17日に放送される、東海テレビ・フジテレビ系ドラマ『テイオーの長い休日』(毎週土曜23:40~ 全8話)第3話にゲスト出演する俳優の市川知宏が、豆原ユータ役を演じた感想や、主演・船越英一郎のすごさについて語った。
若手俳優の登竜門、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで グランプリを受賞して以来、俳優としてテレビや映画、舞台 などで演技の幅を広げ続けてきた市川。 今回は、「俳優に演技指導や指示を出す側」のディレクター役 を演じる。役の上とはいえ、そうした制作スタッフの側に立ってみて、その大変さに気づいたという。
「今回演じる豆原は、バラエティ番組の再現ドラマの監督をするディレクターです。演じさせて頂き気付いたのですが、監督業って本当に緻密で、大変な仕事なんですよね。監督って、現場の空気づくりに一番気を使われることが多いんですけど、そういうことを今まで知っていたようで、実は、ちゃんとは知らなかったなと。例えば、撮影の現場でカメラの回り始めに“スタート!”、カメラを止めるときに“カット!”と、監督が声をかけるんですが、このタイミングというのが、実はすごく繊細で難しい! そのことに今回、初めて気が付きました」
劇中のシーンでは実際、豆原が「スタート」をかける場面も。
「“スタート!”は、俳優からしたらお芝居を始める合図です。俳優として現場に立っているときは、その掛け声に合わせて芝居を始めれば良いのですが、いざ監督としてその場に立ったとき、スタッフ各部署の空気感とか、演者さんのたたずまいを見て、『いま、ほんとにスタートかけていいものか?』と見極めたうえで声をかけなくちゃいけない。これが、かなり難し かったです……」
「いままでお仕事をご一緒した監督さんたちは、僕らキャスト・スタッフの空気感をすべて感じ取ったうえで、ここだ! というタイミングでGOサインを出してくださっていた。だから、芝居がやりやすかったんだと改めて気付きました。そうやって現場全体の空気も作り出すのも「演出」ということなのかと思うと、もう尊敬しかないですよね」
そんな市川だが、今度はカットをかけるタイミングで、船越から「早い」と指摘を受けたという。
「カットも、やはり役者さんが気持ちいいタイミングでかけないといけない。舞台と違って映像の場合、カット割り(監督が決める映像の構成)次第ではセリフの途中でカットをかけなきゃいけなかったりするんです。僕が一回、船越さん演じる熱護のシーンで、豆原ディレクターとしてカットをかける場面があったんです。でも、カットをかけた後で、僕として『あ、今、ちょっと早かったな』と思ったんですよ。そしたら、船越さんも『今の豆原くんのカット、ちょっと早かったよ』と指摘してくださって……(苦笑)。あ、やっぱりそうだったんだ! と反省しました(笑)」
「僕が演じる豆原は、クリエイターとして自分がやりたい映像作品へのこだわりを持っている人間です。でも、テレビ局の中でそれがうまく実現できず、周囲のさまざまな人と衝突したり、やりたいこととできている事が乖離しているジレンマに陥ったりして、結果、いまや半分以上あきらめながら、波風の立たない、当たり障りのない仕事をしているような役どころなんです」
「実は豆原の気持ちがものすごく理解できて……僕も20代の頃、お芝居をやっていて思うようにいかなかったとき、極端な話、『自分は俳優には向いてないかも……』と悩んでしまうことがよくあったんです。台本を読んで、役をこなして、監督さんからもOKも頂いているんですけど、実際出来上がった作品をオンエアで見たときも『わ、これ、全然できてないな。作品の世界に入れていないな』とか感じてしまうことがあって……。周りの人がその世界にしっかりと立っている分、違いを直に感じてしまうんですよ」
「やりたいことができていない自分に気付くのはメンタル的にはしんどいです。でもその悔しさがあったから、反骨精神で『だったらもっと頑張んなきゃ』と思えて……そこが成長のきっかけにはなったかな、と思っています」
また、今回演じた豆原に対して船越演じる熱護大五郎がかけた「熱い言葉」が、自身にも響いたという。
「豆原は、テレビ局の軋轢のなかで、ほんとに“完全にあきらめてしまう一歩手前”まで行ってしまっている状態なんです。そんな豆原を熱護さんがわざわざ呼びつけてこう言うんです。『スタッフは自分たちの本気を引っ張り出してくれる演出家を常に求めている』。これを言われた豆原は、自分がすべきことに改めて気が付く……という展開なのですが、この言葉って、僕が俳優・市川知宏として聞いて も、まさにその通りだと思ったんです。俳優としての自分の本気を引き出してくれる演出家さんってすごく貴重で、その熱量は僕自身を俳優として引っ張ってくれるものなので……。撮影では豆原として実際に心に響いたんですが、こういう言葉を演出家にかけられる熱護は、役者の大先輩として、かっこよすぎる! と俳優・市川知宏の心も鷲掴みにされてました(笑)」
「あと、船越さんの存在感がすごいです。居るだけで、その場の空気が変わって、良い“締まり方”がするんです。ピリピリする、 という締まり方ではなくて、チームのみんながぎゅっと一つになる……チーム感が強くなる感じで……。本番前、『よしっ、本番いこうか!』と、船越さんがひとことサラッと言うだけで、みんなきっちりと気合が入る感じがするんです。その圧倒的存在感は、簡単に作れるものではないと思いま すが、自分も船越さんくらいの年齢になったときに、そういう空気感を出せる俳優になれていたらいいなと思いました。自分の中での大きな目標です!」
「『テイオーの長い休日』という作品は、熱護大五郎という一人の人間が周囲に“影響”を及ぼして、みんなが成長して、みんながいい方向に進んでいくという、『希望』がテーマだと僕は思っています。とくに、今回、僕が出演する第3話は、熱護自身も崖っぷちに立っているし、僕が演じる豆原も崖っぷち。同じ『崖っぷち』という境遇に立たされた二人なんですが、心折れた豆原と違って、熱護は希望を持って生きているんです。同じ崖っぷちでも、そのときにどう立ち回るか。そのやり方で人生が変わってくるというのが、テ ーマじゃないかと感じています。少なくとも、豆原の人生は熱護との出会いで変わっていきますから」
「ドラマを見てくださる方にも、人生で“うまくいかないとき”というのがあるでしょうし、そういうときに『自分を勇気づけてくれる人や元気づけてくれるような人との出会い』を大事にしてほしいと思います。 また、今、悪くはない状態にある人は、周りにそういう『ちょっとうまくいけてなくて折れかけている人』がいたら、その人を引っ張ってあげる側になってみようか、という気持ちになってもらえたらいいな、と思って、この第3話を演じていました」
「人生に『希望』を見出し、そこに向かって進んでいくストーリーとなっています。視聴者のみなさんにも、ぜひこの第3話を見て、それぞれの“希望”を見つけていただけたら嬉しいです」
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