そんな熱い思いで臨んだ作品が9日に公開を迎えた。これまで数々のミュージカルに出演してきた豊原でも、緊張する日々だという。

「正直ちょっと怖いんです(笑)。舞台の初日もそうですが、お客さんの元に届くときが、しっかり伝わるかなと一番緊張します。そして、こうして取材を受けると、自分がアリエルを演じたんだということが実感として湧いてくるんです」

それでも、作品の力は強く「きっと多くの人に届くはずだ」という思いもある。

「とても素敵な映画ですよね。アリエルの持つ自分の思いを貫く強さや、エリックとの恋模様も素敵です。特に私は、2人のなれそめが表面的ではなく、考え方や価値観などで結びついているところが大好きです。出会うべくして出会った2人の愛の物語であり、父と娘の愛も描かれる。とても大きな愛のある作品だなと思います」

さらに本作を経験したことで、豊原の視界も大きく広がったという。

「今回初めて吹替のお仕事をさせていただき、最初は不安がありましたが、視野が広がった気がします。これまではやったことがない仕事に対して、少しネガティブに考えてしまいがちだったのですが、『できないと思います』ではなく、いろいろなことにチャレンジしていきたいと思えるようになりました。しっかりと届くと感じられるものだったら、ジャンルにこだわらずどんどん挑戦していきたいです」

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また、劇中では伸びやかな歌声を含め、情緒豊かな感情を表現しているように感じられたが、課題も見つかったという。

「歌に関しては、気持ちだけではなく、やっぱりしっかりとした技術が必要だなと思いました。歌唱力があってこそ、自由に表現できるんですよね。もっともっと基礎のトレーニングを強化したい。もちろん、心を豊かにすることも必要だなと感じました。いま舞台をやっているのですが、自分とは違う役柄なんです。その際『なんでこの子はこんなことを言うのだろう』と思うのと、『こういう気持ちだからこう言ってしまうんだ』と考えるのでは、絶対的に表現力が変わる。先入観を持たず、相手の気持ちを理解する優しさが大切だと思いました」

“優しい気持ち”という意味では、本作にはさまざまな人々の優しさがあふれている。豊原は「本当に優しい気持ちになれる作品だと思います。人に優しくなるということは、自分に優しくなるということでもあると思うので……」と作品に込められた思いを語っていた。

■豊原江理佳(とよはら・えりか)
1996年4月8日生まれ、ドミニカ共和国出身。2008年、ミュージカル『アニー』のアニー役でデビュー。ニューヨーク留学などを経て、2016年、ミュージカル『アップル・ツリー』に出演。近年の主な出演作は、舞台『ピーター&ザ・スターキャッチャー』(20)、『ゆびさきと恋々』(21)、『ソーホー・シンダーズ』(19・21)、『EDGES-エッジズ- 2022』(22)、『ファンタスティックス』(22)、『ザ・ビューティフル・ゲーム』(23)、映画『キネマの神様』(21)、ドラマ『ホームルーム』(20/MBS)など。