ホンダ初の軽EV(軽自動車の電気自動車)はどんなクルマになるのか。2024年の発売を予定する「N-VAN e:」の「ほぼほぼ量産型に近い」プロトタイプを「ジャパンモビリティショー2023」(一般公開日は11月5日まで)で確認し、ホンダの説明員に話を聞いてきた。

  • ホンダの軽商用EV「N-VAN e:」のプロトタイプ

    ホンダの軽商用EV「N-VAN e:」は完成間近?

EV化で走りが上質に! 荷室容量は減ってない?

「N-VAN e:」はホンダの軽自動車「Nシリーズ」の軽バン「N-VAN」をベースとするEVだ。プラットフォームは同じものを使いつつ一部に改良を実施。もともとの積載性を犠牲にすることなく、高密度バッテリーをフロア下に搭載してEV化した1台である。ガソリンエンジン車と同じシートアレンジが可能なので、N-VANを仕事に使っている人が乗り換えても使い勝手に違和感はないというのがホンダの説明だ。

  • ホンダの軽商用EV「N-VAN e:」のプロトタイプ
  • ホンダの軽商用EV「N-VAN e:」のプロトタイプ
  • ホンダの軽商用EV「N-VAN e:」のプロトタイプ
  • EV化しても荷室容量は少しも減っていないとのこと

内装は刷新している。ガソリン車のN-VANは「やや乗用ユースにも振っている」(以下、カッコ内はホンダ説明員のコメント)ため、内装には「商用車にしてはトゥーマッチな」ところがあるそうだが、N-VAN e:は商用ユースに合わせて装備を最適化したそうだ。とはいえ、グレードでしっかりと性格を分けながら、アクセサリーパーツを使ったアレンジも可能な商品とするつもりだという。N-VANを遊びグルマとして使っている人の乗り換え先としても成り立つような工夫を盛り込むらしい。素の状態で、最大空間を活用できるEVとして提案し、カスタムしたい人には自由にやってもらおうという趣向だ。

乗り心地については「断然、変わります」とホンダ。重い部品であるバッテリーを床下に積むので重心高が下がり、操縦安定性は格段に高まり「上質な走りに」なっている。軽自動車ではターボエンジンを積んでいたとしても加速時にエンジン音が気になるものだが、モーターでガソリン車と同じ出力を出すN-VAN e:は静かに、かつスムーズにタイムラグなく加速できる。もちろん振動も少ない。軽バンを個宅配送などに使っている人は、軽商用EVに乗り換えれば働く環境がぐっとよくなるはずだ。

モーター駆動のEVは大きなトルクを瞬発的に発揮させることが可能なので、加速(出足)のいいクルマが多いのだが、モノを運ぶという大事な役目を担う軽商用EVにとって、鋭すぎる加速感は考えものだ。積んでいる荷物が加速時に崩れてしまっては問題だからだ。そのあたりについてもホンダに抜かりはない様子。荷物をたくさん積んでいる時でもスムーズに走れて、荷室が空のときでも加速しすぎない、アクセル開度とトルクの立ち上がりの「ちょうどいいバランス」でモーターを制御すべく開発を進めているとのことだった。

  • ホンダの軽商用EV「N-VAN e:」のプロトタイプ
  • ホンダの軽商用EV「N-VAN e:」のプロトタイプ
  • ホンダの軽商用EV「N-VAN e:」のプロトタイプ
  • 段ボール箱なら71個まで積めるとのこと

N-VAN e:の価格については、最も安い法人専売グレードで補助金込みの場合、200万円を切る設定を考えているとのこと。グレードによってバッテリー容量を変えるつもりはないそうだが、法人専売グレードについては動力性能を少し絞ることも検討しているとのことだった。航続距離は210km以上を目指す。ちなみに、ホンダがヤマト運輸と組んで行っているN-VAN e:の実証実験では、地方都市でも1日の走行距離が長くて100kmくらい、都内では50km以下といったケースが多いそうなので、航続距離に不足はないはずだ。