カゴメは、2023年度秋冬新商品に関するメディア向け発表会を開催。同社が展開する食品事業および飲料事業の新商品発表に加え、発売90周年を迎えた「カゴメトマトジュース」の歴史や原料・製法についての紹介が行われた。

■食品事業の重点施策は「旨辛ニーズ」「洋食メニューの拡大」「プラントベースフード」

食品事業の2023年秋冬新商品およびマーケティング戦略については、カゴメ マーケティング本部 食品企画部長の袴田祥人氏が登壇し、まずは2023年度の振り返りを行った。

  • カゴメ マーケティング本部 食品企画部長の袴田祥人氏

2023年度上期の生活者動向として、「景気自体は緩やかに回復しているが、家計防衛意識は継続していく見通し」との見解を示す袴田氏。物価上昇に対する対策のトップは“買い控え”であり、食材についても、自宅にあるもので調理をするという“アルモンデ”が定着し、コスパやタイパへの息式が高まっていると指摘する。

コロナの5類化によって、外食の増加は顕著だが、生活防衛意識も引き続き高く、結果として、手作り率は前年より増加。その中でも、洋風メニューは主食のTI値が高く、“華やかで家族が喜ぶおうちごはん”として好調に推移しているという。

カゴメの商品別トピックスでは、主力となる「カゴメトマトケチャップ」は、2月に価格改定が実施されたが、容量ベースでも月を追うごとに需要が回復。オムライスのTI値が前年に対して拡大している背景として、今年5月に実施された、日本一食べてみたくなる「オムライス」決定戦「オムライススタジアム」や、昨年から継続している“焼きケチャップ”のプロモーションが功を奏していると分析する。

一方、食物由来の原料を使う「プラントベースフード」の市場拡大を成長に取り込むため、今年4月にTWOと共同で常温タイプのプラントベースエッグ「Ever Egg」を開発し、市場導入。ECと業務用ルート向けに販売されてきた冷凍タイプに加えて、常温タイプを発売することによって、家庭の食卓にも販路を拡大していきたいという狙いがあり、にんじんと白いいんげん豆で実現したまるで卵のような“ふわとろ”食感によって、高評価を得ている。

また、家庭内でのサラダの食べ方、調理のされ方が変化しており、いわゆるミックスサラダと言った複数の野菜を組み合わせるサラダから、トマトや食材を切るだけのコスパの良い一品のTI値が伸長。こういった動向を踏まえ、下期については、「生鮮トマト」+自宅にある調味料で作る簡単なおつまみを提案していきたいとの意向を示した。

そして、下期の重点施策として「旨辛ニーズ」「洋食メニュー拡大」「プラントベースフード」の3点を挙げ、それに伴う新商品が紹介された。

鍋市場全体が継続して伸長する中、カゴメは従来から「甘熟トマト鍋」という子供向けの鍋を発売し、独自のポジションを築いている。外食、中食におけるトレンドとして「チリ味」が多く登場していている状況を踏まえ、「旨辛ニーズ」を捉えた新商品「旨辛チリトマト鍋スープ」を8月に発売。外食感が楽しめる、非日常感をコンセプトに、大人も喜ぶ、これまでにない商品になっているという。

  • 「旨辛チリトマト鍋スープ」は2023年8月24日の発売予定

カゴメから新しいフレーバーのトマト鍋が発売されるのは、2013年以来10年ぶりとのこと。パッケージデザインは、黄色をベースとした異国感のあるテイストを採用することで、非日常感を演出。トマト×チリスパイスのブレンドによるメキシカンテイストは、やみつき感のある複雑なうま味を実現しており、挽肉やアボカドを加えた「メキシカン鍋チョップ」や、チーズを入れた「チーズリゾット(チチリ)〆」など、さまざまなアレンジとあわせて提案していくという意向も示された。

トンテキが、豚厚切り肉メニューの検索上位で、継続伸長しているのに加えて、「デミ」味も主食・主催メニューの検索が伸長・定着しているという市場環境において、「洋食メニューの拡大」を狙って展開される新商品が「豚肉と玉ねぎのデミ風トンテキ用ソース」。

  • 「豚肉と玉ねぎのデミ風トンテキ用ソース」は2023年8月24日の発売予定

本商品と同様、「じょうずに野菜」シリーズとして、この春に発売されたメニュー専用ソース「なすと挽肉のデミ風チーズ焼き用ソース」も好調に推移。「デミ味」は今後も拡大トレンドになっていくとの予測から、カゴメとしても商品ラインナップを強化していくという。

また、新商品の発売以外にも、コスパ・タイパへの関心の高まりに対して、「アルモンデ」、リーズナブル食材「挽肉」に着目したメニュー提案を強化。ここに従来から取り組んでいる“焼きケチャップ”のあわせ技も提案することによって、洋食メニューの拡大を目指していく。

「プラントベースフード」については、カレーを中心にして、直近3年間で売上が約3倍に伸長。ボディメイクや健康志向を目的に、植物性たんぱく質という要素、価値が求められているという市場状況を分析し、このニーズに対して、カレーシリーズのパッケージ正面に植物性たんぱく質の含有量を表示するというリニューアルを実施。さらに、すべて植物性たんぱく質5g以上にリニューアルするほか、大豆イソフラボンの訴求も追加することによって、プラントベースフードに対するニーズに対応していくという。

  • 「プラントベースフード」のリニューアルは2023年9月下旬より順次切替予定

■飲料事業は「トマトジュース」が好調!「これいち」に3つの“初”

飲料事業の2023年秋冬新商品およびマーケティング戦略については、カゴメ マーケティング本部 飲料企画部長の西村晋介氏が登壇し、2023年度上期の振り返りおよび秋冬新商品のプロモーション展開の解説を行った。

  • カゴメ マーケティング本部 飲料企画部長の西村晋介氏

人流回復や価格改定の影響もあり、2023年上期の飲料市場全体は金額ベースで前年比106%となっているが、野菜飲料は前年比96%と減少。その中で、カゴメは金額前年比100%を維持しており、主要ブランド別では、「野菜生活100」「野菜一日これ一本」が若干前年割れしているものの、「カゴメトマトジュース」「植物性乳酸菌ラブレ」は好調に推移しているという。

前年割れしている「野菜生活100」においても、フレーバー別に見ると、鉄分やポリフェノールといった美容的な成分が期待される「ベリーサラダ」が前年超えしているほか、食物繊維・腹持ちの「濃厚バナナスムージー」が2.7倍に伸長。これまでペットボトルが中心だった「カゴメトマトジュース」も、紙容器の商品が2割増となるなど、おいしさ+具体的な機能期待で支持される商品が好調であるという傾向が示された。

その中でも好調な「カゴメトマトジュース」は、2016年2月の機能性表示化により、中高年・健康診断意識層が増加。その一方で、SNSを中心に、リコピンの美容効果が広がるなど、カゴメ発信の情報とユーザー発信の情報の相乗効果によって、新規ユーザーが拡大しているという。実際、トマトそのものの口コミ数が増加しており、「トマト×美容/健康」「リコピン」といったキーワードは2年前と比べて約150%まで増加。トマトに対する美容や健康への期待が、トマトジュースにもポジティブに流入していると分析する。

なお、カゴメでは、この春から「あざやかに、生きよう。Go Vivid」とメッセージのもと、野菜飲料の機能価値、情緒的な価値の向上を目指したほか、野菜の機能価値を発信する「あざやか生活研究所」を開設。野菜の独自価値を活かしたコミュニケーションを展開している。

こういった状況を踏まえて、秋冬の新商品では「野菜一日これ一本」(これいち)ブランドに3つのラインナップが追加されるが、いずれも“初”が冠となるのが特徴。まず、「野菜一日これ一本 トリプルケア」は、カゴメでは初めて“中性脂肪”、“血糖値”、“血圧”といった3つの機能性表示を持った商品となる。ただ3つという数だけでなく、いわゆる添加物なしで、野菜本来が持っている成分だけで実現しているのがカゴメのこだわりと強調する。

  • 「野菜一日これ一本」の新商品は、「トリプルケア」が2023年9月12日、「冬野菜Mix」が10月10日、「ポタージュ」が8月29日よりそれぞれ発売予定

そして、「野菜一日これ一本 冬野菜Mix」は、ブランド初の季節限定商品。トマトが苦手という人でも安心して飲めるにんじんベースの商品で、「いろいろな味の入口を作ることで、お客様に喜んでいただき、結果としてお客様の数が増えれば」とその狙いを明かす。また「野菜一日これ一本 ポタージュ」も初挑戦となる新商品。野菜スープとしてではなく、「これいち」ブランドとして展開するのがカゴメらしさであり、「飲料としてだけではなく、食事に近いところで少しでもお役立ていただければ」と続ける。

さらに、「野菜生活100 Smoothie 濃厚バナナスムージー」が、よりバナナの美味しさを引き立てるリニューアルを実施し、「野菜生活100 Smoothie バナナスムージー」として今秋より展開。クリーミーなバナナ感がアップするほか、カリウムを今回より新たに訴求していくという。

  • 「野菜生活100 Smoothie バナナスムージー」は2023年8月29日出荷以降順次切替

そのほか、飲料事業では、野菜摂取不足の“実感”を高める施策として、「ベジチェック」を活用したプロモーションを強化・拡大。スーパーやコンビニ店頭に設置され、ゲーム感覚で、野菜不足の自覚やその先の行動変容へ繋げていくとのことで、野菜の日(8月31日)や秋以降、全国各地で行われるイベントにも活用される予定となっている。

  • 「ベジチェック」は、手のひらをセンサーに押し当てるだけで野菜摂取レベルを計測できる

■カゴメトマトジュース 発売90周年 ~90年愛され続ける“秘密”を公開

秋冬新商品発表に続き、第2部として「カゴメトマトジュース 発売90周年 ~90年愛され続けた“秘密”公開~」を実施。「カゴメトマトジュース」の歴史を振り返りつつ、原料および技術の“秘密”が明かされた。

まずは、飲料企画部長の西村氏が、国内シェアNo1を誇る「カゴメトマトジュース」の歴史を紹介。カゴメの創業者である蟹江一太郎氏が食用トマトの栽培に着手し、34年目となる1933年に日本初のトマトジュースが発売された。

  • 店頭プロモーション用のハッピに着替えた飲料企画部長の西村氏

その後、1960年代の高度経済成長の時期はビジネスマンを支える飲料として展開。1970年代には、お酒を飲むシーンや風呂上がりなどのシーン訴求をすることでライフスタイルに浸透し、日本中の銭湯にトマトジュースが並ぶなど一気に需要が拡大したという。

競合も増えてきた1980年代は、パイオニアとして、一年中いつでもおいしさを届けられるように、トマトの品種改良や技術革新を重ね、食の西洋化が進んだ1980~90年代には、緑黄色野菜としてのトマトの健康価値を発信する。

1990年代には、トマトだけで作ったピュアなおいしさをストレートに訴求し、2000年代に入ると、リコピンの研究価値を追求し、ジュース用トマト「凛々子」を開発。そして、“旬のおいしさ”を大事にする一方で、より時代にあわせた機能価値をいかに進化させるかというのが2010年代の取り組みとなっている。

「畑から育てる」ものづくりのこだわりとして、年に一度、数量限定で、国内の契約農家と一緒に育てたトマトを100%使用したストレートなトマトジュース「カゴメトマトジュース プレミアム」を展開。できたてのトマトの香りが漂う限定商品に対して、通年で提供するトマトジュースは“機能性表示食品”として発売する。「プレミアム」とは逆で、世界中のトマトをブレンドすることによって、年間通じて安定したおいしさを提供。現在は、この二本柱で展開されている。

続いて、カゴメ 生産調達本部 野菜原料部 主任の佐藤公宣氏が、「よい原料」をテーマに、「カゴメトマトジュース」を支える国産農家との繋がりやこだわりの原料について紹介。

  • カゴメ 生産調達本部 野菜原料部 主任の佐藤公宣氏

カゴメでは、“畑は第一の工場”というものづくりの思想、つまり、畑の時点でよいものができていないと、最終商品もよいものができないという考えのもと、創業時から続けてきた契約農家との栽培に取り組んでいる。

その中で、契約農家とカゴメのフィールドパーソンが、どのような取り組みを行っているかを動画で紹介。全国でおよそ500名ほどの契約農家がジュース用トマトの栽培を手掛けており、佐藤氏の所属する野菜原料部は、そのひとりひとりとコミュニケーションを取りながら、安心安全な原料を調達してくるという。この取り組みの特徴は、「面積契約ち全量買取」。契約した畑で取れた規格内トマトは全量契約価格で買い取られるので、豊作時の安値や圃場廃棄はなく安心して栽培できるほか、植え付けから収穫までをサポートし、徹底した品質管理も行われている。

カゴメの契約栽培で生産されているジュース用トマトは、現在すべて自社開発の品種となっている。1933年に発売されて以来、絶えず品種開発が進められているが、味の進化だけではなく、農家が作りやすい品種特性にも注目。その代表例が「ジョイントレス品種」で、果実にへたが残らない品種を開発することによって、収穫作業の手間を減らすことにも成功している。

カゴメ 商品開発部 飲料・食品開発部主任の瓜生田貴聡氏は、「よい技術」として、「カゴメトマトジュース」のおいしさを実現する独自ノウハウを紹介。まずは、ストレートなおいしさが好評な「カゴメトマトジュース プレミアム」に関する原料のこだわりを解説する。

  • カゴメ 商品開発部 飲料・食品開発部主任の瓜生田貴聡氏

「プレミアム」の「とれたてストレート製法」は、“搾汁”、つまりトマトを絞ってジュースにする工程において、独自の特許技術を採用することで、さらっとした雑味のないのどごしを実現。さらに、製造中にできるだけ熱をかけずに素早くパックすることによって、トマトのおいしさを引き立てており、従来の製法に比べると60%加熱度を低減している。

一方、通年製品は、カゴメ独自技術を用いて製造した“RO(逆浸透圧)ピューレー原料”と、世界各国の産地からトマトジュース向けに厳選した“トマトペースト原料”を組み合わせることで、一年中、安定したおいしさを実現しているという。

“ROピューレー原料”は、水だけを通す半透膜の中にトマトジュースを流し、圧力をかけることで、加熱せずに濃縮できるRO濃縮技術を使用することで、トマト本来の香りを持つ原料となる。コクを与える“トマトペースト原料”は、甘味と酸味のバランスにて選定し、世界各国から調達。カゴメの指定品種や加工技術を用いながら、現地訪問指導を行うことで、品質の安定化に努めている。その一方で、生トマトの変化や味覚嗜好の変化にあわせて、トマトジュースの味わいも変化してきていることも強調。「これからもお客様に愛され続けるブランドになれるよう努力してまいります」と締めくくった。