ダイハツ工業は認証不正問題を受けて経営体制を変更する。2024年3月1日付で代表取締役社長に就任するのは、トヨタ自動車で中南米本部長を務める井上雅宏氏だ。ダイハツは今後、どんな会社になっていく? トヨタとダイハツの共同会見で語られたこととは?

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    ダイハツが経営体制を刷新! トヨタ中南米本部長が新社長に

ダイハツは軽自動車専業に?

ダイハツの奥平総一郎社長、松林淳会長は退任する。会長職は廃止となる。

井上新社長を支える副社長の職には、トヨタ自動車九州取締役副社長でレクサス電動化推進PJT担当(Chief Project Leader)の桑田正規氏が新たに就任。ダイハツからは星加宏昌氏が引き続き副社長の職にとどまる。法規・認証関連を担当する取締役(非常勤)には、トヨタ カスタマーファースト推進本部で副本部長を務める柳景子氏が就任する。

ダイハツの今後についてトヨタの佐藤恒治代表取締役社長は、事業領域を「軽に軸を置いた会社」と定め、海外事業の企画、開発、生産についてはトヨタから委託を受ける形に変更すると言明。認証不正が発生した海外向け小型車事業が「ダイハツの負荷」となっていた可能性に言及し、「トヨタの得意領域はトヨタで取り組む」として、海外におけるダイハツとの役割分担を見直す方針を示した。

「軽自動車に軸を置く」というダイハツの在り方については、報道陣から「軽自動車の専業になるのか」との質問が飛んだ。これに対して佐藤社長は、「その前提を置きながら、ダイハツが取り組むべき事業領域を検討していく」と回答。ダイハツは日本国内向けに軽以外の車両も生産しているが、「そこは基本的に事業を継続しつつ、長期目線で在り方を考えていきたい」とした。少なくとも、当面の間は小型車の生産が続きそうだ。

不正の再発防止策にはダイハツの「開発期間を伸ばす」ことが含まれているが、これが同社の競争力を弱める可能性はないのか。この質問に佐藤トヨタ社長は、「競争力は企業にとって非常に大事なファクターだ」と前置きしつつも、「企業経営はマラソン」であると回答。スピードを上げすぎたために「足が痙攣」しているときには、そのペースを守るのではなく、スピードを落としてでも「正しい仕事ができるよう、体制を立て直す」ことが重要とし、「短期的にはペースを落とす」と認めた。開発ペースを落としている間に「強みを見直すこと」が大事というのが佐藤社長の考え。ダイハツの強みとして①モノづくりの最小単位へのこだわり、②顧客に寄り添い、全国津々浦々から集めた顧客の声を商品に反映させられることの2点を挙げた。

ダイハツの新社長に就任する井上氏は会社生活の半分以上を海外で過ごした国際派。関西出身で実家が自営業を営んでいたことから、「軽トラックでモノを運ぶ」という世界は原体験としてなじみがあるという。ダイハツの新社長に選ばれたことは2週間半前、出張中のリマ(ペルー)で、豊田章男トヨタ会長および佐藤社長とのオンライン会議で知らされたそうだ。

  • 2024年3月1日付でダイハツの新社長に就任する井上雅宏氏

    2024年3月1日付でダイハツの新社長に就任する井上雅宏氏

駐在5年目の中南米では、販売、製造の現場で話をし、一体感のあるワンチームな経営体制を構築してきたとのこと。ダイハツの新社長に選ばれたのは、このあたりの「コミュニケーション能力が買われたのでは」というのが井上氏の考えだ。ダイハツでも社員および販売現場との直接対話を大事にしつつ、チーム一丸となって再建に向けた取り組みを進めたいと話していた。