「人の噂も七十五日」ということわざを聞いたことはあっても、具体的にどんなタイミングでどう使えばいいか知らない人も多いでしょう。
本記事では「人の噂も七十五日」の詳しい意味やなぜ75日なのか、具体的な例文と使い方を紹介。よくある間違いや言い換え、反対の意味の言葉、英語表現もまとめました。
「人の噂も七十五日」の意味・読み方とは
「人の噂も七十五日」とはことわざの一つで、「人の噂はせいぜい2、3カ月で終息するものだ」「噂話はあまり長く続かない」という意味です。
ことわざには風刺や教訓などが含まれています。「人の噂も七十五日」は、「噂話の標的にされた人はつらいだろうが、しばらくの辛抱だ」「人は忘れっぽいから、噂話している人たちもすぐ他の噂話をし始めるだろう。だから放っておけばいい」ということを間接的に伝えていることわざです。
「ひとのうわさもしちじゅうごにち」と読みます。
「人の噂も七十五日」の由来とは? なぜ75日なの?
「人の噂も七十五日」の由来は諸説ありますが、季節と関係しているという説が有力とされています。
現代では季節と言えば、春夏秋冬の四季を思い浮かべます。しかし昔の日本においては、五季節という考え方がありました。一年、つまり365日を5で割ると約75日です。
約75日たつと、気候はすっかり変わり一つの事柄が終わります。そこから「七十五日たてば噂話も終わりを迎える」と考えられたのではないかといわれています。
「人の噂も四十九日」「人の噂も四十五日」は間違い
「人の噂も七十五日」を覚え間違えて、「人の噂も四十九日」「人の噂も四十五日」と言う人もいるようですが、これらは間違いです。
四十九日は、人の死後、来世で生を受けるまでの期間を意味します。人の噂とは関係ありません。
また「しちじゅうごにち」と「しじゅうごにち」は響きが似ているため、間違って覚えている人がいる可能性があります。
正しくは「七十五日」なので気を付けましょう。
「人の噂も七十五日」の正しい使い方・例文
噂話の内容には良しあしありますが、このことわざが使われるケースの多くは、良くない噂に対してです。
「噂なんてすぐに消えるから大丈夫だよ」と、噂の対象とされている人を励ます意味でよく使われます。
例文は以下の通りです。
- 「人の噂も七十五日と言うし、気にしなくていいよ」
- 「あることないこと言われて君もつらいだろうが、人の噂も七十五日だ。今は黙って時が過ぎ去ることを待とう」
噂話の内容が事実とは違ったとしても「時が解決する」「黙って耐え忍ぶことが得策だ」「下手に反論して火に油を注がない方がいい」と暗に伝えているとも言えるでしょう。
ただし、明らかに事実と違うことが広まっていて、噂話の誤解を解いた方がいい場合に「人の噂も七十五日だ」とだけ伝えても、相手は腑に落ちないかもしれません。
また、一般的なゴシップに対して使う場合は、特定の個人への励ましではなく、噂話に興じる上に飽きっぽい世間を揶揄する意味合いが強まります。
例えば以下のように使用します。
- 「彼女の事件は忘れられ、今ではまったく報道もされず、別の事件に世間の関心が移っている。まさに『人の噂も七十五日』だ」
- 「かつてその政治家の失言にマスコミも世間も騒いでいたが、人の噂も七十五日とはよく言ったものだ。今度は彼を英雄のようにもてはやしている」
「人の噂も七十五日」の類語・言い換え表現
「人の噂も七十五日」は、いくつかの類語を持つ言葉です。さまざまな表現を知っておくことで、誰かを励ましたり自分がつらいときに役立ったりする可能性があるでしょう。
世の取り沙汰も七十五日
「世」は世間、「取り沙汰」はあれこれと噂することや、その噂自体のことを意味します。
つまり「世の取り沙汰も七十五日」は、世間の噂は大して長く続かないということを意味します。
人の上は百日
「人の上」とは、人間の境遇・運命のことです。
つまり「人の上は百日」とは、人のことを心配したり噂したりするのは、百日ほどのものだ、という意味です。
善きもあしきも七十五日
「人の噂も七十五日」は、基本的には悪い噂に対して用いられます。一方、「善きもあしきも七十五日」は、悪い噂だけでなく良い噂も長くは続かないことを説くことわざです。
悪評に限らず、どのような話題や評判も、2、3カ月もすれば忘れ去られるものなのでしょう。
人の口に戸は立てられぬ
「人の口に戸は立てられぬ」とは、噂話はどうしたって防ぎようがないと説くことわざです。それならば、自分ではどうしようもできないことはやり過ごそう、という考えが見て取れます。
「人の口」で、世間の評判、噂といった意味があります。
「人の噂も七十五日」にある「そのうち終息する」の意味合いは、このことわざにはありません。ただし、気にしない方がいいとする点は同じとも言えるでしょう。
「人の噂も七十五日」の反対の意味の言葉
人は忘れやすく飽きっぽいため、何かに失敗し悪評を立てられてもいずれ収まるものだと説いたものが「人の噂も七十五日」です。
しかし、反対に収拾がつかないケースがあることを表したことわざもあります。
覆水盆に返らず
「覆水盆に返らず」とは「一度してしまったことは元には戻らない」ということを意味することわざです。噂に関することわざではないものの、シチュエーションによっては対義語となりえます。
「一度の失敗で信用を失い、契約解除となった」「彼が犯した過ちを周りの人は決して忘れない」など、取り返しのつかない状況や、人の記憶に残り続ける状況に対し使われます。
このようなシチュエーションでは「人の噂も七十五日」だと誰かを励ましたり、噂している人たちを揶揄したりすることもできません。
「覆水盆に返らず」の意味とは? 由来の故事や使い方、類語に英語表現も解説
「人の噂も七十五日」の英語表現
日本のことわざである「人の噂も七十五日」に直接該当する英語表現はありません。ただし、似た意味の英語表現はあります。
- A wonder lasts but nine days.
これは「一時的に大注目を集めてもすぐに忘れられるだろう」という意味です。
直訳すれば「それは9日間の驚異となるだろう」です。七十五日よりも大幅に短い期間である点が興味深いですね。
「人の噂も七十五日」の意味や使い方を覚えておこう
ことわざに「人の噂も七十五日」があることからも分かるように、噂話は古くから存在し続けてきました。人は噂話をしてしまう生き物なのでしょう。
ネガティブな噂をされる立場に立つことはつらいものです。だからこそ、このことわざが生まれ、今もなお広く知れ渡っていると考えられます。
ネガティブな噂をされたときは「人の噂も七十五日」ということわざを思い出し、気に病むことなく過ごしましょう。悪評が立ち、苦しんでいる人を励ます際にもぜひお役立てください。