• 上白石萌歌

    10月25日放送の第5話より (C)フジテレビ

従来のドラマではあまり見られない試みが、“一人一衣装”という手法だ。

「例えばマーベルで言うと、スパイダーマンにはスパイダーマンの衣装があるように、“このキャラクターと言えばこれ!”という一番ベストなものを用意するというやり方が今回は合うんじゃないかというアイデアがBabyさんから出てきて、それは面白いと思って乗っかりました。その中で英子だけは日替わりしていくことで、ヒロインが変化していくというのを見せているんです」(八尾氏)

「最近のドラマは、“ちゃんと着替えよう”という意識が多いと思うので、新しい試みでしたね。だから、着替えということで言うとエキストラさんのほうが大変で(笑)。自分が映る・映らない関係なく素晴らしく協力していただけて、本当に助けられました。撮影現場では、僕はエキストラの衣装担当に徹していてエキストラの人たちとすごくコミュニケーションを取っていたので、ぜひ注目して見てほしいです」(Babymix氏)

観客が入れ替わるライブのシーンでは、同じエキストラが同じ服装で見ていると違和感が生じるため、その都度着替える必要がある。さらに、Babymix氏が観客役のエキストラの中に入り、帽子のかぶり方や、サングラスなどのアイテムを使って、次から次へと観客のバリエーションを作る作業を行っていた。

八尾氏は「普段の感覚でいうと、メインのスタイリストさんには例えば『主人公とヒロインの衣装をお願いします』という頼み方をするんですが、Babyさんは『First Love 初恋』のときもそうだったんですけど、エキストラも含めて全部やりたいと言うんです。むしろエキストラをやりたいんだって(笑)。プロデューサーとしてはついお金の勘定をしちゃうんですけど、そういうことじゃないんだと思って、結果的に全部やってもらいました」と、熱い思いを受け取ったという。

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■ビジネスのスタンスがあまりなかった現場

八尾氏とBabymix氏が初めてタッグを組んだのは、『First Love 初恋』(22年)。『パリピ孔明』の企画当初、八尾氏は「一番難しいのは孔明の衣装だと思ったんです。同時に漫画原作の難しさの一つに、絵で魅力的に見えている人物を生身の人間が演じる上でどう説得力を持たせられるか、だと思っていて。その上で衣装はとても重要だと考えていました。『First Love 初恋』は日常的な作品ではあるんですけど、Babyさんにしか出せないキャラクターの広げ方があって。スパイスのような個性がどのキャラクターにも入っているところが好きでした。俳優と一緒になってキャラクターを作っていく姿を見て、この作品をやる上で、これ以上最適な人はいないだろうと思ってオファーしました」と、全幅の信頼を寄せて声をかけた。

それを受けたBabymix氏は「独自のワールドを持っている八尾さんと渋江さんの作品なので、ぜひ参加させていただきたいと思いました。また、渋江さんは僕が八尾さんに紹介したのですが、そこからすぐに一緒に作品をやるというのを決めた速さがうれしくて、これは予算や中身がどうこうよりも“僕が参加しないと絶対ダメだ”と一方的に思って。だから、オファーを受けたというより、僕からの押し売りみたいな感じですね(笑)」と、志願したそうだ。

Babymix氏は、その背景に「演出の渋江さんは、僕の周りがとにかく“才能がある人”と言っている方で、この人が世に出る最初のメジャーな作品を、コケさせるわけには絶対にいかない」という使命感があったとも明かした上で、「渋江さんと八尾さんのコミュニケーションが素晴らしかったし、ビジネスのスタンスというのが僕に限らずあまりなかったんじゃないかなと思います。役者さんも含めて、素晴らしい現場でした」と充実の仕事を振り返った。

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