フジテレビ系ニュース番組『Live News α』(毎週月~木曜23:40~、金曜24:10~)。メディア環境の多様化に、民放横並びで最も遅い放送時間、かつ最も短い放送尺というハンデの中で、従来の報道番組の常識を打ち破る独自のスタイルを確立している。

この「αブランド」は、どのように立ち上げ、醸成されてきたのか。フジテレビの近藤篤正プロデューサーにインタビューするとともに、4月からメインキャスター(月~木曜)を担当する堤礼実アナウンサーにも話を聞いた――。

  • 『Live News α』近藤篤正プロデューサー(左)と、堤礼実アナウンサー 撮影:蔦野裕

    『Live News α』近藤篤正プロデューサー(左)と、堤礼実アナウンサー 撮影:蔦野裕

■テレビ番組としては異例の市場調査

近藤Pは、2017年10月に『THE NEWS α』で「αシリーズ」を立ち上げる際、新規参入にあたって市場調査を実施。これは、「缶コーヒーが世の中にこれだけたくさん出ている中で新しい商品を売るんだったら、どんな缶コーヒーを作ったら良いか、という視点と同じ発想で設計しました」(近藤P、以下同)と、テレビ番組としては異例の調査だった。

その結果、「画がある」映像を長く見せ続けるなど、従来の“報道マンの常識”とされていたことを覆し、最新の経済ニュースを手っ取り早く、そして事実を淡々と伝えてほしいというニーズが、“23時40分の視聴者”にあったことを確認。堤アナが毎回冒頭で「働く皆さんの1日の終わりに、明日の+αにつながるニュースを、コンパクトにまとめてお伝えします」と紹介するように、20~40代の働く世代に専門性の高い経済ニュースを短時間で多項目にわたり届ける、というコンセプトを打ち出した。

その中で大事にしているのは、仕事終わりで疲れているときに、“一緒の時間を共有したい”と思ってもらうため、「あざといことはしない」「ガヤガヤしない」という意識。「テレビは“足し算”の文化なところがあって、いろんな要素を足していくのが普通ですが、『α』については“引き算”の演出を意識しました」と、タイトルロゴやテロップなど、ビジュアル面を落ち着いた紫ベースで統一し、余計なBGMを流さず、効果音もシンプルにしている。堤アナには、声のトーンを落とすことと気持ちゆっくりしゃべることを徹底させた。

ほかにも、「直撃」「激白」「◯◯女子」など、“キャッチー”と捉えられてきた言葉を避け、不確かな情報を送り出しているという印象を持たれないためにニュースのタイトルやサイドテロップに「?」を入れないといった演出方針で、「αブランド」を確立してきた。

■コロナで解消したミスマッチ“怪我の功名”

もちろん、扱うニュースのネタも「αブランド」を構成する大きな要素だ。SDGs、テクノロジー、働き方、新サービスといった、新たな価値観に関連するニュースを積極的に取り上げていくことで、「報道局の取材部からも『このネタは、αっぽいからどうですか?』と提案が来るようになり、このブランドは価値だなと改めて感じました」と手応えがあった。

この“αっぽさ”について、近藤Pは「日本を応援したくなるようなポジティブなニュースが多いと思います。揚げ足をとるだけのニュースはやらないですね」と捉え、堤アナも「心地よく明日を迎えてほしいという気持ちが根底にあるので、そこにひもづく部分を感じます」と語る。

専門性の高いトピックを伝えるにあたり、大きな役割を果たすのが、多彩なコメンテーター陣。従来は曜日レギュラーでスタジオに来て出演してもらうケースが多かったが、どうしてもネタとコメンテーターのミスマッチが起きてしまうという難点があった。

しかし、コロナ禍になり、スカイプでの中継が世の中に受け入れられたことが転機に。「だいたい夕方くらいにはネタが決まってくるので、『これはこの人に聞こう』と、ネタごとに専門の人にスカイプ出演を依頼するようにしたんです。自宅から出演していただいたり、出張先のベトナムにつないだり、子育て中の方には事前収録で対応してもらうことで、ニュースに付加価値をつける専門家が、適材適所でコメントしてくれる体制ができました」と言うように、まさにコロナでの“怪我の功名”だった。