• 寿恵子役の浜辺美波と高藤雅修役の伊礼彼方

高藤が、寿恵子と華麗に社交ダンスを踊るシーンも彼の見せ場となるが、浜辺の印象についても尋ねると、「ミュージカル俳優同士だと、『はじめまして』でも、ダンスや歌でいきなりスキンシップをとるので、みんながオープンマインドですが、やはり芝居畑の方とやると、そのとっかかりで皆さん躊躇するんです」と言う。

「浜辺さんも最初はものすごくシャイな印象があり、僕自身も距離を測りながらやっていきました。でもそれは、シャイというよりは、ダンスに苦手意識があったみたいで、蓋を開けたら、ものすごくしゃべる方でびっくりしました(笑)。最終的には『ガンガン来る高藤ってヤバイですね』と、僕は“ヤバ藤”と言われたので、実はとても可愛らしいオープンな方だったんだなと、あとでわかりました」

寿恵子をお姫様抱っこするシーンについては「いきなり躊躇なく靴を脱がせる彼の心の強さはどこから来るんだろうと(笑)。今ならパワハラやセクハラだと言われかねない行動をとっているので、それを当たり前にするには、本当に寿恵子さんを心配する心が生まれてないとダメだなと思いました」と捉えた。

「高藤としては、寿恵子さんがとても頑張っているから、何かケアをしてあげなきゃと思ってやったことかなと。高藤さんの行動は、彼を好きな人なら受け入れられますが、受けつけない方からすれば、ストーカーチックに思えてしまう。浜辺さんが言う“ヤバ藤”みたいに、最終的に『やっぱりキモいよね、あいつ』と言われるんじゃないかと、ドキドキ感や不安はあります」

■「ガツガツ行かなきゃ」“万太郎”神木隆之介を見て確信

また、恋のライバルとなる万太郎役の神木については「僕はこう見えても意外とシャイというか、自分から人に話しかけるのがあまり得意なほうではないのですが、リハの時に神木さんから『伊礼さん、めちゃめちゃいい声されていますね』と話しかけてくださって、うれしかったです」と感謝する。

「リハで、彼が初めて寿恵子さんのドレス姿を見て、『きれいじゃ! ・・・きれいじゃ!』と連発するシーンでは、こういう風に見せれば万太郎がより魅力的に見えることを神木さんはすごく客観視しているように感じて、非常に好感度が高かったです。すごく遊び心がある方という印象を受けましたし、それに対して浜辺さんも『わかりました。もう好きにやってください』みたいな感じだったので、ああ、すでに関係性が出来上がっているんだなと感じました」

さらに「万太郎が大量のバラを見て、『うわあ、きれいじゃのう』と言っているシーンからも、すごく天真爛漫で、『ああ、だから“らんまん”なんだ』と感じたので、高藤はその逆を行かないといけないとも思いました。舞台も含め、自分の頭の中だけでは発見できないことがたくさんあり、共演者の声や存在を感じた時に、ようやく自分のキャラクター設定の方向性を理解できることがあります。だから、神木さんのシーンを見られたことが非常にありがたかったし、そんな万太郎を惑わせ傷つけるという意味で、高藤はすっとした強い男で、ガツガツ行かなきゃいけないという思いが芽生えました。1発目の撮影時に、そう確信が持てたのは、神木さんと出会ってお話ができたことが大きかったです」と振り返る。

SNSの反響も楽しんでいるようで「撮影したのが3月で、僕にとってはけっこう前の話なのに、今盛り上がっているというのは不思議な温度差があります。だから僕も改めて台本を読み返し、みなさんと同じ気持ちになって見ていますが、めちゃくちゃレスポンスが早くて非常に面白いです。まさか“二度見”がニュースになるとは思ってもいませんでした」と笑う。

最後に、今後の見どころについて語ってもらった。

「万太郎の敵役ですが、僕は愛情を持って高藤役を演じています。どんどん進展していくと、視聴者からすれば、本当に高藤ってダメな男だと思われそうですが、どうか優しい目で見守っていただきたいです。個人的には、高藤がいることで2人が結婚することになるのだろうし、起爆剤的なきっかけとなって、ドラマ的に盛り上がっていただければと。僕も最後まで見て、果たして自分がちゃんと、役柄としての役割を全うできたかどうかも確認していきたいと思うので、今後もガンガンSNSでいろんな意見をいただければと思っております」

■伊礼彼方(いれい・かなた)
1982年2月3日アルゼンチン生まれ、神奈川県出身。2006年『ミュージカル テニスの王子様』で舞台デビュー。2008年、東宝版『エリザベート』で皇太子ルドルフ役に抜擢され、舞台を中心に活動していく。2019年、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のジャベール役で上半期の読売演劇大賞にノミネート。近作のミュージカルは『ミス・サイゴン』、『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』、『キングアーサー』など。今夏には『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』が控えている。

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