「山々ですが」にはいくつか意味がありますが、主に誘いを断る際に使える表現です。
本記事では「山々ですが」の詳しい意味や由来、ビジネスシーンでの使い方と例文を紹介します。目上の人に対して使えるのかや、言い換え表現もまとめました。
「山々ですが」の意味とは
「山々ですが」とは主に、「ぜひそうしたいと思っているのですが」と、角を立てずに誘いを断る際に用いる表現です。「参加したいのは山々ですが、その日は先約があり、不参加でお願いいたします」などの形で使用します。
なお「山々」を副詞として使う場合には、以下のような意味があります。
- 実現することはできないが、ぜひそうしたいと思っている様子
- 多く見積もっても、この辺りが限度だと思われる様子、せいぜい
- たくさんある様子、山ほど
このうち「山々ですが」とする場合は、一つ目の意味、つまり前述のように、角を立てずに誘いを断る際に使われることが多いです。
「山々ですが」の語源・由来
「山々」は、名詞として、あちこちの山、多くの山といった意味を持ちます。
さらに前述のように、副詞として「たくさんある様子」という意味を表します。ここから「○○したい気持ちがたくさんある、ぜひそうしたいと思っている」という意味を持つようになったと考えられます。
「山々ですが」のビジネスでの使い方と例文
「山々ですが」を使う主な状況は「○○したい気持ちはある(が不可能だ)」と、相手に伝えたいときです。
「山々ですが」と添えることで、自分にはその行為への前向きな意欲があると伝わります。そのため、相手への配慮を表すことができます。
下記にて、より具体的な使用シーンと例文を見ていきましょう。
相手からの誘いを断る場合
「山々ですが」を「意欲はあるが不可能だ」という意味で使う状況の代表例が、相手からの誘いを断るときです。以下に例文を示します。
- ご一緒したいのは山々ですが、その日は既に予定があるため行けないのです
- 参加したいのは山々ですが、その日は先約がございまして、今回は遠慮いたします
これらの例文においては「予定が入っている」と、断る理由を含めて返答することで、誠意を表しています。
なおこの前に「お誘いいただきありがとうございます」などと感謝を表す文を添えると、より丁寧さが伝わるでしょう。
- ご一緒したいのは山々ですが…
また、会話の場合はこのように、尻切れに返答を切り上げることで、理由を濁しながら誘いを断ることも可能です。
「山々ですが」自体に「不可能だ」「実現できない」という意味が含まれているので、最後まで明言しなくても相手に悟ってもらう、という方法です。
ただし相手がきちんと意味を理解してくれるとも限らないので、相手の反応を見ながら、状況によってははっきりと断りの言葉を述べることも必要です。
相手からの依頼を断る場合
「山々ですが」は、相手から協力を求められた場合など、依頼に対する断りの文言としても使用できます。
- 申し訳ございません。ご協力したいのは山々ですが、私も○○の案件で手一杯でお手伝いできそうにありません
この例文のように、謝罪の気持ちと理由を添えると、相手にも「仕方ない」と思ってもらいやすいでしょう。
また仮にまだ協力を依頼されていなくても、タスクが多くて忙しいというような話をされた際などに
- そうですよね…。私もお手伝いしたいのは山々ですが、今は余裕が無くて…
などと、先手を打つのに使用する場合もあります。
「せいぜい」というニュアンスで使う場合
なお「山々」には前述のように、「多く見積もってもこの程度が限度だ、せいぜい」という意味もあります。
- ○日までにご用意できるのは△個が山々ですが、できる限り尽力いたします
この例文では、現在の自分のキャパシティーでは、頑張っても△個が限界だと思う、ということを伝えています。
「山々ですが」を目上の人、先輩に使うのは失礼? 敬語なの?
目上の人や先輩に対して「山々ですが」という言葉を使うことに問題はありません。「山々ですが」の「です」が敬語表現にあたるためです。
より丁寧にしたいときは、「山々ではございますが」にすると、より一層、相手に敬意を払えます。
そのほか、「ご一緒したいのは山々ですが」「伺いたいのは山々ですが」の「ご一緒」「伺う」のように、「山々ですが」の前後に相手を敬う言葉を入れることも大切です。
なお「山々」という言葉そのものには敬語表現が含まれていないため、目上の人に対して「山々だが」「山々だけれども」などと伝えることは避けましょう。
また「山々ですが」「山々ではございますが」などは、敬語表現であっても断っていることに変わりはありません。そのため、謝罪の言葉を添える、表情や態度などで申し訳なさを示すことなどを忘れないようにしましょう。
ビジネスで使える「山々ですが」の類語・言い換え表現
「山々ですが」はさまざまな類語や言い換え表現が存在する言葉です。ここでは誘いを断る際に、ビジネスシーンでも失礼にあたらないものを紹介します。
思ってはいますが・願ってはいますが
「山々ですが」の「山々」には、「そうしたいと思う、願う気持ちがたくさんある」という意味があります。
そのため、「思ってはいますが」「願ってはいますが」が「山々ですが」の最も直接的な言い換え表現と言えるでしょう。
下記のように使用します。
- ご一緒したいと思ってはいますが、その日は既に予定があるため行けないのです
- ご一緒したいと願ってはいますが、その日は既に予定があるため行けないのです
そうしたいのですが
「そうしたいのですが」もまた、「山々ですが」の直接的な言い換え表現です。前述の通り、「山々」には「そうしたいと思う、願う気持ちがたくさんある」という意味があります。
先に述べられた事柄に対して、「そうしたいのですが」と述べて、実際にはそうできない残念な気持ちを表します。
下記のように使用します。
- A「Bさん、来週の懇親会には参加しますよね?」
B「そうしたいのですが(=参加したいのですが)、その日は既に予定があるため行けないのです」
あいにくですが
「山々ですが」は「あいにくですが」とも言い換えられます。
「生憎(あいにく)」は、期待や目的に反する様子、都合や具合が悪い様子を表します。「あいにくですが」とすることで、相手の期待に反して、残念だが、といった意味になります。
下記のように使用します。
- あいにくですが、その日は既に予定があるため行けないのです
注意点として、「おあいにくですが」「おあいにくさまですが」という表現は避けた方がいいでしょう。これらは「あいにくですが」を丁寧にした表現ではありますが、皮肉の意味で使うことも多く、相手に勘違いされてしまう可能性があるためです。
せっかくですが
「せっかく(折角)」は、苦労をして、無理をして、などの意味があり、その事柄に対して大切さ、ありがたさを感じる意味がこもった表現です。
「せっかくですが」と言い換えることで、誘ってくれた相手の好意をきちんと受け止めた上で断っていることが伝わります。
下記のように使用します。
- せっかく(お誘いいただいたの)ですが、その日は既に予定があるため行けないのです
ポイントは、相手の行為に対して「せっかく」を表現することです。「せっかく(私が)用意したのですから」のように、自分の行為に対し「せっかく」を使うことは、押しつけがましく、失礼にあたります。
場面に応じて「山々ですが」を適切に活用しよう
「山々ですが」は角を立てずに誘いを断る表現です。誘いを断る際はネガティブな雰囲気になりやすいため、「山々ですが」のように適切な言葉選びをすることに加え、相手への感謝や思いやりを示すことが重要です。
なお「行きたいのは山々ですが…」などと、いつも濁して誘いを断り続けていると、相手から不信感を抱かれる可能性もあります。多用し過ぎないことと、理由を述べて納得感、誠意を演出することも意識しましょう。