サントリーは11日、2024年の国内酒類事業およびビール事業について説明した。ビール類の販売が好調なサントリー。とりわけ『サントリー生ビール』については、大幅な増産を計画しているようだ。

  • サントリーが2024年の事業方針について説明。写真は(左から)サントリー 代表取締役社長の鳥井信宏氏、サントリー 常務執行役員 ビールカンパニー社長の多田寅氏

酒類市場の再成長に向けて

冒頭、サントリー 代表取締役社長の鳥井信宏氏は2023年の国内酒類事業の実績について「コロナ禍で落ち込んでいた業務用市場が急回復するなどし、前年同期比で3%の増加となりました。特にビール類は『ザ・プレミアム・モルツ』『パーフェクトサントリービール』が伸長し、また2023年4月発売の『サントリー生ビール』も当初の年間計画を超える販売実績となりました」と振り返る。

  • サントリー 代表取締役社長の鳥井信宏氏

  • 『ザ・プレミアム・モルツ』『パーフェクトサントリービール』『サントリー生ビール』、いずれも好調だった

近年、消費者の間で価値観の多様化が進み、ビール類以外(RTD、ウイスキー/スピリッツ/リキュール/ワインなど、日本酒・焼酎)のカテゴリ商品のニーズも増大している。これを受けて「今後も、そうした市場動向をいかに素早く正確に読み取るか、が重要になると実感しています」と鳥井社長。そのうえで「私どもサントリーはご存知の通り、ワイン、ウイスキーから事業をスタートし、『やってみなはれ』の精神で新事業の創造に取り組んでまいりました。現在では酒類事業で幅広いポートフォリオを有しており、それが当社ならではの強みになっています」とする。

  • 幅広いポートフォリオがサントリーの強みになっている

とはいえ国内酒類事業は、この40年間で緩やかな縮小を続けている。そこで鳥井社長は「我々がリーディングカンパニーとして国内酒類市場を再成長に転じさせたい」と意気込む。「2023年の売上高は約7,800億円ですが、2030年には国内酒類売上で1兆円を目指していきます。日本で需要創造を継続するとともに、世界中のお客様にもお酒の価値を大切に伝えていきます」と結んだ。

  • 2030年に国内酒類売上で1兆円を目指す

  • 2024年の目標。消費者のニーズを捉え、新たな需要を満たす新商品、需要創造の提案を積極的に行っていく

ウイスキー、ジン、ノンアル

続いて、新たな文化・需要の創造について。サントリーウイスキーが目指す姿については「美味追求の『ものづくり』だけでなく、物語を伝え、生活文化・需要を創造していく『ものがたり』にも力を入れていきたい。世界一愛されるウイスキーを目指していく」と鳥井社長。

  • ものづくり・コトづくりによる新需要

ジンカテゴリーの需要創造にも注力する。同社では『ジャパニーズクラフトジン ROKU〈六〉』(2017年発売)、『サントリージン 翠 SUI』(2020年発売)の2ブランドでジン市場の創造に取り組んできたが、「今年からそのチャレンジを加速させます。ものづくりをベースにした認知訴求と、お客様には新たな食中酒体験の提案を行い、ジンカテゴリの需要創造を行っていきます」と説明する。

  • 国内のジン市場については2030年頃までに450億円程度まで拡大したい考え

このほか、お酒を飲む人も飲まない人も一緒に楽しめるような「アルコール0.00%のお酒」の文化創造も引き続き進めていく。「当社におけるノンアルビール、ノンアルRTD、ノンアルワインの販売数量ですが、2023年の市場内構成比は42%にも達しました。これを2030年には2,100万ケース、市場内構成比にして50%までもっていきたい」と鳥井社長。

  • ノンアル戦略について

若者の飲酒率低下という課題に向けては、個々の価値観にフィットした商品の提案、良質な飲用体験・接点づくりを継続することで対応する。「お酒の価値を丁寧に届けていきたい」と説明した。

  • こちらはSDGsの取り組みについて。CO2を削減した『ザ・プレミアム・モルツ(サステナブルアルミ)』を1月30日より限定発売する。数量は350ml換算で約38万本

2024年のビール事業は?

続いてビール事業について、ビールカンパニー社長の多田寅氏が説明した。2023年のビールカンパニーの販売実績は、グループトータルで前年同期比8%増の6,840万ケースという好調な着地。業績を牽引したのは、やはり主要ブランドの『ザ・プレミアム・モルツ』『サントリー生ビール』『パーフェクトサントリービール』だった。

  • サントリー 常務執行役員 ビールカンパニー社長の多田寅氏

  • 2023年のビールカンパニーの販売実績。主要ブランドが牽引したほか、金麦やオールフリーなども健闘している

多田社長は「お客様のニーズの多様化に応えられるポートフォリオが完成したと自負しています」と評価する。そのうえで2024年の活動方針としては「酒税改正により伸長すると見込まれるビールカテゴリー、および業務用ビールに注力してマーケティングを強化してまいります」と説明。

  • ビールカテゴリ商品の充実に自信をみせる

同社では、コロナ禍を経て「消費者がプレミアムビールを購入する機会が増えた」と分析している。そこで『ザ・プレミアム・モルツ』については、リニューアルを挟んで醸成してきた”高級感”や”自分へのごほうび”というイメージを引き継ぎ、俳優の大泉洋さん、広瀬すずさんらを起用した好意・共感を獲得するマス広告も積極的に打っていく。さらには”おいしいプレモルが飲める”体験の拡大に向けて、神泡品質で商品を提供できる飲食店を増やしていきたい考え。

  • 『ザ・プレミアム・モルツ』の2024年のブランド戦略

『サントリー生ビール』については、すでに20~40代の購入者層を獲得できたとし、新たに若年層に向けたアプローチも強化していく。また、さらなる認知拡大のために早くも今年2月の製造分より製品リニューアルを実施する。そして3月5日には業務用の瓶(中瓶・大瓶)、樽(10L、15L、20L)を全国発売。2024年は取扱店舗数15,000店を目標に展開する。

  • 『サントリー生ビール』は業務用の瓶、樽も全国発売する

  • 工場を増やし、製造体制も強化。将来的に年間1,000万ケース級のブランドに育てていく

また糖質ゼロの『パーフェクトサントリービール』については、伸長する機能系ビール市場において”確かなおいしい糖質ゼロビール”のイメージの確立を目指す。「うまいものには、うまいビールでしょ」のキーワードを掲げた、俳優の堺雅人さん、山本耕史さんらを起用したTVCMなども引き続き展開していく構え。

最後に、同社の2024年の販売計画について多田社長は「前年を0.1ポイントでも上回れるよう、グループトータルで6,850万ケースを目指していきます。牽引するのはビール類。とりわけ『サントリー生ビール』については同期比50%増の600万ケースを目標としていきます。ビールカンパニーでは多彩なポートフォリオを活かしながら、しっかりとマーケティングを推進していきます」と力を込めた。

  • ビールカンパニーの2024年の販売計画