里見香奈白玲に西山朋佳女流三冠が挑戦するヒューリック杯第3期白玲戦七番勝負は最終局となる第7局が10月28日(土)に東京都台東区の「浅草ビューホテル」で行われました。対局の結果、相振り飛車の熱戦を111手で制した西山女流三冠が対戦成績を4勝3敗として第1期以来となる白玲奪還に成功しました。
たどり着いた最終局
通算61局目(里見白玲から見て32勝28敗)となる両者の対局は、勝ったほうが白玲を獲得する大一番。対局室では立会人の深浦康市九段、日本将棋連盟常務理事の清水市代女流七段らが見守ります。
振り駒が行われた本局は先手・西山女流三冠の三間飛車に後手・里見白玲が向かい飛車で対抗する相振り飛車へ。本シリーズの里見白玲は「先手番なら居飛車を持って対抗形、後手番なら相振り飛車」という方針を一貫しています。
菊水矢倉と「棒角」の合わせ技
淡々と駒組みが続くなか、西山女流三冠が工夫を見せます。右辺に移動した自玉をミレニアム囲いの応用で深く囲ったのがそれで、これを受けSNS上は「これは考えた事も無かった」(山本博志五段)、「菊水矢倉は驚きました」と盛り上がりを見せます。
自玉の安全を確かにした西山女流三冠は8筋に振り直した飛車を起点にペースをつかみます。棒銀における銀の代わりに角を繰り出したのが臨機応変の攻めで、後手玉周りに金駒が少ない瞬間をうまくとがめた格好です。
西山女流三冠が白玲復帰
素直に応じてはジリ貧と後手の里見白玲もなんとか変化に出ますが、一度流れに乗った西山女流三冠の勢いを止めるのは困難でした。角取りを手抜いて十字飛車を狙ったのが決め手。こうなると先手の攻めは切れません。
終局時刻は17時34分、最後は後手玉を即詰みに討ち取った西山女流三冠が里見白玲の粘りを寄せつけず快勝。4勝3敗で1年ぶり2度目となる白玲復帰を決めました。これで女流棋界は8つのタイトルを里見・西山の2人で4つずつ分け合う形となっています。
水留 啓(将棋情報局)