田島列島氏の漫画を原作に、広瀬すずの主演で実写化された映画『水は海に向かって流れる』(公開中)。高校1年生の直達が、過去のある出来事をきっかけに「恋愛はしない」と宣言する26歳のOL・榊と出会い、思いもよらぬ過去の因縁に振り回されながらも、次第に淡い思いを抱きはじめる“ときめき”と“感動”の物語だ。

今回、同作で主人公・榊千紗を演じ、初のOL役で新たなステージに挑んだ広瀬すずにインタビュー。意外なオファーだったという今作への参加を決めた理由とは、一体何だったのか。直達を演じた大西利空と比較した自身の10代についてのほか、デビューからの10年で変わったこと、そして変わらないことも明かしてくれた。

  • 広瀬すず 撮影:宮田浩史

    広瀬すず 撮影:宮田浩史

■“10歳差”の設定に不安も「できる気がする!」

――今作で初のOL役に挑戦されましたが、オファーを受けた際に「どうして私?」と驚いたそうですね。

私はお姉さんの役を任せられるタイプではないと思っていたので、すごくチャレンジャーな制作チームだなと……(笑)。でも驚いたのは一瞬だけで、OL役は初めてですが、働いているシーンはないですし、脚本を読んでみたら、私が演じた榊さんは過去の出来事をきっかけに16歳で時間が止まってしまっている女性で、根っこはこれまで演じてきた役と変わらない気がして。

ただ、直達は榊さんより10歳年下の設定とはいえ、きっと演じるのはもう少し上の年齢の方なんだろうと予想していたので、私が榊さんを演じたら10歳差に見えるのか、不安はありました。でも、この制作チームがすごいなと思ったのは、本当に10歳近く年齢が離れている大西利空くんをオーディションで見つけて、リアルに年齢差がある形にしてくださった。新鮮に感じましたし、おかげで「できる気がする!」と思えました。

――今作は田島列島さんの同名マンガが原作ですが、原作は読まれましたか?

読みました。でも原作の榊さんが全然私に見えなくて(笑)、もっと大人に感じたので近づけるのかなと。印象としても原作の方がより穏やかで“じわる”おもしろさがあったんですが、映画では、思ったより重い部分も描かれていて、誰しもが分かる心の動きが繊細に表現されている印象でした。

――役作りのために原作で参考にしたことはありますか?

実は、今回の映画は原作と結末が少し違うんです。そういった意味で解釈が難しい部分があったので、一度台本だけに集中しようと思い、あえて原作を深く読み込むことはしませんでした。そもそも、私自身、原作がある作品に臨むときは、そこまで読み込むタイプでもないんです。

■年齢とともに変わったこと「10代の頃は…」

――なるほど。榊さんというキャラクターは、広瀬さんから見てどういう印象でしたか?

何事もないように普通に暮らしたい人。過去の出来事があって、普通に暮らすことができなかったけど、本当は人が好きなんだと思います。ある意味では、榊さんはすごく人間らしくて、自分と思ったより離れていないように感じて。寂しい人でもあるし、優しい人でもあると思うんですよね。劇中でも、感情の起伏がないようで、直達くんや直達くんのお父さんのちょっとした一言に傷ついてしまう繊細な部分もあって。だからこそ表面に出る部分が強そうに見えて、不機嫌に見えるんだなと。

――榊さんとの共通点として「我慢するタイプ」という部分も挙げられていました。

我慢するというより、言わなくてもいいやという考えがあるんです。言いたいけど我慢しているのではなくて、言う必要がないなと思ったら言わない。物事が平和に収まっていればいいと思うタイプ。

でも、私も最近オープンになってきていて。昔は自分の話を人に一切しないし、聞かれるのも興味持たれるのも好きではなかったんです。最近は甘えたら楽なこともあるということに気づいたので、少しずつですが、そんな瞬間も増えてきています。

――その変化のきっかけは何かあったのでしょうか?

年齢ですね。以前は、忙しい時期に「大丈夫?」「疲れてない?」とか確認されると、心の中で「疲れているよ!」と思うことがあっても、流れるように「大丈夫です~!」と答えていました。でも、そういう風にシャッターを下ろしてしまうと、コミュニケーションを取りたい人とも取れないなと思って。10代の頃は、意思表示だけじゃなくて、自分の意見すら怖くて言えなかったんですけど、20歳を超えてからは言ったもん勝ちということに気付いたので、パパッと伝えたいことだけ言って逃げてます(笑)。