鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は12日、鉄道用地の雑草防除作業に関して、新たに考案した手持ちノズルと汎用スチーム洗浄機を組み合わせた蒸気除草機材により、蒸気で雑草を効率的に防除する手法を開発したと発表した。

  • 手持ちノズルと汎用スチーム洗浄機を組み合わせた蒸気除草機材

この新たな手法の活用により、従来の刈払いより短時間かつ少ない作業員数での除草が可能になるほか、雑草の再生を遅らせることにより年間の作業回数が削減されるなど効率的な雑草防除作業が行えるとしている。

鉄道用地の雑草防除作業では、回転刃で雑草を切断する刈払い機が広く使用されるが、夏季はとくに雑草が短期間で再生してしまうことに加え、刈払い機が振動工具であるため、振動障害防止対策として作業時間が制限されるという課題があった。鉄道用地にケーブル等が敷設されていることもあり、ケーブル切断にも留意して作業する必要もあった。

これに対し、蒸気除草は蒸気の熱を利用して雑草を枯死させる手法であり、水のみ使用するため、周辺環境にもやさしい手法とされる。ただし、農業での利用例において、大型ボイラーと1時間あたり約1,000リットルという多量の水を必要とするため、鉄道用地内での実現が難しかった。

  • 新たに開発した手持ちノズルの構成

そこで、水の消費量を抑えつつ、防除効果に優れた「スチーム洗浄機と手持ちノズルを組み合わせた蒸気除草機材による蒸気除草手法」を開発。小型の汎用スチーム洗浄機を採用し、水の消費量をこれまでの10分の1以下となる1時間あたり72リットル(ノズル2台同時使用時)に抑えた。雑草に蒸気の熱を加える部分にカバー部を設け、カバー部内に蒸気を滞留させる構造としている。

300平方メートルの除草作業における標準的な施工例で試算したところ、従来の刈払いは刈払い機3台・作業員5名で所要時間72分だったが、今回発表された手法はノズル2台・作業員3名で所要時間50分となり、所要時間を30%短縮できるとともに、必要作業員数も40%削減できたという。

  • 現地試験における防除効果の比較

大型雑草が繁茂する箇所での現地試験において、従来の刈払いだと施工から約3カ月後に施工範囲の80%程度で雑草が再生し、開花も確認された。一方、蒸気除草の場合、施工から約3カ月後の雑草の再生は施工範囲の10%程度にとどまり、開花は見られなかったという。蒸気除草を行った箇所において、1年後の大型雑草の再生株数は刈払いと比較して70%減少したとのことだった。