円谷プロ史上最大の祭典『TSUBURAYA CONVENTION 2023』(ツブコン)が2023年11月25・26日の2日間、東京ドームシティと東京ドームホテルにて開催された。前回(2021年)はあいにくのコロナ禍のためオンライン開催となったが、今年は4年ぶりのリアル開催が実現。円谷プロ創立60周年という節目を迎え、さらなる未来を目指して盛大なイベントがいくつも行なわれた。ここでは初日に開催された、オープニングセレモニーの模様をお伝えしよう。

イベントの幕開けを告げるため、さっそうと現れたのはウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャック(帰ってきたウルトラマン)、ウルトラマンA、ウルトラマンタロウの「ウルトラ6兄弟」だった。

続いて、今回のメインプレゼンターを務める円谷プロ代表取締役会長兼CEOの塚越隆行氏が登場し、『ツブコン2023』のテーマ「空想の力」を発表した。塚越会長は「『ウルトラQ』から始まった円谷プロの作品群は、製作に関わったすべての人々の“空想の力”から生まれたものです。人類が空想を楽しむ限り、私たちは空想の力を信じて作品を作り続けます」と挨拶。

円谷プロ創設者であり「特撮の神様」と呼ばれた特技監督・円谷英二氏の少年時代をイメージした「空想の力」シンボルマークを指して「円谷少年は家の近くのお寺にあるイチョウの木に昇り、空を見上げて飛行機乗りになることを夢みていたといいます。私たちは円谷英二をはじめ、先人たちの“空想の力”を大事にする遺伝子を引き継いでいくという思いを、このシンボルに込めました」と説明した。

ツブコン開催に際して円谷プロは、英二監督の故郷であり、M78 星雲・光の国の姉妹都市でもある福島県須賀川市と「空想の力を育むまちづくり」の協定を締結。市のみなさんと共に、空想の力の楽しさ、大切さを全国に発信する試みがなされた。ツブコン開催中、会場には須賀川の小学生が描いた「怪獣の絵」や、中学生による「M78 星雲のレポート図」が掲示され、子どもたちの持つ無限のイマジネーションのすばらしさを大いにアピールした。

続いて、『ウルトラセブン』(1967年)55周年プロジェクトの最新映像『ウルトラセブンIF story 55年前の未来』の完全版上映が行なわれた。この映像では、ウルトラセブンの地球上での姿=「モロボシ・ダン」のモデルになった「薩摩次郎」(第17話「地底GO!GO!GO!」より)役で森次晃嗣が出演するほか、最新デジタル技術「バーチャルヒューマン」を使い、55年前のモロボシ・ダンとアンヌ隊員を活き活きと描いているところが注目ポイントだった。

上映後、ウルトラセブン=モロボシ・ダン、そして薩摩次郎を演じた森次晃嗣がステージに登場。コンセプトムービーの撮影について尋ねられた森次は「川崎の工業地帯で撮影したんですけど、寒くて大変でした」と、作中のウルトラセブンと同じく自分も「寒さには弱い」とこぼしつつ「薩摩次郎を演じて、55年前のことを思い出しました」と笑顔で語った。そして「青春を燃やして作品を作った若いスタッフのみなさんのことが、今も脳裏に浮かびます。僕がM78 星雲に帰ったあとも、この作品は永遠に生き続けると思っています。ウルトラセブンは永遠のヒーローですね」と、苦楽を共にしたスタッフ、そして共演者たちが熱意を込めて作り上げた『ウルトラセブン』の素晴らしさを今一度噛みしめるかのようにコメントした。

次に塚越会長から発表されたのは、ウルトラマンシリーズの原点『空想特撮シリーズ ウルトラマン』の新たな魅力を探る新プロジェクト『空想特撮シリーズ THE ORIGIN OF ULTRAMAN』。これは「ULTRAMAN ARCHIVES」プロジェクト初・グローバルに展開するドキュメンタリー映画作品となる。

今回のツブコンに向け、本作のインタビュー部分から『パシフィック・リム』『シェイプ・オブ・ウォーター』で知られるギレルモ・デル・トロ監督の映像がスクリーン上映された。デル・トロ監督の故郷メキシコでは、ウルトラマンシリーズをはじめとする日本の特撮作品やアニメが多く放送されていて、監督自身もウルトラマンに憧れていたという。監督は『ウルトラマン』の魅力として「怪獣が悪、人間が善という分け方をしていない」という独特な世界観を挙げ「まるでドキュメンタリー映画のように、怪獣のいる世界を特撮で完璧に作り上げています。作り込まれた世界がリアルであればあるほど、怪獣と人間の存在がバランスよく保たれる。この考え方は私の映画にも活かされている」と、1966年の円谷プロスタッフの仕事ぶりをリスペクトする言葉を放った。

そして、『ウルトラマン』のエピソードを新たな視点で楽しんでもらうための企画として紹介されたのは、『空想特撮シリーズ ウルトラマン4Kディスカバリー』。その内容は、世界のあらゆる物語を見ることができる不思議な映画館を舞台に、その劇場の支配人と「謎の少女」が『ウルトラマン』の物語を一緒に見ていくというもの。劇場支配人役には『ウルトラQ』『ウルトラマン』でナレーターを務めた俳優の石坂浩二。支配人と一緒に『ウルトラマン』の物語について語りあう謎の少女に浅沼みうがキャスティングされ、「生命(いのち)のものがたり」「浪漫のものがたり」「仲間のものがたり」「正義のものがたり」と、4つのテーマに分けられたエピソードを観ることができる。

ステージに登場した石坂浩二は「4Kで鮮明になるのは映像だけではありません。フィルムのすべてに込められた当時の撮影スタッフの熱情も、4Kによってより鮮やかによみがえるのです」と静かな口調で語った。そして「子どものころは、ウルトラマンと怪獣のプロレス的な格闘にワクワクしていたと思いますが、大人になってから改めて観ると、ストーリーの中にさまざまなメッセージが込められていることがよくわかります。これぞ空想特撮の魅力。年齢を経た大人にこそ、ぜひ観ていただきたい作品です」と、ノスタルジーではなく「新鮮な感覚」で今回の『空想特撮シリーズ ウルトラマン4Kディスカバリー』を観てほしいと語った。

現在放送中のウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンブレーザー』から、ウルトラマンブレーザーと、ヒルマ ゲント隊長役・蕨野友也、そして田口清隆監督が登場。ここで発表されたのが、テレビシリーズ最終回の「その後」を描く映画『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』である。

田口監督は「テレビシリーズの製作発表の時点で、テレビ全話と映画を撮り終わっていました。このたびやっと映画の発表ができて、嬉しく思います。テレビの最終回は大きく盛り上がるんですけど、その後を描く映画ではSKaRD(スカード)のみんなが次の大きな難局に立ち向かうことになります」と、これから放送される『ブレーザー』最終回を踏まえた上で、さらなる大事件が映画で巻き起こることを発表した

蕨野は本作の見どころとして「最終回を経て、成長したSKaRDメンバーが見どころです。そして、ゲントと妻サトコ、息子ジュンとの『家族の絆』が試されるストーリー。楽しみにしてください」と、現在はまだ詳しい内容に触れられないながらも、激しい戦いとドラマチックなストーリーが待っていることを教えてくれた。

本作の「特報」映像には、市街地や工業地帯に出現する怪獣たちと、それに立ち向かおうとするSKaRD隊員の活躍、そして複数の怪獣を相手に苦しい戦いを強いられるウルトラマンブレーザー……と、大迫力の特撮カットがいくつも収められていた。田口監督は「現在、世界中で怪獣映画が作られているなかで、こんな怪獣映画もいいんじゃないかと思える作品を作りました。公開を楽しみにしてください」と語り、日本の『ゴジラ-1.0』やアメリカの『Godzilla x Kong: The New Empire』と意欲的な怪獣映画が作られる中で「俺の怪獣映画はこうだ!」と自信をもって届けられる会心の作品が出来た喜びと自信をアピールした。

2019年に絵本とイベントで展開し、好評を得た『かいじゅうのすみか』が、新たなプロジェクトとして再始動する。塚越会長は「MONSTERとは異なる」ウルトラ怪獣の魅力を改めて追求し、独自の個性、世界観をあますところなく感じられる世界を生み出したいという思いでプロジェクトを立ち上げたそうだ。

円谷プロと共同で『かいじゅうのすみか』の物語を作り上げたのは、作家の小森陽一氏。小森氏は「半世紀もの間、ずっと怪獣のことを考えてきました。こういう職業についたのは『ウルトラマン』のテレビ音声をカセットテープに録音し、それを聴きながらノートにセリフを書き起こしていたのがきっかけ」と、作家人生の原点にウルトラ怪獣とウルトラマンがあったことを明かし「そんな人間が、かいじゅうのすみかはどこだと言われたら、燃えますよね」と話して笑顔を見せた。

小森氏による『かいじゅうのすみか』小説は2024年に書籍化される予定。ステージ上で小森氏と塚越会長が『かいじゅうのすみか』の展開について盛り上がり、熱く語りあいながらその場でイメージをどんどん膨ませていく様子が見られた。

ウルトラマンシリーズに登場する「ダークヒーロー」たちを主役にしたプロジェクトとして、舞台公演が好評を博した『DARKNESS HEELS』が、アニメ作品になることが発表された。すでに円谷プロとLDH DIGITALの共同企画として、新感覚ダンスアプリ「キャラだん」にダークヒーローたちが登場。ステージにはオリジナル楽曲およびダンスのプロデュースを手掛けているEXILE / FANTASTICSの「世界」が現れ、スクリーン上に映し出されたイーヴィルティガとシンクロして、華麗かつダイナミックなダンスを披露した。塚越会長は「キャラクターの野性味、個性、世界観、価値観をダンスで表現できないかと考えたとき、最初にお名前が挙がったのが、特撮・アニメ・ウルトラマンに造詣の深い世界さんでした」と、コラボの経緯を説明。

世界は「子どものころから大好きなウルトラマンに携わるということで、めちゃくちゃプレッシャーがありました。イーヴィルティガはミステリアスな雰囲気で、何をやっているかわからないけどカッコいい、何だかわからないけど凄い。そういう表現をダンスに当てはめて、勉強させてもらうこともあります」と、専門分野であるダンスとウルトラマン(ダークヒーロー)とのコラボに確かな手ごたえを感じ、さらに「学び」があると語った。

また『DARKNESS HEELS』アニメ化に関しては「僕は声優の仕事もさせていただいているので、ぜひ出演したいです! こういった話は、ステージ上で決まることが多いと聞きました(笑)」と世界が出演への熱いラブコールをすると、塚越会長から「もちろんです。やりましょう!」と頼もしい返事をもらう場面が見られた。「ウルトラマンシリーズの中でも『ウルトラマンネクサス』が大好き」という世界は「ウルトラマンに携わらせていただいた人間のひとりとして、みなさんに楽しんでいただけるようなコンテンツを作りたい」と、声をはずませながら意欲あふれるコメントを残した。

本日最後の発表となったのは、2024年にNetflixで世界配信が予定されている3DCGアニメーション長編映画『ULTRAMAN: RISING』。『スター・ウォーズ』や『ジュラシック・パーク』など数々の大ヒット作で知られる世界最高峰の映画製作プロダクション「ILM(Industrial Light & Magic)」がCGアニメ制作を手がけ、『KUBO クボ 二本の弦の秘密』で知られるシャノン・ティンドル氏が監督を務めるということで、特撮ファン、映画ファンから熱い視線が注がれている。

ステージにはシャノン・ティンドル監督、ジョン・アオシマ共同監督、そしてウルトラマンになる主人公のプロ野球選手ケン・サトウの声を演じる山田裕貴が登場した。

シャノン監督は「この作品の元になったアイデアは20年前からありましたが、そのときは実際に作れるとは思っていませんでした。それから年月が過ぎて、円谷プロさんとNetflixにお会いする機会がありました。ウルトラマンを使って『家族の絆』をテーマにした物語を作りたい、その思いを円谷プロさんに受け入れていただき、今回のプロジェクトが形になりました」と、企画実現までの道のりを説明した。

ジョン監督は「子どものころ日本に住んでいて、そのころからずっとウルトラマンに対する愛情を抱いていました。今回シャノンや製作クルーと一緒に仕事をして、みんなもウルトラマンに憧れを抱くファンだったことを知りました。そんな憧れでわれわれは自然につながり、それが原動力になり、世界に向けたウルトラマンを作ろうというインスピレーションが浮かびました」と、幼いころから持ち続けていた「ウルトラマンへの愛」がそのまま形になったことを明かした。

日本語吹き替え版でケン・サトウの声を演じる山田は「子どものころの夢はスーパーヒーローになることと、プロ野球選手になること。この作品が2つの夢を叶えてくれました。俳優デビューはある海賊のヒーロー、そして今はある怪獣と戦っていますが、まさか自分がウルトラマンになれるとは……と、嬉しく思っています」と、2011年に出演した『海賊戦隊ゴーカイジャー』(ゴーカイブルー)と現在公開中の『ゴジラ-1.0』という別の特撮作品を挙げつつ、憧れだったウルトラマン役をつかみとった喜びを示した。

また山田さんは「僕の父はプロ野球選手。このことで、幼いころは嫌な思いをすることがありました。自分は自分なのにな……みたいな。この作品では、ウルトラマンを通じて父と子の愛情など、いろんな感情が表現されています。僕自身とケンの気持ちがシンクロする部分があります。寡黙だった父や、家族からもらった愛情を、自分の声に込めました」と、役と自分とを重ね合わせ、情感のこもった演技を心がけていたことを明かし「日本でも、めっちゃ広めたいっす! なにとぞよろしくお願いします!」と言葉を強め、ウルトラマンの故郷である日本での大ヒットを願った。

映画に登場する怪獣「ジャイガントロン」を交えてのフォトセッションでは、山田、シャノン監督、ジョン監督がそろってウルトラマンのスペシウム光線発射ポーズをするサービスが観られた。

配信開始に向け、山田は「長い歴史のあるウルトラマンが世界に羽ばたきます。作品に携わったすべての人の気持ちを背負って、日本のみなさんにしっかりと本作の『愛の物語』と『ウルトラマンの世界』を伝えたいです。マジで気持ちを込めて声を届けますので、楽しみにしてください」と抱負を語った。

ジョン監督は「本作は愛の結晶のような形で作品になりました。ここに至るまで長い旅路でしたけれど、ようやくみなさんにお届けするところまで来ました。この作品は、チームのメンバーが誰ひとり欠けても実現できませんでした。ILMをはじめ、みんながいたからこそ作ることができた、そのことがとても嬉しいです」と語り、製作チーム一丸となって作り上げた本作に強い愛着と自信をのぞかせた。

シャノン監督は「塚越会長と円谷プロのみなさんが我々にこの作品を託し、信頼してくださったことに感謝します。加えて、ウルトラマンシリーズと共に生まれ、育った日本のファンの方たちに敬意を捧げます。作品の中のすべてのフレーム、すべてのコマに愛を注いで完成させました。ファンのみなさんのご期待に沿えるように作ることができたと思います。ぜひお楽しみください!」と話して、ウルトラマンを愛し、ウルトラマンと共に暮らしてきた日本のファンに楽しんでもらえる作品だと、熱烈にアピールした。

『TSUBURAYA CONVENTION 2023』では各会場でトークイベント、ステージショーが行なわれると同時に、東京ドームシティ・プリズムホールにて豪華ゲストを招いての撮影会&サイン会を実施。さらには記念グッズ&オフィシャルグッズが並んだ「ウルトラマンデパート」と、ウルトラマン関連の限定グッズを販売する「コレクションゾーン」なども盛況を見せた。