歌舞伎俳優・中村勘九郎の長男・勘太郎(12)、そして次男・長三郎(10)。幼い頃から舞台に立ち続け、歌舞伎ファンの期待も大きい2人にインタビュー。2人は宮藤官九郎×中村勘九郎の強力タッグで2022年10月・11月に上演された新作歌舞伎『唐茄子屋 不思議国之若旦那』に出演しており、1月5日からは全国の映画館で「シネマ歌舞伎」としての上映を控えている。
古典落語「唐茄子屋政談」に「不思議の国のアリス」の要素を織り交ぜた同作では、父・勘九郎が役をつとめる自己愛強めな若旦那や、叔父・中村七之助による花魁の傾城桜坂らとともに舞台に。不思議の国で子供の姿になってしまった若旦那(小)を勘太郎、長屋に住む貧乏親子の子供・イチと若旦那(超ミニ)を長三郎がつとめた。インタビューでは、ふだんの古典とは違う内容に苦労も多かったという同作について、また兄弟の性格の違いやお年玉の使い道などについても話を聞いた。
出演した新作歌舞伎『唐茄子屋 不思議国之若旦那』が「シネマ歌舞伎」として全国上映
――『唐茄子屋 不思議国之若旦那』は宮藤官九郎さんが脚本・演出をつとめた新しい作品で、ふだん出演される作品とは違ったと思いますが、いかがでしたか?
勘太郎:今までは昔からある古典の芝居をやっていたんですけど、今回はゼロから作らなければいけないので、稽古では毎日のようにセリフを変えたりして大変でした。
長三郎:いつもの僕たちがやっている古典の歌舞伎とはまた別に宮藤さんの演出が入ることによって、難しくて、稽古も大変でした。
――宮藤さんの面白さは感じましたか?
勘太郎:感じました。
長三郎:演出のしかた、「お芝居をこうやりたい」というところが面白かったです。
勘太郎:若旦那のポーズとか、「あざーす!」というセリフとか、ふだんあんまり言わないので、難しかったです(笑)
――お父さんの勘九郎さんが若旦那、勘太郎さんが若旦那(小)、長三郎さんが若旦那(超ミニ)と、3人で1人の役をつとめて、相談したことなどありましたか?
勘太郎:まんじゅうを食べて池に飛び込むと姿が変わる演出なんですけど、その時の入り方や出方とか、どう変わるのかとか、みんなで相談しました。
長三郎:お兄ちゃまが言った通り、池の場面の話し合いが多かったです。
――そういう時の勘九郎さんは、優しいですか? それとも厳しいですか?
長三郎:優しいし、怖いし、両方です! お家とは一緒じゃなくて。1つの役をやるから、みんなで合わせる演出の時は、間ぐらいの感じでした。
――今回の『唐茄子屋』の好きなシーンを教えてください。
勘太郎:冒頭のお祭りの場面で後ろの扉を開けるところ(舞台奥が開いて外の景色と一体となる平成中村座ならではの仕掛け)があるんですけど、扉を最初から使うので、面白いなあと思います。
長三郎:見どころということですね。僕は2つあるんですけど、1つ目は、最初の橋のところです。始まる前に僕はおじじ(七之助)と一緒にいて、幕が開いてから橋の上とか色々と行くんですけど、そこをしっかり見ていると、僕とおじじは(わざと)避けてる人がいるんです。そこも映ってたら見てほしいです。
勘太郎:そんなことしてたの!? あともう1つは?
長三郎:あともう1つはパラレルワールドの吉原。たぶん昔あんな感じじゃないと思うんですけど、面白いです。
勘太郎:歌舞伎というと、どうしても古典のような硬い感じだと思っちゃうかもしれないんですけど、『唐茄子屋』は笑えるところがあって、演出が面白いので、そこを見てほしいなと思います。
長三郎:古典だと決まっている演出だけど、新作で宮藤さんが作っていて色々と変わっているから、そこが面白いので楽しみにしていてほしいと思います。
――今回は「シネマ歌舞伎」として上映されますが、最近観て面白かった映画などはありますか?
長三郎:僕が1番楽しみにしてるのは『ウィッシュ』かな。あと『ミュータント・タートルズ』(映画『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』)面白かったです!
勘太郎:『マリオ』(『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』)は?
長三郎:『マリオ』も面白かった。今年(2023年)めちゃくちゃ観てるじゃん! 『BLUE GIANT』って今年?
勘太郎:『BLUE GIANT』、面白かった。
長三郎:家族で観ました。
――家族4人で映画に行くことが多いんですか?
勘太郎:多いです。
長三郎:みんなで帰りの車で曲を聴きます。
勘太郎:主題歌の曲とかを聴きます。
――勘九郎さん、七之助さんと一緒にお芝居をする機会も多いですが、憧れたり感謝したりすることはありますか?
勘太郎:おーわん(勘九郎)がやったことがあるお芝居と、おじじ(七之助)がやったことあるお芝居が違うので、その時々に教えてもらうことができます。
長三郎:2人ともいろいろと違うお芝居をやってきてるので、たとえば「連獅子」はおじじもお父ちゃまもやってるということは2つアドバイスをもらえるし、どちらかがやっていてもアドバイスをもらえるし、いいなと思いました。
――歌舞伎の家に生まれたことについてはどう思っていますか?
長三郎:びっくりしてます。
勘太郎:びっくりしてるんだ。
長三郎:やっぱりお芝居やってると大変だなあと思うこともある。そういう歌舞伎の家の子として生まれたから偉いってわけでもないし、偉くないってわけでもないので。
勘太郎:そんなに気にしてないってこと?
長三郎:気にしてないです。
――お父さんが歌舞伎俳優で、自分も舞台に立つということについてはいかがですか?
長三郎:緊張があります。
勘太郎:責任は感じます。でもあんまり意識してないです。
長三郎:してないよね? 2人とも。
――ちなみに、長三郎さんの前髪はこだわりですか?
長三郎:こだわりじゃないです。結構前だけど、ちっちゃい時に切ったのがずっと続いてるんだよね。これ、寝癖がついても水とブラシだけで一瞬で直っちゃうんです。
勘太郎:それは、髪がつるつるだからだよ。
長三郎:そうなの?
勘太郎:そうです。
長三郎:お気に入りというわけでもないし、似合ってるというわけでもないので、あんまり気にしてないです。(答えが)「気にしてない」ばっかりだったらだめかな?
勘太郎:本心だからいいんだよ。
長三郎:違う髪型でもいいし、あんまり気にしてないです。でも坊主はやだ!
――勘太郎さんは、中学生になって変化はありましたか?
勘太郎:やっぱり成長期なので、身長は伸びてきて、もうママは抜きました。161cmくらいです。
長三郎:みんな抜くよね! 足の長さも半端ないよね? ぐっと伸びていくじゃん!
長男と次男、性格の違いは?
――お話を聞いていると、兄弟でもお二人の性格が違うのかなと思ったんですけど、お互いにどういうふうに思っていますか?
勘太郎:短気!
長三郎:怒りっぽい!
勘太郎:ポジティブです。
長三郎:僕はポジティブですね。
――やっぱりお互いに「違うな」と感じるんでしょうか?
勘太郎:はい。僕はおとなしい方の性格だと思います。
長三郎:内弁慶で、借りてきた猫。あなたは内弁慶で外弁慶。
勘太郎:どういうこと?
――これまでのお話の様子でも、勘太郎さんは穏やかなのかなという印象がありましたが…
長三郎:穏やかではないなあ、それが!
勘太郎:穏やかです。
――いろいろ物語を自分で書かれることもあると聞きました。
長三郎:それはこっち(勘太郎)です。お芝居を作って、総監督、演出家です。で、僕はおもちゃを貸したり、道具を集めたりとか。かわいい人形で文楽をします。
勘太郎:動かせるやつならなんでも。
長三郎:僕はごくごくたまにしか書かないです。(勘太郎に)最近ね、めちゃくちゃいいの作ったんだよね。2つも! 面白かったですよ!
――たとえば、大きくなった時に、今回のように新しい歌舞伎の脚本を書いたりするのはどうですか?
長三郎:もしあったら、演出は(勘太郎に)頼みます! 今のちっちゃい頃に作った芝居を思い出して書く可能性もありますね。
――最後に、お正月ということで、お年玉で買いたいものはありますか?
長三郎:お年玉で買いたいもの、何かな〜?
勘太郎:お年玉は預かられちゃってるから、使えないです(笑)。貯金してます。
長三郎:お年玉、ママに渡したらずっとママが預かってる。 使おうとする気持ちと、使いたくない気持ちがある。大人になったら、うわ〜っ! と。
勘太郎:そんなに好き放題にやったらダメだよ。
長三郎:「ガリガリ君」買いまくる!
■三代目 中村勘太郎
2011年2月22日生まれ、東京都出身。父は六代目中村勘九郎、母は女優の前田愛。2017年2月歌舞伎座『門出二人桃太郎』の兄の桃太郎で三代目中村勘太郎を名のり初舞台。2月は十八世中村勘三郎十三回忌追善「猿若祭二月大歌舞伎」に出演。
■二代目 中村長三郎
2013年5月22日生まれ、東京都出身。父は六代目中村勘九郎、母は女優の前田愛。2017年2月歌舞伎座『門出二人桃太郎』の弟の桃太郎で名のり初舞台。2月は十八世中村勘三郎十三回忌追善「猿若祭二月大歌舞伎」に出演。