は20%、300万円を超える部分は30%の割合を乗じた金額となります(令和5年分以降)。ただし、確定申告の期限が過ぎたあとでも、自主的に確定申告をした場合は無申告加算税が軽減される措置があります。
また、虚偽の申告や帳簿の改ざんなど、悪質であると判断されると無申告加算税よりも重い「重加算税」が課せられます。さらに、納めるべき期日までに納めなかった場合は、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じて「延滞税」が課せられます。
これらはあくまでも「可能性がある」という話であって、何事もないケースの方が多いかもしれません。しかし、絶対にバレないという保証もありません。確定申告は義務である以上、ルールに則って正しく申告をしましょう。