フレンチレストランのコース料理というと1万円超えは当たり前という高級なイメージがあるが、一年に一度だけお得に味わえる24日間がある。それが今年で13年目となる「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2023」だ。有名レストランガイドの星獲得店を含む、北海道から沖縄まで全国約500店のフレンチレストランが参加しており、9月22日~10月15日の24日間限定で開催される。期間中はダイナースクラブ会員でなくとも、2,500円、5,000円、8,000円(税、サービス料込み)のいずれかのお得な特別コースメニューを誰でも味わうことができるスペシャルウィークだ。
同イベント開幕に先立ち、9月15日に行われたのが、二人のシェフがコラボレーションするダイニングセッション「フォーハンズランチ」だ。フォーカスシェフの一人である銀座「Opuses(オウパセズ)」の十楚武志シェフと、フランスからのスペシャルゲストとして、フレンチの巨匠、アラン・デュカス氏の下で経験を積み独立した「Le camondo(ル・カモンド)」のファニー・エルパンシェフが手を取り合った。
会場となった「Opuses」は、「ザ ロイヤルパーク キャンバス 銀座8」の14階に位置するテラス付きのダイニング。「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2023」の参加店でもあり、ランチコースを2,500円、ディナーコースを5,000円で提供予定だ。
フォーハンズランチでは、「和食材のテロワール(風土)」と「フランス料理」の融合を目指した、この日だけの特別料理が振る舞われた。アミューズとして登場したのはファニーシェフによる「マスのヴェルジュ ブドウ 濃厚ブイヨン」だ。マスタード入りの未熟ブドウを使ったペーストの上に、レアに火入れされた琵琶湖産のビワマス、ピンクペッパーがトッピングされ、上からビワマスの骨を使ったブイヨンをまわしかけていただく。フレッシュさとフルーティーさを感じる、1品目にぴったりな軽やかな味わいだ。
続く「スープ ド ポワソン グリエール」は十楚シェフによるもの。海をイメージしたクラシカルな作りのにスープ ド ポワソンと、山をイメージしたというホタテのクッキーとグリエールチーズ、乾燥ホタテを使ったスナックが対になっている。フードロス削減を意識し、魚や鴨のガラを使ったスープ ド ポワソンは、強い魚介と鴨のうま味を感じ、ホタテのスナックとも相性が良い。このスープ ド ポワソンは、レストランウィーク期間中、ブイヤベースに仕立てて「Opuses」のコース料理として登場する予定だ。
「モダンシーフードグリル」を謳う「Opuses」では、特製窯で焼き上げる自家製フォカッチャも自慢だ。北海道産小麦を100%使って焼き上げたフォカッチャは、外はこんがり、中はしっとり&もっちりとしており、小麦の豊かなうま味がしっかりと感じられる。こちらもレストランウィーク中に提供される予定だ。
キュートなキノコモチーフが秋を感じさせてくれる「七谷鴨のコンソメ 天然茸」も十楚シェフが手がけた一品。タマゴダケなど複数の国産キノコに加え、フランス産のセップ茸を使い、クッキー生地でサンドしてある。コンソメは余計なものを加えない、力強い七谷鴨の滋味だ。
エディブルフラワーがトッピングされた「アーティチョークビネグレット ヘーゼルナッツ 味噌」は「Le camondo」のスーシェフ(副料理長)であるメディシェフによるもの。アーティチョークや玉ねぎ、長ネギ、ビネグレットを使ったフランスの伝統的な家庭料理であり「Le camondo」でアレンジして提供している料理を、今回味噌を加え日本流に仕立てた。オーブンで丸ごとローストしたアーティチョークの青々とした味わいや、クレソンとほうれん草の土っぽい風味に味噌マヨネーズが合わさり、全体的にまとまりをもたらしている。
温かい魚料理は、十楚シェフによる鰻。24年もののコンテチーズの生地の上に、香ばしく焼いた鰻、そして夏が旬の沖縄県産パイナップルを乳酸発酵させたペーストを合わせ、ナスのローストをトッピングしてある。添えてあるのは木の芽とコリアンダーを合わせたクレームシャンテ。チーズのコクと脂の乗った鰻のうま味をパイナップルペーストの甘酸っぱさが引き立てていて、ワインを飲む手が止まらない。
メインを飾るのは、具材とスープを別盛りにしたファニーシェフによるモダンなポトフ。ポトフに使われるニンジンはローストしてドライオレンジなどのパウダーをかけ、ジャガイモはポロネギと共にピューレに仕立てるなど、食材一つひとつの演出が面白い。別添えのスープと一緒に食し、口内調理することでポトフとして完成する新感覚料理だ。
一面真っ黒な十楚シェフのデセールも驚きに溢れていた。黒ゴマと竹炭のメレンゲを崩すと、中から甘さを抑えたフランス・ヴァローナのチョコレートを使ったムース、チョコレートの求肥、カカオニブ、真っ赤な滋賀県産アドベリーのソルベが現れる。ビターでカカオの味わいが活きたチョコレートに、ベリーの甘酸っぱさが光り、メレンゲのサクサク感やカカオニブのカリカリ食感が楽しい一品だ。
今回のフォーハンズランチでは、日本産食材の発掘は十楚シェフが行ったというが、フランス人シェフの料理も、日本産食材の持つ力をいかんなく引き出し、日本人の舌にも合う、それでいながら新しさにも満ちた料理の数々だった。
今年のテーマは「パリのビストロメニュー」
フォーハンズランチ同様、9月22日から開催される「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2023」でも、和食材を取り入れたフレンチの特別コースを各地のレストランで味わえる。「地元の生産農家さんを応援したい」という多くのシェフが、国産食材の魅力が詰まったひと皿を届けていく。
また毎年設けられるコーステーマについて、2023年度は「パリのビストロメニュー」が設定された。それぞれのシェフが日本食材を取り入れながらオリジナルコースを仕立てる。
ちなみにダイナースクラブカード会員であれば、来店時にカードを提示することで、全ての参加レストランでウェルカムドリンクの1杯サービスを受けられる。ダイナース="⾷事をする人"の名の通り、このほかにもいくつかの特典があるようなので、この機会にメインカードとして検討するのも良さそうだ。