文●九島辰也 写真●マセラティ



 このところマセラティが活発に活動しています。アイコンとなるスーパーカーMC20のオープントップ“Cielo(チェロ)”の登場や新世代SUVグレカーレのデリバリーが開始されました。MC20にはその後ノッテ(Notte)という特別仕様車を追加しましたし、グレカーレは日本カー・オブザイヤーの10ベストにも入ったほど高く評価されています。
 そしてそれに続くように、先日新型グラントゥーリズモが姿を現しました。場所は東京・築地本願寺、その敷地内の講堂です。




マセラティ グラントゥーリズモ

 招待されたのは日本をはじめインド、韓国、東南アジアのメディア。マセラティ・ジャパンとマセラティ・アジアパシフィックの代表の手によってアンベールされました。すでに写真はネット上にアップされていますし、今年の夏にはディーラーでキャラバンが行われていましたが、リアルはこれが初めてだったのでワクワク。正直かなりカッコイイですからね。ウルトララグジュアリーカーやスーパーカーオーナーの方も気になっていることでしょう。




マセラティ グラントゥーリズモ

 このデザインの良いところは、進化させながら良いものは残すという考え。ヘリテージを継承するといえばそれまでですが、見事に完成させています。発表会の前の週に行われたデザイン部門のトップ、クラウス・ブッセ氏のオンラインプレゼンテーションでもそんな話をしていました。マセラティを代表するモデルA6 GCSの名を挙げ、マセラティがつくるクルマの美しさを説きました。A6 GCSは昨年のモントレーカーウィークのひとつで世界最高のクラシックカーに選出されたモデルです。




マセラティ A6 GCS

 よって、メディアからの「先代グラントゥーリズモに似ているのはどうしてか?」、という質問にクラウス・ブッセ氏は躊躇なく答えます。良いものを残すこともまた大切なことであり、勇気が必要なことなのだと。それにしてもスタイリングは理想的。斜め後ろからの眺めは思わずセクシー!なんて言葉が浮かんできます。
 アンベールされたグラントゥーリズモは75th アニバーサリーエディションでした。それはグラントゥーリズモの歴史の起点を1947年のジュネーブモーターショーで発表されたA6 1500とするからです。デザインしたのはピニンファリーナ。これがマセラティにとって最初のロードカーでした。つまり、サーキット中心ではなく公道を走るためのものです。生産はたったの61台だったそうです。



 ちなみに、個人的にはその後1954年に登場したA6G/54が好きです。その年のパリオートサロンでお披露目されたモデルで、ボディはザガートが製作しました。と同時にフルアによるクーペやスパイダー、アルマーノによるフォーマルなクーペが製造されました。当時はカロッツェリア全盛でしたから、少数ですがユニークなモデルが登場しました。もはやどれも高値で取引される歴史的遺産ですが。




マセラティ A6G/54 ザガート

 グラントゥーリズモのスペックは、ガソリンエンジン車には3リッターV6ユニットが搭載されます。MC20やグレカーレと同型のユニットです。パワーはモデナは490ps、トロフィオは550psとなります。トロフィオの最高速度は320km/h、0-100km/h加速は3.5秒ですからもはやスーパーカーの領域です。パワフルですね。どんな乗り味なのかテストドライブが楽しみです。思うに、最近の傾向からすると乗り心地はかなり良いような気がします。そうそう、追ってBEVのフォルガーレが追加されるのもポイント。マセラティの電動化は気になります。



 それにしても海外メディア向けに高尚なお寺でアンベールするなんて洒落ています。僕らがヨーロッパに呼ばれて、古城の庭に飾られたクルマを見るのと同じような感覚でしょうか。素敵ですね。そういえば、フェラーリ・プロサングエは京都の仁和寺で大々的に行いましたっけ。マクラーレンも芝の増上寺にクルマを並べたり。日本が誇るせっかくの神社仏閣ですからね。今後はこんな使われ方が増えていくことを期待します。