幕張メッセで11月8~10日に開催される「第8回 鉄道技術展」にて、JR九州は九州新幹線と西九州新幹線で導入しているEVカート搭載型「軌道モニタリング装置」を出展した。AIカメラを搭載し、レールを締結しているボルトの緩みを自動で判定できる。

  • 一昨年に続き、今年も鉄道技術展にJR九州が出展

「軌道モニタリング装置」は、線路をメンテナンスする業務のひとつである「線路巡視」の効率化をめざし、開発された。線路巡視では、沿線の環境変化やレールの変状などを目視点検しており、毎月1回の頻度で全線を点検する。従来は2人1組で1日6~8kmを歩き、点検を行うため、線路巡視に要する人員が1カ月あたりのべ90組程度となり、多大な労力がかかっていた。

そこで、線路上をEVカートで走行し、1日の巡視距離の延伸を図るとともに、目視点検を補助するためのAIカメラを搭載した「軌道モニタリング装置」を開発。AIカメラの他に照明、演算用CPU、バッテリーなどで構成され、左右のレールの直上に設置したカメラでボルトを撮影。ボルトの緩みを即座に判定できる構造となっている。カート走行時、ボルトが見えにくくなることから、同装置はレール周りのボルトを検知し、緩みの判定ができるしくみに。判定結果は手持ちのタブレット端末に表示され、緩んだボルトがあった場合、その場で補修することもできる。

この装置に搭載された「AMD Kria K26 Adaptive System-on-Module(SOM)」は、AIを使用し、カメラ画像を高速に処理するコンパクトな組込みプラットフォーム。リアルタイムでの高精度な意思決定処理を可能にしている。カメラの位置を変更し、追加学習させることで、さまざまな部材検査に応用することもできる。

  • 「軌道モニタリング装置」はEVカートに搭載可能。走行中、AIおよび画像解析により、ボルトの緩みをリアルタイムに検知・判定し、手持ちのタブレットに表示される

「軌道モニタリング装置」の導入により、線路巡視はEVカートを使用して行われるようになり、1日あたり18km程度の点検が可能になった。徒歩での点検(1日あたり8km程度)と比べて移動距離が2倍以上になり、線路巡視にかかる1カ月あたりののべ巡視組数も約4割削減できたという。