ビデオリサーチ主催のセミナーイベント「VR FORUM 2023」が28日に開催され、カンテレ、ABCテレビ、中京テレビ、静岡放送から、コンテンツ価値最大化の取り組みが紹介された。

  • (上段左から時計回りに)カンテレ・竹内伸幸コンテンツビジネス局局長、ABCテレビ・井口毅コンテンツプロデュース局長、静岡放送・奈良岡将英事業変革推進室長、中京テレビ・桑原久夫メディア戦略局長

    (上段左から時計回りに)カンテレ・竹内伸幸コンテンツビジネス局局長、ABCテレビ・井口毅コンテンツプロデュース局長、静岡放送・奈良岡将英事業変革推進室長、中京テレビ・桑原久夫メディア戦略局長

■カンテレドラマブランドが認知されるように

カンテレの竹内伸幸コンテンツビジネス局局長は、動画配信事業が2018年度から22年度で128%の成長を遂げていることを示し、「昨年度まで全国ネットドラマ1枠ながらも良い作品に恵まれ、カンテレブランドのドラマの存在は、ここ数年でかなり認知されるようになったと思っています」と胸を張る。

かつて番組の評価指標は世帯視聴率一辺倒だったが、現在は従来の放送広告収入に、配信などのコンテンツビジネス収入を加えて利益を生み出すようになったことから、カンテレでは地上波の視聴人数、TVerなど見逃し配信の視聴人数、そしてNetflixなどサブスク動画配信サービスの視聴人数を足した「トータルリーチ」がドラマの価値指標に。

そのため、自社のカンテレドーガや系列のFODのみならず、「配信可能なOTT(動画配信事業者)に全方位でコンテンツを供給していく。これが弊社の動画配信事業の特徴でもあり、アドバンテージにもなっております」と戦略を明かす。さらに、佐野亜裕美氏プロデュースの『大豆田とわ子と三人の元夫』『エルピス―希望、あるいは災い―』など、権利者配分の少ないオリジナル作品で高収益化を図っている。

■『相席食堂』TVerきっかけにリーチ拡大

ABCテレビの井口毅コンテンツプロデュース局長は、千鳥がMCを務める『相席食堂』の事例を紹介。関西での地上波放送に加えて27局への番組販売、TVer・ABEMAでの見逃し配信、そして9社でサブスク配信され、視聴者へのリーチを拡大している。

サブスク配信がここまで拡大したのは、「やっぱりTVerがすごく大きいです。地理的・時間的制限がないもんですから、巷の話題の受け皿に上手くなれて、コアな視聴者層を広げていき、そうなってくると今度は過去作も見たいという話になってくる。その結果、9社の配信プラットフォームにセールスできるという状況になっています」という。

リーチが広がったところで、今度は深めていく施策として、独自のファンコミュニティアプリを今年スタート。同局での番組指標は、地上波での収入(広告・番販など)、配信収入、その他収入(イベント、グッズ・DVDなど)の3つの総和で、1つの番組がトータルでどれだけの収益を上げたかを評価するようになったそうだ。

■『オドぜひ』は「非常に高い利益率」

中京テレビの桑原久夫メディア戦略局長は「自社制作番組についてはほぼ各プラットフォームに出し尽くした状態で、実は配信の売り上げは鈍化しております」と現状を説明。そこで今年、同局として初の連続ドラマ『スーパーのカゴの中身が気になる私』を制作し、「今後第2弾、第3弾と積極的にやっていきたい」と意欲を示す。

一方で、YouTubeに名場面集などのショート動画を新たに展開し、再生数増とPR効果による地上波回帰を図っている。同局の番組YouTubeチャンネルの登録者数1位は、55万人を超える『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』。ローカル深夜番組スケールの安価な制作費で、全国29局に番販、DMM TVとNetflixで配信され、「自社制作番組の中では、非常に高い利益率を誇っています」と明かした。

■生活情報に高いニーズ「もっともっとローカルに」

在阪局・在名局がエリアを超えてグローバルも見据えた展開を進める一方、静岡放送の奈良岡将英事業変革推進室長は「もっともっとローカルに、生活に役立つ情報みたいな切り口というのもあると思っています。我々が今デジタル(アプリ)で提供してるコンテンツの中ですごく人気があるのが、静岡市内の新店情報とかリニューアル情報、閉店情報で、これが結構見られているんです。自分の生活に密着した、身の回りのことを知りたいというニーズは確実にあるので、こちらに注力してやっています」と説明。

そのアプリが、今年4月にスタートした「@S+(アットエスプラス)」で、「静岡新聞DIGITAL」や、県内のサッカー情報を集約する「シズサカ」などを配信。「“ローカル”というのが東京に対するローカルという話ではなくて、今後は自分にいかに関係するかでのローカルという捉え方をしていくほうがいいのではないかと思います」と提唱した。