クルマでは当たり前の装備になりつつある「衝突被害軽減ブレーキ」(何かにぶつかりそうになったら減速してくれる、いわゆる自動ブレーキ)だが、バイクの世界ではどうなのだろうか。日立アステモが開発中の技術を展示していたので、担当者に話を聞いてきた。
バイクならではの難しさがある
自動車の衝突被害軽減ブレーキとは、車両前方の歩行車、自転車、自動車などをカメラやレーダーで認識し、衝突の危険性がある場合には音や警告灯でドライバーに警告を行い、そのままでは衝突してしまうと判断した場合には自動的にブレーキを作動させて事故の被害を軽減させるシステムのこと。日本では新車への搭載が義務付けられている安全装置である。
こうした機能をバイクにも装着できないかと研究を進めているのが日立アステモだ。「人とくるまのテクノロジー展 2023」には、同技術を視覚的に理解できる透明なバイクを展示していた。
日立アステモによれば、タイにおけるバイクでの交通死亡事故データを調べると、死亡事故の70%はバイクの「直進時」に起きているとのこと。事故発生時のライダーの動作は「回避行動なし」が60%だった。わき見をしていたり、衝突すると気が付いたものの操作が間に合わなかったりして、回避行動ができないまま事故を起こしてしまうケースが多いのだ。
こうした事故を減らす、あるいは事故が起きたとしても被害を軽くする機能として、バイクの衝突被害軽減ブレーキは有効だ。直進時に何かに追突するような場面でも、ブレーキを全くかけていないのと少しでもかけているのとでは被害の大きさが変わってくる。致命的な事故になるはずだったケースも、怪我で済むかもしれない。
ただ、クルマと比べてバイクの自動ブレーキは難しそうだ。クルマは急ブレーキをかけたとしても、横転したりつんのめったりすることはめったにない。バイクでは「急に制動力を最大限に立ち上げるとライダーが逆に危ないので、ライダーをびっくりさせない範囲で最大の制動力を掛ける制御を考えながら開発しています」と日立アステモの担当者は話していた。同技術は「先行開発」の段階で、判断・認識の精度を高めたり、作動の際にどのくらいの制動力をかけるかを検討したりしているところだという。