多くのファンに愛されながら昨年6月29日をもって解散したガールズグループ・BiSH。彼女たちが「解散宣告」された日から東京ドームでのラストライブまでの3年半の日々をモモコグミカンパニーが赤裸々につづったエッセイ『解散ノート』が2月14日に発売される。解散をどのように受け入れ、ソロになる不安とどう向き合ってきたのか。苦悩も喜びもリアルタイムで書き留めてきたモモコグミカンパニーに、同書に込めた思いや解散後の変化など話を聞いた。

  • モモコグミカンパニー

    モモコグミカンパニー 撮影:加藤千雅

――『解散ノート』を読ませていただきましたが、本当に赤裸々に3年半の日々をつづられていて、当時の思いを知ることができました。

最初は本にしようと考えていなくて、自分で振り返りたい記憶だなと思って書き始めたんです。プロデューサーの渡辺(淳之介)さんから「解散という選択肢もあると思うけど、どう?」と言われた時は、BiSHとして5年ぐらい活動して人気も出てきた頃で、だんだん慣れてBiSHの音楽や自分の立場が当たり前のようになっていましたが、解散宣告を受けた瞬間から見え方がガラッと変わり、当たり前ではなくすごく貴重な日々なのだと気づき、これからの日々を残していこうと思ったのが始まりです。

――書いている途中で本として出したいという思いが芽生えたのでしょうか。

最後の1年ぐらいは、これは誰かの背中を押せる本になると思うから本にしようという気持ちで書いていましたが、最初の頃は自分がこの先、BiSHという大きいものが取り払われた時に、どういう不安を抱えたり、どういう葛藤をしたりするんだろうという興味もあって、赤裸々にリアルタイムで書き残していこうという思いでした。

――日記も書いているとおっしゃっていましたが、それともまた違うものとして書いていましたか?

『解散ノート』は“解散”というテーマがあったので、普通の日記とは違いますし、暴露本でもなく、自分の中では闘病記かなと思っています。エッセイも今まで2冊出しましたが、解散してから振り返って書くのでは遅いと思い、東京ドームまでの日々をリアルタイムで、その日のことをその日中に書くというのを徹底していました。

――「闘病記」という表現になるんですね。

病気を宣告された人はたぶん、残りの日々を愛おしいと思うんです。マイナスなことですけど、その日まで頑張って生きようというプラスの感情、生きるエネルギーが湧いてくる気がしていて、その感覚に似ているのかなと。解散はネガティブなことでもありますが、その日まで貴重な日々を生き抜こうという意思が芽生えたのも解散宣告を受けたからなので、闘病記という言葉がすごく近いなと感じています。

BiSHにとって解散はブースターに「みんなの視線が一致した」

――『解散ノート』では、不安を吐露しながら前向きな気持ちに変わっていく変化を感じましたが、日々自身の思いを書きながら気持ちが変わっていったのでしょうか。

書きながらというか、生きながら変わっていったのかなと。解散を宣告されてから、自分単体と向き合うことになり、いろんな人に「自分には何もない」と相談したり、「夢だった小説に手を伸ばしてみよう」とか、そういう過程を経て一歩一歩進んでいった気がします。葛藤の日々があったからこそ、最後のほうはBiSHを真正面から楽しもうと思えたし、明るくなっていったのかなと思います。

――前向きに変わるきっかけになったことがありましたら教えてください。

解散を宣告された時に私は悲しいとも思いましたが、よかったとも思ったんです。女性グループで、いつまでもやっていきたいという子もいれば、私はこれがやりたいんだという子も解散がなかったら出てきていたと思うので。5年以上経ってメンバーが少しずつ別の方向を見始めた時に解散を突きつけられ、みんなの視線がBiSHの終わり“解散”に一致したのはすごく大きいことだと思っていて、BiSHにとって解散はブースターになったなと思います。

――解散が決まったことで、メンバーの皆さんの気持ちが一つになって最後に向かっていくことができたのですね。

そうですね。BiSHを愛してくれている人で、まだ解散を受け入れられていないという人もいると思いますが、『解散ノート』がそういう人たちの手助けになるのかなとも思っています。私なりの解散はこうだったというのを覗いてもらってどう感じるか、自分の気持ちを大切にしてほしいです。

――何か終わりに向かって進んでいる人たちが勇気をもらえる一冊になりそうです。

私は解散が決まってから当たり前だと思っていた日々が貴重な日々だと再認識することができましたが、誰でも次の日に自分の大切なものが目の前から消えるということはあると思うので、『解散ノート』を読んで、毎日ってすごく貴重なんだと感じてもらえるかもしれないし、将来に不安がある人の背中を押せるのではないかなと思っています。私は「自分には何があるんだろう」と模索してもがいている日々でしたが、最後は笑顔で東京ドームに立ってやり切ったと言えたので。プロデューサーの渡辺さんとの面談の様子も生々しく書いているので、一緒に面談を受けているような気持ちで読めると思いますし、少しでも人生に悩んでいる人たちの励みになればいいなと思います。