• 合同取材では各記者の質問に笑顔で答える姿が多かった

――将棋全体の理解度を100だとすると、感覚的にはどのくらい理解していると思いますか。
藤井 全体がどのくらいなのかわかりませんが、知らない手筋や判断できない局面はまだたくさんあるので、自分の感覚の中では、1割にも満たないと思います。

――王座戦第3局、4局は勝ちになった局面でも、映像を振り返って見るとガックリしているように見えました。当時はどのような心境だったのでしょうか。
藤井 どちらもはっきり負けの局面があったので、急転したことで少し心を落ち着かせようという気持ちがあったのかと思います。対局中は苦しさを感じていることが多かったですし、よくなったという局面でも、しっかり集中して勝ちきらないといけない気持ちが、強かったのではないかと思います。

――来年は辰年ですが、どういうイメージを持っていますか。またお正月はどのように過ごすのでしょうか。
藤井 例年は家族と自宅でゆっくり過ごすことが多いので、年明けから始まる王将戦の準備をしながら、そういう感じになると思います。また辰年の竜といえば、竜王戦であったり、竜という駒もありますので、強さの象徴というイメージです。

――今年1年、完全にオフで将棋に触れなかった日はありましたか。
藤井 その日の対局の中継を見るのも一つの日課なので、そういうことを含めると一切触れなかったことはありません。

――3つタイトルを増やして全冠制覇の八冠、自己採点すると何点ですか。
藤井 これ以上ない結果ですので、高い点数をつけたいところですが、一方で王座戦と叡王戦での対局内容は苦戦だったこともあるので、全体的には80点ということにしておきます(笑)。

――去年から今年にかけて、AI研究の量は増えたりしていきましたか。
藤井 それほど時間は大きく変わっていません。序盤の指し方が多様化する中で、AIだけではなくて、対人の対局で経験値を高めることであったり、AIを使うにしても効果を高めるためにはどうしたらよいのかが、問われるようになってきたと思っています。AIを活用して知識は増えますが、それをどう実戦で応用して使うかは、工夫が必要です。将棋は必ずしも絶対的な正解があるわけではないので、いろいろな局面の経験値を高めることで、急所をつかんで考えていくことが大事だと思っています。

――女性ファンから声をかけられることはありますか。
藤井 将棋の対局を見て楽しんでもらえる方が増えたのは、うれしいことです。男女かかわらず声をかけられることは多いのですが、応援してくださったり、メッセージをいただけることは、ありがたいことです。

――先ほど体重が増えたとありましたが、その要因は何ですか。
藤井 タイトル戦ですと、各地でその土地の美味しいものをいただけることが多いので、そこで調整ができなかったかと……(笑)。でもそこは楽しみにしていることでもあるので、普段の生活の中で運動を増やすなどして、対応していきたいです。

――タイトル戦で食べた、美味しかったもので印象に残ったものはありますか。
藤井 もちろんいろいろな美味しいものはあるのですが、一つ挙げるとするならば、小樽で食べたいかめしは美味しかったです(笑)。

――これまで獲得した賞金を使って、買ったものはありますか。
藤井 ほとんどなくて4年間くらい使っていた、スマホを買い換えたくらいです。

――最後にファンに向けて一言いただけますか。
藤井 今年も対局をご覧いただきありがとうございました。2024年も楽しんでもらえるように、少しでも多くよい将棋を指せるように取り組んでいきますので、よろしくお願いします。

【取材・構成】将棋世界編集部 下村康史