「直す」と「治す」は同じ「なおす」という読み方のため、どちらを使えばいいか悩んでしまうことも多いでしょう。

本記事では、「直す」と「治す」のそれぞれの意味を解説し、その違いや使い分け方を紹介します。

「直す」と「治す」の違い

  • 「直す」と「治す」の意味の違い

まずは、「直す」と「治す」のそれぞれの意味を確認していきましょう。

「直す」の意味

「直す」は主に以下の意味を持ちます。

なお・す【直す】
①曲がったこと・乱れ・間違いなどを本来の正常な状態にもどす。
②物や人を、しかるべき場所・位置にすえる。
③故障・破損していない状態にもどす。修繕する。修理する。
④修正する。訂正する。
⑤添削する。
『広辞苑 第七版』

つまり、「元の状態に戻す」「間違いを正す」といった意味合いです。物だけでなく、人に対しても使います。

上記のほか、「取り繕う、とりなす」「地位・身分などを元に戻す、復帰させる」などの意味でも使います。

「治す」の意味

「治す」の意味は以下の通り。

なお・す 【治す】
病気や怪我をもとの健康な状態にもどす。治療する。
『広辞苑 第七版』

すなわち「治す」は、「病気や怪我が良くなって健康になる」「治療する」という意味でのみ使える言葉であることがわかります。

「直す」と「治す」の使い分け

  • 「直す」と「治す」の使い分け

「直す」と「治す」の使い分けで迷ったときは、「病気や怪我を良くすること」「治療すること」を指しているかどうかで判断しましょう。

ここでは、例文を使ってそれぞれの使い分けを解説していきます。

「家具をなおす」はどっち?

破損や不具合の出ている家具を元通りの状態に戻す行為には、「直す」を使います。つまり、「家具を直す」が正しい使い方です。家具だけでなく、物の破損・故障・不具合を元に戻す行為はすべて「直す」を使います。

「機嫌をなおす」はどっち?

機嫌が悪いという状態は病気や怪我ではないため、「機嫌を直す」が正しい使い方です。そのほか性格や癖などを指す場合も「直す」を使います。例えば、「何でも深刻に考えすぎてしまうところを直したい」「会議中にペン回しする癖を直したい」などです。

「化粧をなおす」はどっち?

化粧崩れは病気や怪我ではありません。すなわち「化粧を直す」が正しい使い方です。人を対象としていると迷いやすいですが、怪我や病気でない場合は「直す」を使いましょう。

「盲腸をなおす」はどっち?

盲腸は病気のため「盲腸を治す」が正しい使い方です。大小は関係ないので、病気あるいは怪我を指す場合は迷わず「治す」を使いましょう。

「風邪をなおす」はどっち?

風邪は、「風邪を治す」が正しい使い方です。病院にかかる場合だけではなく、自分で市販薬を買ったり自然治癒を待ったりする場合も、「治す」を使います。つまり、治療方法は関係ありません。そのほか、接骨院に通ったりストレッチをしたりして、肩こりや腰痛などを改善する際も「治す」を使います。

「虫歯をなおす」はどっち?

虫歯も「虫歯を治す」が正しい使い方です。また、ホワイトニングや歯科矯正などを指す場合も「治す」を使います。これらは病気や怪我とは言えませんが、治療行為にあたるものには基本的に「治す」を使います。

「直す」と「治す」の類語・言い換え表現

  • 「直す」と「治す」の類語・言い換え表現

ここでは、「直す」と「治す」のそれぞれの類語・言い換え表現を紹介します。

「直す」の類語・言い換え表現

「直す」は、「修理する」「修正する」「改める」「整頓する」などの言葉と言い換えることが可能です。

人の感情や性格・癖を対象とする「直す」は、「修理」や「修正」を使わないので、「改める」などを使いましょう。

「治す」の類語・言い換え表現

「治す」は、「治療する」「癒す」「回復する」などと言い換えることが可能です。例えば、「盲腸を治す」は「盲腸を治療する」、「虫歯を治す」は「虫歯を治療する」と表現できます。

「直す」と「治す」を間違えないよう注意しよう

  • 「直す」と「治す」を間違えないよう注意しよう

「直す」と「治す」の違いや使い分けについて紹介してきました。

「治す」は、「盲腸を治す」や「虫歯を治す」のように、病気や怪我を良くすること・治療することを指す場合のみ使える表記です。物の破損・故障・不具合を元に戻すことや、人の感情や性格・癖などを良くすることは「直す」を使います。

迷ったときには、病気や怪我を良くすること・治療することを表しているかどうかで判断しましょう。