幕張メッセで11月10日まで開催される「第8回 鉄道技術展」に三菱重工業が出展。得意としているホームドアと鉄道車両用エアブレーキの展示に加え、DX&サイバーセキュリティ関連や国内初の総合交通システム検証施設「MIHARA試験センター」について紹介した。

  • 三菱重工のブースに展示された多段式ホームドア

■多段式ホームドアでドア位置の異なる車両に対応

三菱重工の展示では、複数段の扉がある多段式ホームドアの展示がとくに目を引いた。複数の車種が乗り入れる駅では、車種ごとに車両のドア位置が異なる場合があり、ホームドアの設置が困難になってしまう。三菱重工は多段式の扉を採用することにより、大開口の間口対応を実現している。

会場に展示されたのは、2024年3月から中百舌鳥駅(南海高野線)で使用されるホームドア。南海電鉄の場合、ドア数が同じでも形式等によってドア位置が少しずつ異なっており、そうした状況への対応として、大開口のホームドアが必要だった。南海電鉄以外にも、多様な車種が走る鉄道にこのタイプのホームドアを提供しているという。

  • 多段式ホームドアの具体的な使われ方

多段式ホームドアの特徴としては、間口を大きくするために戸袋を小さくしたこと、小さくした戸袋に開口時のホームドアが収まるように、複数段のホームドアにしていることが挙げられる。展示されたホームドアは2段式のものだった。

■防衛部門のDX&サイバーセキュリティを鉄道に生かす

三菱重工は防衛関連の技術開発も行っており、防衛部門で培ったサイバーセキュリティ技術を鉄道でも生かそうとしている。

  • 三菱重工業のDX&サイバーセキュリティ

今後、サイバーセキュリティが日本でも重要になると同社は考えている。すでに海外でサイバー攻撃の脅威に対応するための先進的かつ論理的なエンジニアリングプロセスが一般的になっていることを踏まえ、鉄道システムの高度化に向けてデジタル活用とセキュリティを重視している。同社の防御技術で鉄道の危機にも取り組む。

■世界に鉄道事業を展開するための「MIHARA試験センター」

三菱重工は広島県三原市に「MIHARA試験センター」を設け、多様な交通システムを試験している。システム検証や現地再現実験、訓練、デモンストレーション、技術開発などに利用されている。

  • 「MIHARA試験センター」の紹介。マルーンの電車は元能勢電鉄の車両

海外進出する際、実験での走行距離が求められるため、この試験センターをつくったとのこと。鉄輪周回線は約3.2㎞あり、標準軌1,435mm・狭軌1,067mmの3線軌条となっている。新交通システムの試験線もある。新興国の都市交通を想定した試験線では、50パーミルの勾配や高架高さ6m、小曲線120Rといった環境を備えている。

■オイルフリー空気圧縮機も展示

三菱重工は空気制御装置(鉄道車両用エアブレーキ)も得意としているという。今回の鉄道技術展で展示されていたオイルフリー空気圧縮機は、従来の製品と異なり、油を使用せず、環境負荷が少ないものを使用。メンテナンス性も向上している。

  • 電動空気圧縮機の正面

  • 電動空気圧縮機の裏側

  • 三菱重工のブース

1つの機材に2台の圧縮機が入っているため、冗長性も確保されている。2003年から海外で販売し、2010年から国内でも使用されている。