毎回、気持ちよく走り出したい! メンテナンスコストを抑えたい! メカのことを学んでみたい人に、ぜひ覚えてほしいのが正しい洗車のやり方だ。
スポーツバイクは車重を軽く、パフォーマンスを追求しているため、チェーンや変速機が向きだしの状態。それゆえ、一日走れば、自転車は想像以上に汚れる。もっとも汚れるチェーンやギヤといった駆動部の黒い汚れは、砂や埃、変速等で発生した金属片によるものだ。汚れたチェーンで走り続けるのは、サンドペーパーでギヤを削りながら走るのと一緒なのだ。そして、汚れが摩擦抵抗になって走りは重くなり、見た目も悪い。

何度も洗っているうちに、汚れる場所やキズが付きやすい部分、プーリーやパッドの磨耗なども自然と分かるようになる。プロ選手の自転車が毎日、洗車を欠かさないのは最高のパフォーマンスを引き出すために必要だからだ。
今回は国内プロチームの他、東京オリンピックのナショナルチームでメカニックを務めた神馬有貴さんが、洗車方法を伝授してくれた。

【用意するモノ】

  • バケツ、中性洗剤、駆動系用スポンジ、フレーム&ホイール用スポンジ、駆動系洗浄用刷毛(はけ)、ボトルブラシ、チェーンクリーナー、ディグリーザー、パーツクリーナー、耐油性手袋。定期的に洗車をするのであれば、フレームをクランプするメンテナンススタンドがあると作業性が一気に向上する。

【ブレーキパッドを保護する】

  • 簡単にできるので、作業を始める前にブレーキパッドを外す。手順はスナップリングを外し、ドライバー(六角レンチの場合もあり)パッドピンを抜く。

  • パッドを引き抜き、ブリードブロックを装着してピストンを固定する。ブリードブロックがない場合は、ブレーキレバーに触れないように注意すること。パッドの表面に付着したダストは歯ブラシに中性洗剤をつけて洗い流す。パッドは油分を吸うと性能が落ち、要交換となってしまうので、離れた場所に置いておこう。

【汚れている駆動系から洗いはじめる】

  • まずはもっとも汚れている駆動系パーツから洗いはじめる。揮発性のないチェーンクリーナーやディグリーザーを容器に少量入れ、刷毛でチェーンや変速機、チェーンリングに付着した汚れに浸透させていく。チェーンは一コマずつピンを回転させるようにブラッシングする。※ケミカルによってチェーンの表面コーティングが傷む可能性がある。コンディションの悪いチェーンの場合、中性洗剤で洗うに留めておこう。

  • 忘れがちなチェーンリングの内側や歯先に着いた汚れをディグリーザーが行き渡るように耐油性ブラシでブラッシングする。3分ほど放置し、油が融解したら水で洗い流す。

  • チェーンクリーニングデバイスや専用ブラシがない場合、歯ブラシでチェーンを挟むようにして代用することもできる。

【中性洗剤で全体を洗っていく】

  • バケツに中性洗剤を入れて、よく泡立てる。駆動系用スポンジでチェーン、変速機、チェーンホイールを洗う。ギヤの内側やBBシェル周辺はボトルブラシなどを使うと洗い残しを防げる。メラミンスポンジは塗面やクリア層を傷める可能性があるので使わないこと。

  • フレームは高い所から低いところへ洗っていく。バーテープは汗を吸って汚れているので入念に。ブレーキブラケットやサドルには水をかけすぎないようにするのが神馬流。理由は「ブラケットは汗で汚れていると同時に、メカや電動メカの接点があるので、あまり水をかけたくないですね。サドルはクッション材に水を吸い込むと乾きにくいので、翌日も乗るときは洗わない。洗ったとしても軽くですね」という。

【ホイールを洗う】

  • ホイールがキレイだと全体の印象が大きく変わる。最初に水で表面の汚れを落とす。泥が付着している場合はブラシを使って、トレッドやリムとのタイヤの境に溜まっている汚れを落としていく。その後、泡をたっぷりと含ませたスポンジでタイヤ&リムはもちろん、スポークやハブもていねいに洗っていく。スプロケットはブラシを使って全体を洗うだけでなく、ギヤとギヤの間に溜まった汚れも掻き出す。ハブやリムのバルブ周辺からは水が浸入する可能性があるので強い水流で流さないように注意する。

【注油】

  • チェーンオイルは飛沫がディスクローターにかからないリキッドタイプがおすすめ。スプレータイプを使うときはウエスで注油ポイント周辺を覆うようにする。また、注油後はウエスで余分なオイルを拭き取る。

  • トレッド部は路面に落ちているガラス片などで傷んでいることもある。パンクの原因になるので瞬間接着剤で亀裂が拡がらないようにしておく。

  • 【神馬有貴】元チームブリヂストン・アンカー、ナショナルチームのメカニック。現在は静岡県御殿場市にあるPARKサイクルライフの店長。

文/菊地武洋