俳優の本郷奏多と大沢一菜がW主演を務め、きょう12日に最終回を迎えるテレビ東京の木ドラ24枠『姪のメイ』 (毎週木曜24:30~)。姉夫婦を事故で亡くした主人公・小津(本郷)が姪っ子・メイ(大沢)を1カ月だけ引き取ることになり福島県楢葉町へ仮移住する、ひと夏の出来事を描いたヒューマンコメディで、都会で育った現代的な思考をもつ32歳独身男子と、芸術家肌で達観した12歳の女子というミスマッチな2人の距離の変化が描かれていく。

  • ドラマ『姪のメイ』

■東日本大震災から12年経って…「ようやく」生まれた『姪のメイ』

青野華生子プロデューサー

きょう12日深夜放送の第6話でいよいよ最終回を迎える同作が舞台としているのは、福島第一原子力発電所の事故により、避難指示等の対象となった南相馬市、田村市、川俣町、浪江町、富岡町、楢葉町、広野町、飯舘村、葛尾村、川内村、双葉町、大熊町の“福島12市町村”。舞台が決まった上で描くことになった“叔父と姪の仮移住”というテーマについて、同作の青野華生子プロデューサーは、本郷演じる小津を通して「希望を持てない若い世代が生きることを学んでいく」様子を描きたかったと話す。

「私はゆとり(世代)ですが、下のZ世代の方たちを含めて、優しいじゃないですか。でもその優しさの裏には『嫌われたくない。失敗したくない』という、ネガティブな感情も隠れているのかなと。ちょっと勇気を出すとか、目標を作るとか、ありのままの自分を出すとか些細なこと積み重ねていけば、もう少し豊かさを感じられるんじゃないかな、と。過去最多の小中高生の自殺、20代の死因1位が自殺というのは本当にショックで『生きてみよう』と思えるメッセージを届けたいと思いました。重く考えすぎなくていいし、案外周りに助けてくれる人もいる。未来に向けて再出発している福島12市町村を舞台にした作品なら、そういう希望を描けるんじゃないかと思いました。今回の企画でいくつか参考にした海外ドラマがあるんですけど、監督たちに『観てほしい』とお願いしたのが、『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』でした。コメディなんですけど内面的なことや普遍的な真理を描いていて、『自分を信じて』というテーマが根幹にある作品で。他にも『スランバーランド』や『ウェンズデー』の要素を参考にしたり。海外ドラマが好きなんです(笑)」(青野プロデューサー、以下同)

SNSでは同作について「映像がきれい」「まるで映画」という意見が相次いでいる。

「最初から監督に『とにかく映像を綺麗にしてほしい』と言っていました。東日本であれだけのことがあって、12年経ってようやく、こうやって海や緑を映し出せることが、現在の福島12市町村を表す上で、象徴的だと思ったんです。私も実際に撮影で訪れて、今生きている人たちを目の前にして、力になりたいと思いました。移住者の方とも会いましたが、キャラの濃い人の集まりで(笑)。わざわざ福島に来るだけのエネルギーを持った方が多いのを感じて、ドラマに出てくるキャラも濃くなったし、実態とずれてないんじゃないかなと思います」

これまでに『直ちゃんは小学三年生』シリーズなどを手掛けてきた青野Pだが、今後はどのような作品を世に出していきたいのか。

「Netflixの『ONE PIECE』を観た時に、やっぱり楽しくてわくわくした作品を作りたいなと思いました。でも個人的には戦いが苦手で……私が作るなら、戦いのない話になると思います(笑)。権力とか縦社会がなく、トップを目指さなくてもいい中で、仲間が増えていくような。壮大なS Fも憧れます。あと今回哲学的な言葉がたくさん出てくるのですが、もし観た瞬間に意味がわからなかったとしても、あとから意味に気づくことがあると思うんです。小説ですけど、私は小学生のときに読んだ『ハリポタ』(『ハリー・ポッター』シリーズ)の愛にまつわる表現の意味が、20年後ぐらいにようやくわかった時には感動しました(笑)。そんなふうに観た瞬間だけでなくて、何年後何十年後にも思い出してもらえるような作品をつくりたいですね……。『いつかの誰かに届けば』という気持ちで、今後もワクワクするドラマを作っていきたいです」

(C)「姪のメイ」製作委員会