2024年が始まって早1カ月。本格的に寒くなり、体調を崩しやすくなる時期に入っている。風邪や感染症などが心配な場合、近隣の医療機関を受診したいところだが、仕事が忙しいなどの理由で、医療機関に行く時間を作りにくい人もいるかもしれない。

  • 中央線・武蔵野線が交差する西国分寺駅

通勤・通学や休日のお出かけ等で利用する鉄道駅の改札内に「駅ナカ店舗」が出店する中、JR中央線・武蔵野線の乗換駅である西国分寺駅に薬局とクリニックが進出した。西国分寺駅は駅ナカ施設も充実している。今回は西国分寺駅に焦点を当ててみたいと思う。

ほかのオススメもイッキ読み!「心と体を整える『ヘルスケア』」特集」はコチラ

多ジャンル17店舗、ホーム上に薬局・クリニックも開業

中央線の三鷹駅以西では、JR中央線コミュニティデザイン(JR東日本グループ)が運営する駅ナカ商業施設がいくつかの駅に点在している。西国分寺駅で展開される「nonowa 西国分寺」は、改札前とホーム上に17店舗を出店。2012年9月、西国分寺駅の中央線ホーム上を中心に開業した後、2018年9月に一部リニューアル。改札内コンコースに飲食店5店舗をオープンした。

JR東日本グループは、鉄道駅を「交通の拠点」から「くらしのプラットフォーム」へと転換する「Beyond Stations 構想」を掲げており、その一環で「スマート健康ステーション」という取組みを推進している。この取組みに合わせ、2021年2月、西国分寺駅2番線(中央線高尾方面)ホーム上に「セルフケア薬局 nonowa 西国分寺店」が開業。2022年4月、1番線(中央線東京方面)ホーム上に「あおいクリニック -駅ホーム西国分寺-」が開業した。

  • 「セルフケア薬局 nonowa西国分寺店」

「セルフケア薬局 nonowa 西国分寺店」の営業時間は平日12~15時・16~21時、土日祝日10~15時・16~19時。薬剤師のヒアリングにより、処方箋なしで医療用の薬を購入できる零売サービスを行っているという。ヒアリングから薬の相談・案内まで約10分。処方される医薬品も医療用のものとなる。もちろん処方箋の受付も行っている。

ただし、零売サービスで購入可能な薬には限りがあり、約1万5,000種類中7,000種のみ。痛み止め、鼻炎・かゆみ薬、胃腸薬、風邪薬、ビタミン剤、医療用保湿剤、ステロイド塗り薬、漢方薬、点眼薬を購入できる。一方、抗生物質、高血圧の薬、糖尿病の薬、高脂血症薬、睡眠薬、向精神薬などは、零売サービスでは購入できず、医療機関の処方箋が必要になる。

「あおいクリニック -駅ホーム西国分寺-」は、対面診療とオンライン診療を併設したハイブリッドクリニックとして開業。対面診療としては内科を受診でき、オンライン診療で皮膚科・耳鼻咽喉科・婦人科も受診できる。内科は事前予約なしでも受診可能だが、オンライン診療に関しては専用サイトで事前に予約する必要があるという。

  • 「あおいクリニック -駅ホーム西国分寺-」のコンセプトは「働く人の“くらし”に寄り添うハイブリッドクリニック」だという

一般的なオンライン診療は、自宅にいる患者が遠隔で医師の診断を受けるしくみだが、「あおいクリニック -駅ホーム西国分寺-」に関しては、オンライン診療を受ける場合も同クリニックまで赴く必要がある。クリニック内にオンライン診療ブースがあるので、そこで医師とやり取りし、内科の設備を使って採血や血圧などの検査を行うこともできる。皮膚科に関しては、皮膚観察用カメラを利用し、遠隔でも患者の皮膚の状態を正確に把握できるとのこと。これらにより、従来のオンライン診療において、画面上のやり取りのみで医師が判断を下さなければならなかった課題の改善につながる。

西国分寺駅周辺にある診療所の医師が参加することで、地域医療との連携を図れるほか、JR東京総合病院などの基幹病院と連携も可能。「あおいクリニック -駅ホーム西国分寺-」の営業時間は平日8~12時・13~20時、土日祝日9~13時・14~18時。平日・土日祝日ともに各診察時間終了の15分前が最終受付となる。

駅の改札内に薬局とクリニックがそろったことで、普段の仕事等で通院や待ち時間に合わせられず、医療機関への足が遠のいていた状況を改善することにつながる。薬局・クリニックともに土日祝日も営業しているため、平日に忙しい人も土日祝日に受診し、薬を購入可能。西国分寺駅は中央線と武蔵野線の乗換駅となっており、中央線の国分寺駅・国立駅・立川駅、武蔵野線の府中本町駅・新小平駅・新秋津駅など周辺の各方面から来られるため、アクセスも抜群に良い。通勤・通学等で西国分寺駅を通る人は、体調を崩した場合の“保険”として覚えておくと良いかもしれない。

「nonowa 西国分寺」では、薬局・クリニックの他にも、1番線ホーム上に「はなまるうどん」と「ジャックインザドーナツ」、2番線ホーム上に無人カプセルトイスポット「Hobby Box」、JR東日本のシェアオフィス「STATION DESK」、リラクゼーション施設「リラクゼメイト」、理髪店の「QBハウス」が並ぶ。これらの店舗はウエスタン調の装飾が特徴となっている。改札前にコンビニエンスストア「New Days」とみずほ銀行ATMもある。

2018年のリニューアルで誕生した「nonowaTable」は、1番線(中央線東京方面)への階段前から4番線(武蔵野線西船橋方面)への通路にかけて、ベーカリー「ミニワン」、うどん・そば「いろり庵きらく」、立食い寿司「魚がし日本一」が並び、4番線ホームの中央付近に「スターバックス」と「ウェンディーズ・ファーストキッチン」が出店。改札内での食事やテイクアウトも充実している。改札外の南口前に洋菓子「ビアードパパ」、改札口正面に地元青果「にしこくマルシェ しゅんかしゅんか」もある。

臨時列車の特急「鎌倉」も停車、西国分寺駅の開業年や駅周辺は

西国分寺駅は中央線・武蔵野線の乗換え等で多くの利用がある駅だが、駅の開業は1973(昭和48)年で比較的新しい。中央線の高尾駅までの区間は、1889(明治22)年4月、私鉄の甲武鉄道が新宿~立川間を開業させたことに始まっている。同年8月に八王子駅まで延伸。1901(明治34)年の高尾駅(当時は浅川駅)開業、1906(明治39)年の買収・国有化を経て、1930(昭和5)年までに浅川駅(現・高尾駅)までの区間が電化された。

ちなみに、西国分寺駅は中央線の複々線化を考慮して掘削され、ホームの改修次第では2面4線で使用できるように建設されていたという。中央線ホーム上に設置された「nonowa 西国分寺」の店舗も、その用地を活用したと考えられる。

現在、西国分寺駅に停車する中央線の列車は快速(高尾方面は各駅停車として案内)のみ。中央特快・青梅特快などの列車は通過するが、国分寺駅または立川駅で緩急接続を行うことがある。そうでなくとも快速の本数自体が多いため、利便性は高い。2024年度末予定とされる中央快速線等グリーン車の運行開始に先立ち、グリーン車を連結した編成の試運転も行われていた。

  • 西国分寺駅に停車する中央線の列車は快速のみ停車

武蔵野線はもともと、一般利用者の多く行き交う都心を貨物列車が避けて走行できるように建設された。1973(昭和48)年4月の府中本町~新松戸間が開業と同時に、中央線と武蔵野線の乗換駅として西国分寺駅が開業。2023年に開業50周年を迎えた。旅客列車の合間を縫って、現在も多くの貨物列車が西国分寺駅を通過する様子を見られる。

武蔵野線南部の貨物線である鶴見~新鶴見操車場(現・新鶴見信号場)~梶ヶ谷貨物ターミナル~府中本町間は1976(昭和51)年3月、千葉県側の旅客営業区間である新松戸~西船橋間は1978(昭和53)年10月2日に開業し、これをもって武蔵野線は全通となった。1985(昭和60)年3月、かつて「日本一の規模」とうたわれた武蔵野操車場前に新三郷駅が開業。2008(平成16)年に越谷レイクタウン駅、2012(平成24)年に吉川美南駅が開業している。

日中時間帯、武蔵野線の列車はおおむね10分間隔で運転。中央線に比べれば本数は少ないが、武蔵浦和方面へ乗換えなしで移動できる。府中本町駅で南武線に乗り換えることで、川崎方面へもアクセスしやすい。武蔵野線の多くの列車が京葉線へ直通しており、東京行の列車も運転されるが、東京駅へ行くなら中央線に乗ったほうが早く着く。

  • 武蔵野線は西船橋方面から府中本町方面を結ぶ。土日祝日を中心に、臨時列車の特急「鎌倉」も西国分寺駅に停車する

土日祝日を中心に吉川美南~鎌倉間で運行される特急「鎌倉」も西国分寺駅に停車する。臨時列車であることと、貨物線を走行する関係で西国分寺~横浜間はノンストップであることに注意してほしいが、乗りこなせば武蔵野線沿線から神奈川県方面までスピーディーかつ快適に移動できる。一方、朝夕に武蔵野線経由で大宮~八王子間を結ぶ「むさしの号」は、西国分寺駅に入線しない。

駅の出入口は南北に1カ所ずつ。北口を出ると駐車場・駐輪場が広がり、駅の北西に駅前商店街が続く。見た限り個人経営の飲食店が多かったので、改札外で外食するなら歩いてみると良いだろう。駅前こそ商店街だが、少し歩くだけで住宅地に入るため、南口に比べると静かな印象を受ける。

  • 西国分寺駅北口。駅前商店街を経て住宅街へ

南口を出ると、すぐに駅前ショッピングモール「西国分寺レガ」「にしこくマイン」のアーケードがあるため、雨でもほぼ濡れない。カフェ・飲食店、スーパーマーケット、書店、薬局・クリニックなど、こちらも主要なショップがそろっている。改札口を出た後に買い物する場合や、クリニックを受診する場合は選択肢に入るだろう。

「西国分寺レガ」のアーケードを越えた先に、京王バスと国分寺市地域バス「ぶんバス」日吉町ルートのバス停がある。京王バスは京王線府中駅やJR南武線西府駅などを結び、「ぶんバス」は西国分寺駅と北西の日吉町地区を循環する。南口・北口ともに府中街道の反対側に位置しているため、大通りへ出るには武蔵野線の線路をくぐる必要がある。なお、駅東側にも「ぶんバス」万葉・けやきルートと北町ルートのバス停があり、前者は史跡武蔵国分寺跡と東恋ヶ窪地区、後者は西国分寺駅と北町地区を結んでいるが、このバス停は西国分寺駅から若干離れている。

  • 西国分寺駅南口。アーケードの先にバス停がある。府中街道に出るには武蔵野線の線路下をくぐる必要がある

  • 西国分寺駅から約10分で武蔵国分寺公園へ

  • 武蔵国分寺跡

  • 国分寺楼門

駅から南東へ歩いて約10分の場所に、都立武蔵国分寺公園が立地する。広域避難場所に指定されていることもあり、敷地は広く、こどもたちが放課後や休日に運動をできる場所にもなるだろう。武蔵国分寺公園からさらに南下すると、国分寺駅・西国分寺駅の駅名にもなっている国分寺や、武蔵国分寺跡、都指定名勝「真姿の池湧水群」などを巡ることができる。観光や散策の際、公園と一緒に訪れてみてはいかがだろうか。

JR東日本が掲げる「Beyond Stations 構想」と「スマート健康ステーション」の一環で、西国分寺駅の改札内に薬局とクリニックが開業した。中央線・武蔵野線を利用し、これまで医療機関に行く時間がなかった人々にって、今後はいざというときの頼りになるのではないかと思う。なお、「スマート健康ステーション」は2023年12月に阿佐ケ谷駅と東京駅、2024年1月に上野駅でも開業しており、夏頃を予定に仙台駅でも開業を予定しているとのこと。近い将来、自身の身近な駅にクリニックがオープンすることがあるかもしれない。