ウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンブレーザー』が、2023年7月8日より放送開始される。今年は、新世代ウルトラマン=ニュージェネレーションシリーズの第1作『ウルトラマンギンガ』(2013年)から10周年という節目の年。本作のメイン監督を務める田口清隆氏はこれまでシリーズ各作品で培ってきたノウハウを活かしつつ、これまでにない「新しいウルトラマン像」を創り上げるべく、意欲を燃やしているという。
そんな『ウルトラマンブレーザー』の主人公・ヒルマ ゲントは、特殊怪獣対応分遣隊「SKaRD(スカード)」の隊長であり、ウルトラマンブレーザーに変身する人物でもある。個性派ぞろいの隊員たちと共に、人類の脅威である巨大怪獣と戦うゲント隊長は、「俺が行く」という口癖のとおり、彼らのピンチを救うため率先して危険の中へ飛び込んでいくアクティブさと、的確な判断力を備えた頼もしいリーダーとして描かれている。ここではゲント隊長を演じる蕨野友也に単独インタビューを敢行し『ウルトラマンブレーザー』の特色と、その魅力的な内容について尋ねてみた。
――まずは蕨野さんが『ウルトラマンブレーザー』の主人公・ゲント隊長役に決まったときのお話から聞かせてください。
最初、お話をいただいたとき言われた「新しいウルトラマンを作りたい」という言葉が心に残りました。ちょうど『シン・ウルトラマン』(2022年)が話題を集め、ウルトラマンへの注目度が高まっていたころでした。やがて『ウルトラマンブレーザー』第1話のストーリーを読んで「ウルトラマンって、こんなに人物同士のかけあいが多く、面白い感じなのか」と驚いたんです。そのあと、一度お話を……という流れになり、僕は最初、普通の面談だと思っていたら、これがオーディションだったという。たぶん最初からオーディションだと言われていたけれど、僕が聞いてなかっただけかもしれない(笑)。後日、主役が決まりましたと知らされたときは、それはもう嬉しかったですね。
――子どものころウルトラマンシリーズをご覧になっていましたか?
キャラクターとしてのウルトラマンは知っていましたし、大好きでしたが、実際にテレビを観ていたかというと、それほどではありませんでした。なぜかというと、僕の住んでいた地域は電波状態が悪くて、観たくてもちゃんと映らなかったから(笑)。台風なんか来ると、もう画面全体が砂嵐のようになってしまって……。
――歴代ウルトラマンの変身者といえば、特捜チームの新人隊員であったり、発展途上の若者だったりするイメージがありますが、それだけに蕨野さん演じるヒルマ ゲントが「隊長」だというのは非常に新鮮に思えます。
そこが今回の新しい試みだと聞いています。まあ、新人隊員だったら怪獣と戦っているとき、ひとり別行動を取ってもそんなに怪しまれないかもしれませんよね。今回は隊長ですから、隊員たちと行動を共にしながらいかにしてウルトラマンになるのか……という部分に着目されている方もいらっしゃるようです。
――各分野のスペシャリストが集うSKaRDをまとめつつ、地球防衛軍日本支部「GGFJ」司令部参謀長・ハルノ レツ(演:加藤雅也)からの命令に従うという、上下関係がリアルな空気を生んでいるようですね。
参謀長からは、アースガロンを使って怪獣をやっつけろと言われていますから、その命令を聞かなければなりません。ゲントは参謀長と隊員たちの間に挟まれる形になりますが、参謀長もまた、地球防衛軍上層部と僕との間で挟まれていたりします。みんな、どこかしらで上下関係に挟まれる「人間模様」があり、こういった仕組みがリアルな雰囲気をもたらしています。
――これまで、さまざまな特色を備えたウルトラヒーローが活躍してきましたが、蕨野さんがイメージする「ウルトラマン」像とはどんなものですか。
ただただ「神秘的」な存在だと思っています。最初に田口監督とお話をしたとき「僕はウルトラマンと対話をしなくてもいい、できればそういった描写がないほうがいい」と言いました。ウルトラマンと人間がお互いに理解を深め合い、共に力を合わせて敵と戦っていく『ウルトラマンZ』(2020年)のような良い作品もありましたけれど、今回はひと味違う「ウルトラマン」像になっていると思います。僕の「自分はこんなウルトラマンになりたい」といった話は、クランクイン(撮影開始)当初から、そして撮影が進んでからも各監督とディスカッションしていました。
――ゲント隊長は、蕨野さんにとって演じやすいキャラクターでしょうか。
ほぼほぼ「地」でやっていたので、演じやすいとかは考えたことがなかったです。「こういう言い方でセリフを言おう」とか「こういう雰囲気を作ろう」と意識をしたことがありません。台本を読んだときに感じたことを現場へ持っていって、各エピソードの監督とお話をして、作り上げていく作業をずっとしていたので、演技を作り込んではいないんです。自分がゲントとして、どう映りたいのか、なんていう思いもなかった。じゃあ、どういう気持ちでいたのかといえば「いつもゲント目線でいること」だけでした。現場に入っていない日常生活も含めて、こういうとき俺はこう考える。しかしゲントはどう考える?とか、クランクインの少し前から少しずつ試みて、ゲントという役に向き合っていきました。