文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス



 プジョー2008がマイナーチェンジした。2世代目となるモデルのスタートが2019年だから少し遅いくらいだが、その間コロナ禍であったことを考えれば不思議でもない。半導体不足も相まって、各社モデルサイクルは狂っている。


モダンになったエクステリアデザイン



プジョー 2008 GT BlueHDi

 そんな中今年10月日本上陸した新型の特徴はまずはデザイン。ライオンのかぎ爪をイメージしてつくられたデイタイムライトを採用し、その周辺の印象を変えている。これでオーセンティックな雰囲気が一気にモダンになったし、ライオンを定義することでアイデンティティを強調することができた。リアコンビネーションランプもそう。点灯すると3本のかぎ爪が現れる。また個性的なデザインのアロイホイールを装着することで都会的さがアピールする。パリの街角を疾走する感覚だ。




プジョー 2008 GT BlueHDi

インターフェイスが改良されさらに使いやすく



プジョー 2008 GT BlueHDi

 インテリアもアップデートされ、これまで以上に洗練された。プジョー自慢のi-Cockpitは最新の3D i-Cockpitとなり、ドライバーを楽しませる。フルデジタル化され3Dディスプレイとなったメータークラスターが未来感を醸し出す。ドライブモードでカラーが変わりドライバーにその違いを意識させる手法だ。



 そんなインターフェイスの進化は歓迎するが、個人的にはi-Cockpitそもそものドライビングポジションも好み。メーターを見やすくするためかなり低い位置でステアリングの上下調整を行うことになる。そのステアリングをストレートアームで握るとかなりゴーカート感覚で運転できる。これがプジョー自慢の足捌きを相まってかなり運転を楽しくする。もちろん好き嫌いはあるだろうが、運転好きにはたまらない。




どこまでもしなやかなフットワーク



プジョー 2008 GT BlueHDi

 その足捌きは新型も健在で、今回のテストドライブでもプジョーらしさを十分堪能させてくれた。軽めのパワステをスッと切ると瞬間的に鼻先が向きを変え、リアサスペンションが粘りながらコーナーを駆け抜ける。しかもその時の足はバタバタしないで、どこまでもしなやかに路面からの入力をこなしてくれる。「これこそプジョー!」といった味付けだ。



 そんなことができるのは、このクルマのプラットフォームがコンパクトハッチバックの208と共有しているからだろう。背の高い低いはあるが、かなりのレベルでハッチバックのキビキビさを再現している。よってそこはかつてのホットハッチファンも納得の仕上がり。ロールの抑え方も自然で好感を持てる。“若干ロールした方が好き派”のワタクシとしても嬉しくなるセッティングだ。




プジョー 2008 GT BlueHDi

 パワーソースは、1.2リッター直3 PureTechガソリンターボエンジンと1.5リッター直4 BlueHDi ディーゼルターボエンジンという設定。前者が最高出力130ps、最大トルク230Nmで、後者が130ps、300Nmというデータとなる。イメージ的にはガソリンユニットが似合いそうだが、実はディーゼルが予想以上に楽しいことをお知らせしておこう。確かにトルクはガソリンより太くなるが、ガソリンユニットに負けないくらい元気よく回転するからおもしろい。ただ、思いのほかディーゼルは音がうるさいのが気になった。振動は絶妙に抑え込んでいるが、いわゆるガラガラ響くディーゼル音はそれなりに聞こえる。まぁ、慣れればそれも走らせている気分が高まるのでいいだろう。それに燃費の面からもディーゼルターボは武器になりそうだ。


まとめ


 というのが今回マイナーチェンジした2008となる。価格はガソリンターボで400万円前半からというのは魅力的だ。ただ、個人的に好きなのはコンパクトハッチの208GTで、エントリーモデルはなんと300万円前半から設定されている。2008と比べるとおよそ100万円安い感じだ。納得のリーズナブルプライスである。でも世の中SUVブームだから軍配は2008に上がるかもしれない。ユーティリティからしてもキャビンは断然広いからリアシートからの苦情は来ないし、前2名ならリアシートを倒して目一杯荷物を積むことができる。まぁ、そこがSUV人気の定番項目なんだけどね。




自動車ジャーナリストの九島辰也氏

 いずれにせよ、かねてからのプジョーファンもこのクルマは要チェックだろう。デザイン、ハンドリング、乗り心地の面で期待を裏切らないし、これだけ積載性が高ければ文句ないだろう。要するに比較的身近な輸入車SUVであることは間違いない。そして山道を自由に駆け回りたい方は要チェックの一台だ。