連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~※土曜は1週間の振り返りほか)で、神木隆之介演じる主人公・槙野万太郎の恋敵・高藤雅修役で熱い視線を浴びている伊礼彼方。ミュージカルの舞台が主戦場の俳優で、朝ドラ初出演となったが、浜辺美波演じる寿恵子をお姫様抱っこしたり、猛アプローチをかけたりと、アグレッシブな“恋の狩人”ぶりが話題だ。そんな伊礼を直撃し、撮影秘話や映像作品への思いについて聞いた。

  • 『らんまん』高藤雅修役の伊礼彼方

高知県出身の植物学者・牧野富太郎をモデルにした本作では、幕末から明治、大正、昭和と激動の時代に、植物を愛し、その研究に情熱を注いでいく槙野万太郎とその妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈な生涯を描く。伊礼演じる高藤は5月26日放送の第40回で初登場した。

朝ドラ初出演となったが「決まった時はめちゃめちゃうれしくて、飛び跳ねました。芝居をやっている人なら、大河ドラマや朝ドラに出演できるなんて、夢のようなことです」と喜びを語る。

過去にドラマに出演した経験はあるものの、朝ドラは舞台に近い部分もあったという。「朝ドラはまず月曜日に収録シーンを全部稽古して、火曜日から撮り始めるので、舞台と近いやり方だなと思い、安心してできました」

また、「ずっと舞台が続いていたので3月はまる1カ月休む予定でしたが、ちょうどそこに上手くハマったので、こういう運命的なことってあるんだなと思いました」と述べると、「実は、数年前から映像作品がやりたいという思いがあった」と明かす。

「舞台をずっとやってきて、表現の幅にちょっと限界を感じていました。もちろん細かい芝居もやりますが、それが後列まで伝わるのかといえばなかなか難しくて。映像は表情を抜かれるので、そこを体全体で表現しないといけないし、俳優としてもう1つ上のステップに行きたいと思っていたところです。舞台でも、こういう作品をやりたいと願っていると、そのタイミングが訪れますが、今回も朝ドラという夢の舞台に立たせていただけたので、願いは叶うものだなと思いました」

■方言に苦労 映像作品ならではの表現にも挑戦

元薩摩藩士の実業家である高藤役で、苦労したのは薩摩の方言だったという。

「僕は舞台で貴族役やクズな人物の役が多いのですが、方言の芝居は生まれて初めてで、台詞を覚えるのに1カ月ぐらいかかりました。薩摩言葉指導の持永(雄恵)先生が吹き込んでくださった台詞を聴きながら、赤や青の丸印でイントネーションがつけてある台本を確認しながら覚えます。だんだんイントネーションを上げていく気持ち良さが出てくるのですが、慣れてくると上げなくてもいいところまで上げ始めてしまい、持永先生から『そこは標準語でいいです』と指導が入りました(笑)」

そんな特訓のかいがあって、高藤の薩摩言葉はかなりしっくりきている印象を受ける。

「持永先生は過去に石丸幹二さんなどミュージカル俳優の方を何人か指導なさったようで『ミュージカルの人は耳がいいから上手に話せる』と、最初にものすごいプレッシャーを与えられたんです(笑)。『だから伊礼さんも大丈夫です』と言われましたが、最初は本当に地獄だと思いました。確かに耳がいいのは僕も自負していますが、『薩摩隼人が、何してんだ。もっと九州男子として立ち振る舞いをしないか!』と思われるんじゃないかと、ドキドキしながら放送を待ちました」とおちゃめに語った。

映像作品ならではの表現については「おでこのシワを寄せるとか、目を吊り上げるとかいった細かい芝居がそうです」と述べ、初めて寿恵子と出会い、彼女を二度見したというシーンを例に挙げた。このくだりはSNSでも反響があった。

「二度見は舞台上でもよくやるのですが、そこだけフィーチャーされることもなければ、そこに効果音が乗ることもないので、映像を観た時、思わず笑っちゃいました。舞台のお客様は自分の見たいところを見るけど、映像は監督や編集者が意図して見せたいところを映します。そこを感じ取りながら演じる面白さを初めて経験しました。でも、普段の舞台でも、作っていく過程で演出家に『これはどうですか?』とプレゼンするので、きっとそこは映像も同じなんだろうなと。今回は特に細かくこだわってやりましたが、モニターを見て瞬きが多いなとか、その場で修正しながらやっていったのはほぼ初めてで、手応えのある部分もあれば、もっとこうすればよかったという反省点もいろいろとありました」