俳優の向井理が、中国三国時代の名軍師・諸葛孔明を演じるフジテレビ系ドラマ『パリピ孔明』(毎週水曜22:00~)。“諸葛巾”と呼ばれる頭巾に、グラデーションが鮮やかな着物をまとった姿は、転生先である現代の渋谷という舞台において強烈なインパクトを放っている。
この衣装を手がけたのは、『タイムスクープハンター』『シリーズ江戸川乱歩短編集』(NHK)、『ごめんね青春!』『カルテット』(TBS)、『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ)、『First Love 初恋』(Netflix)などのドラマ・映画を担当してきたBabymix氏。孔明をはじめ、個性あふれるキャラクターたちを生み出したスタイリングには、どんなこだわりがあるのか。『First Love 初恋』に続いてタッグを組み、同氏に絶大な信頼を寄せる八尾香澄プロデューサーとともに話を聞いた――。
■クランクインの半年前からリサーチ開始
「『パリピ孔明』という原作を好きなファンもたくさんいらっしゃるし、諸葛孔明が好きな人も多いだろうし、まず孔明をしっかり作れば、この作品はいけるんじゃないか」(Babymix氏)という意識で、衣装に強くこだわった今作。それだけに、衣装製作にあたってのリサーチは、クランクインの半年前から動き出した。
資料探しから始まり、中国時代劇の経験のある海外の衣装会社なども調べたが、ドラマごとに作られるケースがほとんどで、衣装を保管する習慣がないため、現物を調達することができず、「中国の生地やいろんなパーツは、なかなか日本で入手できないので、現実的な問題が結構ありました」(Babymix)と振り返る。
そのため、クランクインの1カ月半前、最初に行われた衣装合わせでは、「まずは市販の諸葛孔明のコスプレ衣装を買って、漢服をどうアレンジしていくのが良いか、いろいろ重ね着したりしながら、アレンジの方向性を考えました」(八尾氏)という段階だったという。
全体の色味は、原作漫画と同じグリーンがベースになっているが、「最初に色を決めちゃって良い生地が見つからないと厳しくなってしまうので、まずは生地をリサーチするんです。そこでグリーン系にいいのがありました」(Babymix氏)と選定。
演出の渋江修平氏のリクエストで使用感を出すために“汚し”を加えたり、計略を練っているときに頭から煙を出すというアイデアが出ればその装置を組み込んで頭巾に穴を開けたり、夏の撮影に向けて通気性を良くして軽量化したりと試作を重ね、製作には1カ月以上の期間を要した。
■向井理を“物理的に大きくする”
その中でも特にこだわった点を聞くと、「着物の襟や裾にグラデーションを使っています。これによって画に“奥行き”が出たらいいなと思って、全部染めて作りました」(Babymix氏)。また、孔明の存在感を出すために行ったのが、“物理的に大きくする”ということだった。
「英子(上白石萌歌)や他のキャラクターと並んだときに圧倒的な存在感を放つための記号として、孔明のサイズ感を大きくしたいというのがBabyさんの発明です。肩パットを4枚ぐらい入れたり、肩幅以外にもいろいろと着込んだり、袖もかなり長く作ったりしてボリュームを出すことで、元の向井さんよりも大きくなっています。靴も高くしていますし、諸葛巾を通常のものよりかなり大きく作っているのもその狙いです。頭巾だけ大きくして、向井さんの体型にぴったりの漢服を着ると、頭巾だけが浮いちゃうのですが、俳優にそのまま着せるのではなくて、体型から作り込むというところにBabyさんのこだわりがあります」(八尾氏)
それができるのは、向井理だからこそというのもあるそうで、「向井さんは何を着ても着こなしちゃうので、逆に何でもやれるというのがありました。だから、大きくするというのも正解でした」(Babymix氏)と、見事にマッチングした。