ジャパニーズウイスキーが今、異様なプレミアム価格で売買されている。
近年のジャパニーズウイスキーは国際的な賞を総ナメにするなど、世界的な注目を集め、その価値も急速に見直されている。権威あるオークションに出品されれば、にわかには信じられない価格がつくこともしばしば……。
ということで、今回はジャパニーズウイスキーの現在地を探るべく、大手買取専門店「買取大吉」の新宿東口店を訪問。鑑定士の木村健一さんに話を聞いてみた!
■世界中でジャパニーズウイスキーが高値になっている理由
――ジャパニーズウイスキーが高騰している理由を教えてください。
やはり最大の要因は海外需要が増えたことですね。ジャパニーズウイスキーは2010年くらいから人気に火が点き始めて、特に「山崎」「白州」「響」「イチローズモルト」といったウイスキーが世界中で高評価を得るようになり、当時は主に中国人観光客が買っていたようです。
その頃はまだどの酒屋さんの棚にも普通に山崎や白州が並んでいて、多くの人は「ちょっと高級品だから買わなくていいよね」「買おうと思えばいつでも買えるしね」というノリだったのですが、外国人観光客がどんどん買い占めていったことで、徐々に品薄になっていきました。
――外国人観光客がジャパニーズウイスキーを買い占めたのは投機目的ではないのでしょうか?
純粋にジャパニーズウイスキーが美味しいからだと思います。今では山崎、白州、響、イチローズモルトといったウイスキーはプレ値がついていて、定価の2倍以上で取引されるのは当たり前。希少性の高いウイスキーに関しては10倍の値段で売り出されることもあります。
――そんなに価格が跳ね上がっているのですか……。
以前は投機目的でウイスキーを買う人はほとんどいなかったのですが、こうして値段がとてつもなく跳ね上がることがわかったので、今は投資の一環としてウイスキーを買う人もかなり増えています。
数年前、「山崎55年」が100本限定で販売されました。定価は300万円だったのですが、昨年、世界的なオークションに出品された際は、なんと約8,000万円という高値で落札されました。ちなみに弊社でも「山崎50年」を約3,500万円で買い取ったという実績があります。
2019年には、イチローズモルトの限定品「カードシリーズ」という54本セットのウイスキーが香港のオークションに出品され、約1億円もの値段で落札されています。落札者はおそらく、数年後にまたオークションに出して利益を得るのだと思います。
■ジャパニーズウイスキーの高騰はまだ続く!? 狙い目は……
――このトレンドはいつまで続くのでしょう?
インバウンドの再開でジャパニーズウイスキーはさらに品薄になると予想できますし、このトレンドはまだ中期的に続くと考えられます。
最近は新しいブランドも出始めていて、白州もまだ新しいほうですが、「知多」というウイスキーなども数年前から販売が始まっています。知多からはまだ年代物などは出ていないのですが、今後、12年~50年熟成といった年代物が出てくると思うので、ますます注目されてくると思います。本数も限定されると思うので、そもそも購入すること自体が困難ですが、もし定価で買えるようであれば買っておいて損はないと思います。
温度や湿度の管理が難しいワインと違って、ウイスキーは常温で保存できるというメリットもありますしね。
――年代物というのは大体何年くらいからのものを指すのでしょうか?
12年熟成くらいからが年代物とされています。8年熟成だとノンビンテージ扱いになるので、投機目的で買う場合は、「年代物のジャパニーズウイスキーを定価で買うために努力する」という方法がベストかもしれませんね。
――どうにか購入したはいいものの、その後、価値が下がるということはないのでしょうか?
ジャパニーズウイスキーは需要が尽きないと思うので、価値が下がることもないのではないでしょうか。ウイスキーの年代物は簡単に生産できませんし、むしろ発売されたあとはタマ数が減っていく一方なので、自然と価値も上がっていきます。
■ジャパニーズウイスキーを定価で購入する、意外な方法
――「買取大吉」にもジャパニーズウイスキーの持ち込みは増えていますか?
結構な頻度で持ち込まれますよ。昔は、お酒をインテリアの一部として置いていた人も多かったので、おじいさまやおばあさまが亡くなられたタイミングで、残されたお酒を息子さんや娘さんがまとめて持ってこられるパターンもあります。その中にプレミアム価格がつくお酒などが混じっていることもありますが、やはりみなさん想像以上の高値にびっくりされますね。
ウイスキーに限らず、たとえば「ルイ13世」というブランデーなどは最近、価格も上がっています。ブランデーはボトルに凝っているのでインテリアとして飾っている人も多いですし、もともと安いお酒ではありませんから、なかなかの値段で取引されることもあります。
――これだけジャパニーズウイスキーが高騰していますが、まだ定価で購入できるところはありますか?
私が去年、練馬区にある街の酒屋さんにふらっと入ったとき、そこには山崎が20本くらい並んでいました。もちろんそのときは買いましたが、その後、何回行っても常に山崎が並んでいるんですよ。白州もありましたね。
もちろん場所によりますが、街の酒屋さんは丸1日お客さんが来ない日もあるくらい閑散としていたりします。しかも、ネット通販などもしていない店が多いじゃないですか。だけど、歴史は長いので、メーカーとの付き合いがあったりもするわけです。意外にもレアなウイスキーを普通に扱っていたりするので、ぜひ近くの酒屋さんの中を覗いてみてください。