2023年9月9日の『ウルトラマンブレーザー』は、第9話「オトノホシ」を放送。今回は雅楽師、作曲家として有名な東儀秀樹がツクシ ホウイチ役でゲスト出演し、円谷プロが生んだ空想特撮シリーズ第1弾『ウルトラQ』(1966年)の人気キャラクター「ガラモン」と共演を果たした。
SKaRD隊員ミナミ アンリ(演:内藤好美)のもとへ届いたコンサートチケット。それは彼女が以前知りあっていたセミプロ音楽家・ツクシ ホウイチから贈られたものだった。彼と3人の仲間はホールで「最後の演奏」を行うのだという。彼らの奏でる美しいメロディーに呼応するかのように、巨大な隕石=ガラダマの中からロボット怪獣ガラモンが出現。突進力に優れるガラモンの体のトゲは、アースガロンの装甲を突き破るほど強靭だった。駆け付けたウルトラマンブレーザーも手を焼くガラモンの猛攻を食い止めるにはどうすればいいのか。アンリは自分の直感を信じ、ガラモンを操縦する音波の「発信源」を突き止める……。
『ウルトラQ』の第13話「ガラダマ」では、群馬県の山奥にある弓ヶ谷を舞台に、突如飛来した隕石(土地の人々はそれをガラダマと呼んでいる)から出現した巨大なモンスターの恐怖が描かれた。とても軽量で、空からフワフワと揺れながら降りてきたという小型のガラダマは、遠い宇宙に棲む遊星人が地球へ送り込んだ宇宙金属チルソナイト製の「電子頭脳」であり、ここから発信される電波を受けてモンスターが行動するのだ。電波研究所に持ち込まれた電子頭脳は、電気ノコギリの刃を受け付けず、分解・破壊が不可能。所員たちが手をこまねいている間に、弓ヶ谷のモンスターはダムを破壊し、電子頭脳のある場所=東京を目指して進撃を始めた。
「ガラダマ」の続編エピソードとなる第16話「ガラモンの逆襲」は、金庫の中に厳重に保管されていたはずの電子頭脳(チルソナイト)が、何者かによって持ち去られる怪事件で幕を開ける。犯人は、あらゆる物体を遠隔操作できる特殊な装置「エスパライザー」を手にした怪しい男(演:義那道夫)。彼は電子頭脳をチェロのケースに忍ばせ、気のいい運転手・牛山(演:沼田曜一)のトラックに乗って東京を離れた。やがて東京上空にガラダマが飛来し。その中から複数のガラモンが姿を見せる。破壊の限りを尽くすガラモンを止めるため、万城目淳(演:佐原健二)たちは怪しい男の行方を追うが、男は地球侵略を目的としたチルソニア遊星人=セミ人間の正体を現し、湖に潜む仲間の宇宙船のもとへ向かった。
ウルトラマンシリーズのファンの方には有名な裏話だが、ガラモンのスーツは補修・改造を施されて『ウルトラマン』(1966年)第8話「怪獣無法地帯」と第37話「小さな英雄」の友好珍獣ピグモンとなって登場している。人間と同じ大きさで友好的なピグモンはマスコット的人気を誇り、『ウルトラマンパワード』(1993年)や『ウルトラマンマックス』(2005年)などでリニューアルされ、活躍することがたびたびあった。その一方で、人類の脅威として遊星人に操られる巨大なガラモンは、なかなかウルトラヒーローと対決するチャンスがめぐってこなかった。今回の「オトノホシ」では、あの一度聞いたら忘れられない特徴的な「鳴き声(電子音)」やガチャガチャとした「足音」も含め、オリジナルのイメージに忠実なガラモンが登場しており、『ウルトラQ』ファンを喜ばせた。
また、ツクシ ホウイチ、クロイワ チッチ、ニイゼ ミチ、ヒグラシ カナデという楽団メンバーの正体がガラモンを操る「セミ人間」で、それぞれがセミをモチーフにした名前を持っているところがユニークである。楽団でツクシがチェロ演奏を担当しているのは、「ガラモンの逆襲」で怪しい男(遊星人Qとも呼ばれる)が電子頭脳を隠していた「チェロのケース」にちなんでいることは間違いないだろう。コンサートで彼らが最初に演奏するナンバーが『ウルトラQ』のテーマ音楽(作:宮内国郎)だというのも、実に心憎い演出だった。
チルソナイト製の電子頭脳は、人間の技術では決して破壊することのできない強度を持っていた。そのため電波遮蔽網を使って電波を遮り、ガラモンの動きを「止める」しか対抗策がなかった。今回はそんな『ウルトラQ』での設定からイメージを膨らませ、ガラモンのトゲもまたチルソナイトで出来ており、それがアースガロンの装甲を貫いて、操縦者のヤスノブ(演:梶原楓)を危機に陥れる場面が見られた。
衝撃を拡散するボディを備えて敵からの攻撃を受け付けず、突進や踏み潰し攻撃でアースガロンやウルトラマンブレーザーに多大なダメージを与えるガラモンはなかなかの強敵だった。すでに発表されているウルトラマンブレーザーの新しい武器「チルソナイトソード」は、チルソナイトと名前にあるように、ガラモンとは浅からぬ関係があると思われる。第8話「虹が出た 後編」でブレーザーが怪獣ニジカガチの「虹」をつかんで「レインボー光輪」を作り出したように、ガラモンを構成するチルソナイトを何らかの形でブレーザーが武器として使用することになるのかもしれない。人類を守るヒーローでありながら、まだまだミステリアスな部分の多いウルトラマンブレーザー。エピソードが進むにつれて、彼が人類、特に自身と一体化しているゲント隊長(演:蕨野友也)とどのような関係性を築いていくのか、そういった部分にも注目しておきたい。
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンブレーザー製作委員会・テレビ東京