第44回将棋日本シリーズJTプロ公式戦は、2回戦第4局の豊島将之九段-糸谷哲郎八段戦が9月23日(土)に北海道札幌市の「札幌コンベンションセンター」で行われました。対局の結果、相雁木の熱戦を173手で制した糸谷八段が自身最高成績となるベスト4進出を決めました。

糸谷八段の力戦雁木

糸谷八段の先手番で始まった対局は相雁木の持久戦へ。糸谷八段は直近の公式戦で何度かこの戦型を試みており、広瀬章人八段との1回戦でも相手の無理攻めを誘って快勝を飾っています。本局の豊島九段も想定内だったかすらすらと駒組みが進展。やがて大盤解説の木村一基九段による指示で封じ手が行われました。

糸谷八段の記した封じ手が開封されて対局が再開。ジリジリとした間合いの計り合いが続いたのち両者は玉を自陣左方に移動させて戦いの時を待ちました。瞬間的に先手の飛車の働きが弱いことに注目した豊島九段が6筋の歩をぶつけたことで戦端が開かれますが、この折衝が一段落した局面が中盤戦におけるポイントとなりました。

糸谷八段が快勝

手番を得た後手の豊島九段はじっと2筋の歩を伸ばして先手に手を渡しますが、局後これを後悔することに。手の遅れは問題ないにせよ、この歩突きで自らの玉頭に空間ができたのが仇となりました。できた空間に香を据えるべく筋悪の桂打ちで香の入手を図ったのが糸谷八段の対応力を示す好手でした。

香を渡せない豊島九段は金桂交換の駒損を甘受して受けに回りますが、駒得を果たした糸谷八段は息もつかせぬ手順で攻撃を続行。自玉を安全にしたのち、伏線となっていた2筋への香打ちを実現して優勢を確立しました。終局時刻は16時47分(15時20分対局開始)、自玉の詰みを認めた豊島九段が投了を告げて糸谷八段の勝利が決まりました。

これで糸谷八段は本棋戦自己最高となるベスト4に進出。決勝の座をかけて11月3日(金・祝)に愛知県名古屋市の「ポートメッセなごや第3展示館」で行われる準決勝で渡辺明九段と戦います。

  • 第38回大会(2017年度)で豊島JT杯覇者(当時)に苦杯を喫した糸谷八段は6年越しのリベンジに成功(写真は第46期棋王戦第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

    第38回大会(2017年度)で豊島JT杯覇者(当時)に苦杯を喫した糸谷八段は6年越しのリベンジに成功(写真は第46期棋王戦第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)