また、「芸能界は自分を育ててくれた場所であり、自分を自分でいさせてくれる場所という感覚があるので、芸能界に恩返ししたいという思いもあります」と明かした鈴木。芸能界から離れたいと思ったことは「なくはない」と言うも、今は続けてきてよかったと心から思っている。

「もっと遊びたいと思っていたし、野球ももっとやっていたかったですし、もっと練習していたら試合に出られたかもしれないと思ったときもありましたが、今思うと続けてきてよかったとしか思わないので、いろんな気持ちを押し殺して頑張ってくれた当時の僕に感謝ですね」

ちなみに、芸能界でやっていくと気持ちが固まったのは中3の頃だそうで、「僕は俳優として頑張るんだと、そこで固まってからは迷いはないです」ときっぱり。映画『決算!忠臣蔵』(2019)に出演した際に中村義洋監督から言われた言葉が大きかったという。

「当時、子役と俳優との狭間で、どっちも呼ばれるようになったんです。『俳優の鈴木福くん』『子役の鈴木福くん』僕って何だろうと思ったときに、見てくれる人が判断すればいいと思っていたんですけど、中村監督に『子役じゃないんだから』と言わせてしまって、そのときに『僕は俳優と呼ばれるように自分でしていかなきゃいけないんだ』と思い、そこからいろんな人との出会いもあって、俳優としてしっかりと頑張りたいという気持ちが芽生えました」

ミュージカル『カラフル』は主人公が人生をやり直す物語だが、鈴木は過去に戻ってやり直したいと思っていることはないという。「今が楽しいので」と笑顔を見せ、「何歳になってもそう言えるようになれたら」と話した。

活躍の幅が広がっているが、あくまでも軸は俳優業とのこと。「『俳優さんで、ほかのこともやっているよね』というような、一番大きな肩書きは『俳優』と言い続けてもらえる人でありたい。そこから人生が始まっているので、大事にしたいです」

そして、「ミュージカルが好きなので、定期的にミュージカルをやれたらいいなという思いがあって、『ビッグ・フィッシュ』が大きな一歩になりましたが、『カラフル』はミュージカルもできる俳優として成長していく上でターニングポイントになるのかなと、そうなったらいいなと思っています」と期待を込めた。

■鈴木福(すずき・ふく)
2004年6月17日生まれ、東京都出身。2006年、1歳の時にNHK教育(当時)の『いないいないばあっ!』に出演し芸能界デビュー。2007年、『君がくれた夏 ~がんばれば、幸せになれるよ~』(日本テレビ)で子役としてドラマデビューを果たす。2011年、『マルモのおきて』(フジテレビ)に出演。「薫と友樹、たまにムック。」名義による同作の主題歌「マル・マル・モリ・モリ!」で歌手デビュー。以降、映画、テレビ、舞台、CMなど多岐にわたり活動を続けている。今年4月から日本テレビ系情報番組『ZIP!』の木曜パーソナリティーに就任するなど、仕事の幅を広げている。
■ミュージカル『カラフル』
【原作】森絵都『カラフル』(文春文庫刊) 【脚本・作詞・演出】小林香 【作曲・編曲】大嵜慶子 【出演】鈴木福、加藤梨里香、百名ヒロキ、石橋陽彩、菊池和澄、彩乃かなみ、川久保拓司/川平慈英ほか 【日程】2023年7月22日~8月6日 【会場】世田谷パブリックシアター