京都MF川﨑颯太 [写真]=清原茂樹

「川﨑(颯太)選手はチームで継続的にレギュラーとして試合に出ている。順位的には厳しい戦いを強いられているが、つねにメンタル的にも安定してハードワークできている。パリ五輪チームではレギュラークラスとしてプレーしている中で、A代表の戦力としても可能性がある選手だと思う」

 日本代表の森保一監督から高く評価され、6月のキリンチャレンジカップ2023にチーム最年少選手として選出された京都サンガF.C.の川﨑颯太。25日のメンバー発表当日のオンライン取材では「自分の特徴であるデュエル、出足の速さ、予測した守備をまず出したい。同級生の久保建英選手と一緒にプレーするのが楽しみ」と意気込みを語っていた。

 田中碧がケガで不在の今回は、川辺駿、川村拓夢とともにボランチの一角を争うことになると見られるだけに、若さと勢いを前面に押し出すべき。森保監督も大きな期待を寄せているはずだ。だからこそ、発表後最初のJ1視察先として27日の京都vs浦和レッズを選んだのだろう。

 4月23日のサガン鳥栖戦からリーグ戦未勝利の京都にとって、この浦和戦は是が非でも白星のほしい重要マッチ。いつも通りのアンカーで先発した川﨑も序盤から激しい寄せでボールを奪いに行き、キレのある動きを見せていた。

 だが、0-0で迎えた52分、浮き球を自陣ペナルティエリア付近でキープしようとした瞬間にボールを失い、奪い返そうとしたプレーがファウルとなって直接FKを献上。ファーに上がったボールへの対応が中途半端になり、フリーにした興梠慎三に先制弾を決められるという悪循環が重なった。

 結局、京都はリーグ5連敗で14位。曺貴裁監督も「W杯でそれをやるのかと言いました」と直々に説教したというが、絶対的信頼を寄せる選手だからこその檄だったに違いない。立命館大学4年の“文武両道”フットボーラーは、指揮官の言葉を真摯に受け止めたのではないか。

 川﨑は山梨県甲府市出身。5歳でヴァンフォーレ甲府のスクールに入り、フォルトゥナSCを経て、小学校4年から甲府U-12に加入。中学卒業までプレーした。その後、京都に赴いてユース年代を過ごし、2020年にトップ昇格。プロ2年目の2021年にレギュラーを獲得し、パリ五輪代表候補入りするなど、着実なステップアップを遂げてきたのだ。

 甲府U-12で高学年の3年間を指導した西川陽介監督(現強化担当)は「当時からテクニック、運動神経、メンタルのある子で異彩を放っていました」と明かす。

「川﨑颯太はワンプレーへのこだわりが物凄く強くて、自分が不甲斐ないと思えば、試合中でも平気で泣くような子でした。『お前、何泣いてんだ』と聞くと、本人は『泣いてません』と気丈に言って、プレーし続けていましたが、とにかく負けず嫌いだった。試合に負けて泣く子はいても、一つひとつのプレーにこだわって泣く少年なんて見たことがない。そういう意味でも彼は別格でした」

 幼少期から向上心が高く、納得いくまでプレー精度を追求する人間だったのだから、今回の浦和戦のミスをフィードバックしないはずがない。自分なりに徹底検証し、どうすれば改善できるかを考えて、先々に生かすはずだ。山梨大学附属小学校の頃から成績優秀で、今も学業とサッカーを両立させている川﨑は「自己解決能力の高い人間」と見て間違いなさそうだ。

 自分で考えて修正できる力は、尊敬する遠藤航にも重なる部分。曺監督は遠藤について「航はピッチ内外で同じミスを2回繰り返さない人間。空気を読む力や自己解決能力の高さは群を抜いていた」と評したことがあるが、川﨑にも同様のストロングがあると見抜いたのだろう。でなければ、21歳でキャプテンマークを託すはずがない。川﨑には遠藤の系譜を継ぎ、越えていくことが求められているのだ。

 西川監督もそれができる選手だと太鼓判を押している。

「颯太は何があっても臆することなくぶつかっていける強気のマインドを持った選手だと僕は思っています。U-12の時も1学年上のチームに入れてやらせていましたが、先輩に物怖じしたり、遠慮したりというのは一切なかった。代表で遠藤、守田英正選手たちの間に入ったとしても、自分にやれることを最大限発揮しようとするはず。ピッチ上で必ず爪痕を残してくれると信じています」

 川﨑本人も“お客さん”で終わるつもりはさらさらない。

「自分は身長が小さいですけど、その身長を生かして相手の下に潜り込むとか、粘り強い守備とか、そういうところを見せれたらいい。『川﨑颯太だからできること』という自分の価値を示さなければ意味がない。違いを見せられるように頑張ります」

 代表活動のスタートは2週間後。少し時間があるが、その間にも自己研鑽に励み、京都浮上のために力を尽くすに違いない。次戦は6月4日のサンフレッチェ広島戦。ここで連敗街道から抜け出し、自分の価値を引き上げて代表合流する形が理想的だ。

 今こそ京都の背番号7の真価が試されると言っても過言ではない。

取材・文=元川悦子