大晦日、さいたまスーパーアリーナのリングで朝倉海(JTT)がRIZINバンタム級王座を奪回した。フアン・アーチュレッタ(米国)を2ラウンドTKOで下し、3年ぶりにベルトを腰に巻いたのだ。

  • 3年ぶりにRIZINバンタム級のベルトを腰に巻き、リング上で歓喜した朝倉海(写真:RIZIN FF)

そして試合後に「来年は海外を舞台に闘いたい気持ちが強い」と口にした。怪我から完全復活を果たし王者となった朝倉海が抱く「2024年の野望」とは─。

■まさかのハプニング

「ホッとしています。ひと安心。今回は凄くプレッシャーを感じながら闘いました。『自分で自分を超えなきゃ』と思っていて、それも達成できた。とにかく勝ててよかった」
大晦日『RIZIN.45』でのアーチュレッタ戦後に朝倉は、そう話した。
「長い一日だった」とも口にした彼の表情には、喜びよりも安堵の気持ちが滲んで見えた。

試合前日にハプニングが起こった。
アーチュレッタが計量をパスできなかったのだ。
朝倉は60.95キロで契約体重(61キロ)をクリア。対してアーチュレッタは63.8キロ、何と2.8キロもオーバーしていたのである。
クリスマスから体調を崩したアーチュレッタは予定通りには減量に取り組めず、前日から激しく水抜き(汗を流して体内の水分を抜く)をするも体重調整に失敗した。

この時点でアーチュレッタの王座は剥奪。
契約体重が守られぬまま試合を行うか、中止にするかは朝倉が決定権を持つ。試合を行う場合、朝倉が勝てばタイトル獲得、アーチュレッタが勝利したなら公式記録はノーコンテスト(無効試合)となる。
「試合はやめるべきだ。リカバリーでアーチュレッタは75キロ以上でリングに上がってくる。そんな危険な闘いはしない方がいい。致命的な怪我につながりかねない」
朝倉陣営のほとんどが、そう考えた。
しかし、朝倉本人は試合をしたかった。

  • 試合後、プレスルームでメディアからの質問に答える朝倉海。安堵に満ちた表情を浮かべていた(写真:藤村ノゾミ)

■ドタバタ劇を経てのTKO完勝

その後、主催者と両陣営で話し合いの場が持たれ、結局は「条件付きで試合を行う」ことになる。条件とは、試合の1時間前にアーチュレッタの再計量を行い、その時点で68キロを超えないことであった。
これが決まったのは試合当日の昼頃。アーチュレッタは再計量をパスし試合は行われることになるも朝倉にとっては迷惑なドタバタ劇だった。

周知の通り試合は、朝倉の2ラウンドTKO勝ち。
1ラウンド、組み合いからの離れ際にアーチュレッタの強烈なパンチを喰らい朝倉がダメージを負う場面もあった。それでも2ラウンド3分過ぎに朝倉がヒザ蹴りをボディに突き刺す。耐えきれず倒れ込んだアーチュレッタにパウンドで追い打ち。ここでレフェリーが試合をストップ、満員の観衆で埋まったアリーナは大歓声に包まれた。

  • 左ハイキックを繰り出しアーチュレッタを追い込む朝倉海。自信に満ちた動きで試合を優位に進めていった(写真:RIZIN FF)

  • 2ラウンド、ヒザ蹴りをボディに見舞うとアーチュレッタがマットに崩れる。そこにすかさずパウンド、この直後にレフェリーが試合を止めた(写真:RIZIN FF)

RIZINバンタム級王者に返り咲いた朝倉は試合後、今後の目標を問われ、こう話した。
「海外に挑戦するか、(RIZINで)防衛戦をしていくか、社長(榊原信行RIZIN CEO)とも相談して決めたいと思う。ただ自分としては海外にチャレンジしたい気持ちが強い。UFCに行きたい」

これに対して榊原CEOは言った。
「(UFCに)行きたい気持ちを止めるつもりはない。海と話したい。UFCじゃないといけないのか、別の道もあるんじゃないかも含めて。RIZINのベルトを防衛していって欲しい思いも勿論ある。海外に挑戦しながら(RIZINバンタム級王座の)防衛戦を並行して行っていくのもあるだろうし。視野を広く持って彼と話し合います」

朝倉がUFCに出場するとなれば、RIZINのベルトは返上することになるだろう。UFCは選手と独占契約を結ぶのが常で、他団体への並行参戦は現実的ではない。ただ、Bellator、 PFLといった団体への参戦となれば契約条項次第で、今後もRIZINのリングにも上がることが可能なのかもしれない。

■心強い2人のコーチの存在

いずれにせよ、2024年に朝倉は海外進出を目指す。
その気持ちは変わらないだろう。
「いましかできない」
「やらなかったら後悔する」
そんな思いを強く抱いているからだ。
加えて、その環境が整ったことも大きい。

今回の試合で兄・未来とともにセコンドについていた2人のコーチ、エリー・ケーリッシュとビリー・ビグロウに朝倉は絶対的な信頼を寄せており、彼らの指導で自らが大きく成長できたことを強く実感している。
エリーとビリーはトレーニングのみならず、対戦相手を徹底分析し、しっかりと作戦も授けてくれる。そのため自信をもって闘いに挑めているのだ。
「いまの環境ならやれる。世界でトップを取りたい!」
朝倉海は本気だ。そのために階級をバンタムからフライに落とすことも考えているだろう。
革命のアウトサイダーは世界に翔けるか─。

▼【RIZIN】朝倉海、アーチュレッタ戦を終え 心境語る『にゃんこ大戦争 presents RIZIN.45』試合後インタビュー

文/近藤隆夫