静岡市のツインメッセ静岡にて、5月10~14日に開催された「第61回静岡ホビーショー」。鉄道模型関連企業も出展し、大手メーカーを中心に多数の試作品展示や新製品発表でにぎわった。中小メーカーも鉄道模型関連製品を多数発売しており、会場でもさまざまな製品が展示されていた。今回は大手メーカー以外の企業の出展内容を紹介する。
■小型車両と情景素材の津川洋行、木造有蓋貨車やデキ3形など展示
ジオラマ向けのアイテムや、小型機関車・貨車を多数展開している津川洋行は、新発売・近日発売予定の製品を展示。情景用素材では、緑色のウレタンスポンジを細かくカットした「グランドカバー プロ」が、グリーン・ダークグリーン・イエローグリーンの3色で発売される。価格は各550円。道路脇や線路際の草地、山肌や樹木など、さまざまな緑の表現に活用できるという。
樹木を自作する際に役立つ「葉っぱの素」や「木の素」も発売。枝が折れない程度にプラスチック樹木の枝を曲げ、5cm角程度に切り分けた「葉っぱの素」を被せて接着すると、ジオラマを彩る樹木を作ることができる。葉の色もグリーン系3色、紅葉2色と白桜の計6色展開。木の高さや太さを作り分ける場合には、ワイヤー素材の樹木もある。
価格は、「葉っぱの素」各色と「木の素」プラスチック樹木(15本入り)が660円、ワイヤー樹木素材が880円。「葉っぱの素」各色とプラスチック樹木5本がセットになった「木の素キット」(価格660円)もある。
海・川の表現に適した素材として、「水の素シリコーン 透明」とその製作例も展示された。価格は、50g入りが1,628円、100g入りが3,168円。下地に水の色を塗り、その上から「水の素」を流し込むと、透明度の高い水の表現をジオラマに作ることができる。流した後、実用硬度に硬化するまで24時間程度かかるので、それまでに埃が付いたり、「水の素」がボードから流れ出たりしないよう対策する必要がある。
車両は2軸の木造有蓋貨車を中心に新製品を展開。ワ1形は扉の仕様違い、ワフ(緩急車)はカバーや窓の有無で細かく仕様が分けられている。有田鉄道や紀州鉄道(御坊臨港鉄道)の有蓋貨車も新発売。有田鉄道はコッペル社製蒸気機関車、紀州鉄道はディーゼル機関車も発売しているので、それらと組み合わせても良いだろう。価格は1,320~1,650円。
トロリーポールを1本または2本搭載した2軸単車は、近日発売予定・価格未定として試作品が展示された。半径の小さいカーブも走行でき、トロリーポールも搭載しているので、ローカル鉄道の電化区間をイメージして並べたり、走らせたりできる。筆者としては、トミーテック「ノスタルジック鉄道コレクション」と似た印象も感じたため、両者を組み合わせることで、省スペースでさらに懐かしい雰囲気を味わえるかもしれない。
16番(HOスケール)の銚子電気鉄道デキ3蒸気機関車は、3種類の塗装とトロリーポールまたはビューゲル仕様の計6パターンで発売。Nゲージよりもスケールが大きいとはいえ、小型でユニークな車両となっている。価格は、グレー・黒の車体色が2万350円、赤電カラーが2万1,450円。
その他、有蓋貨車の廃車体を倉庫に転用した「ダルマ倉庫 組立キット」や、レールクリーニングカー「モップ君」のリニューアル、ネタが自走して回る「すし電」など、車両、素材とも様々な製品が展示されていた。
■路面電車の「MODEMO」から、都電や箱根登山鉄道が発売中
続いて「MODEMO」のブランド名でNゲージの路面電車を数多く製品化しているハセガワを紹介。取材時点での新製品はなかったが、自社が保有しているジオラマを活用し、現在発売中の都電7000形・7700形と、箱根登山鉄道2000形のラインナップを展示していた。都電7000形更新車は、通常カラーの7002号、赤帯の7001号、青帯の7022号、「花電車」7010号を発売している。
7000形更新車を再度リニューアルして登場した7700形は、緑色の7701号、えんじ色の7706号、青色の7703号が発売中。7000形・7700形とも価格は8,690円。車番・行先表示が印刷済みで、前照灯・後部灯と前後の行先表示が点灯する。車長も短いため、R140までのカーブを走行できる。
箱根登山鉄道2000形は、スイス・レーティッシュ鉄道「グレッシャーエクスプレス」塗装の2017年仕様、1993年に3両編成化された当時の塗装、レーティッシュ塗装の初期仕様の3種類が発売されている。価格はいずれも1万5,180円。3両編成とはいえ、1両の長さは短く、R140までのカーブを走行できる。
都電7000形・7700形、箱根登山鉄道2000形ともにトミーテックからも発売されたことがある。しかし、都電はライトが点灯すること、箱根登山鉄道は3両編成であることに大きな違いがある。加えて、「花電車」や「グレッシャーエクスプレス」塗装といった、他のメーカーにはないラインナップもある。まだこれらの車両を持っていない場合は、入手するチャンスがまだある。
■さんけいのペーパーキット「みにちゅあーと」、鉄道模型ジオラマに
スタジオジブリ作品のジオラマを組立てキットとして手がける さんけいは、「みにちゅあーと」というシリーズ名で、鉄道模型のスケールに合わせたペーパーキットも発売している。会場では、「みにちゅあーと」シリーズ、スタジオジブリ制作映画のジオラマ組立て例などが展示されていた。
製品は、レーザーカットで加工された硬質紙からカッターで部品を切り出し、木工用接着剤を使いながら組み立てていく。最後まで組み立てると、紙素材とは思えないほど精巧な建物が完成する。筆者も過去に「みにちゅあーと」シリーズを組み立てたことがあるが、大手メーカーのストラクチャーにはないデザインの建物が多く、プラ製ストラクチャーと合わせてジオラマに組み込んでも十分に情景になじむと感じた。
会場で展示されたジオラマおよび組立て例以外にも、さまざまな製品が展開されている。詳しくは公式サイトまたは通販ページもチェックすると良いだろう。ちなみに、グリーンマックスが8月に発売予定の「ストラクチャーアソートセット」に付属するペーパーキットのデザインも、さんけいが手がけている。
■和巧、国鉄型駅舎を「紙創り」のペーパーキットで展開
ペーパーキットを専門としている大分県の模型会社、和巧も静岡に出展。帝国海軍工廠、戦車・戦闘機のディテールアップパーツや、多彩な植物のペーパーキットを数多く手がける一方、Nゲージサイズの駅舎や植物のキットも販売している。会場では、会場限定品「国鉄型駅舎 一號駅舎」を含む各種製品の販売と、それらの組み立て見本の展示を行っていた。
基本的にはそのまま組み立てても味のある雰囲気に仕上がるが、屋根等を塗装すると、さらに実感的になる。組立て見本の駅舎は屋根を塗装しているだけでなく、照明も仕込まれており、ひと昔前のローカル駅舎で見られたであろう懐かしく暖かみのある情景を演出していた。なお、一般販売版の「国鉄型駅舎」も販売しており、そちらは「紙創り」公式通販ページで取り扱っている。
■鉄道模型ジオラマ制作のディディエフ、制作例や参考出品など展示
最後に、鉄道模型レイアウト・ジオラマの受注制作を行っているディディエフ(DDF)を取材した。会場では、同社がこれまでに手がけた制作例を紹介するとともに、各種ジオラマ素材の販売、レイアウトの販売・サンプル展示を行っていた。
同社オリジナルのNゲージレイアウトの完成品「水郷をゆく電車」が会場では特価49万5,000円となっていた。しかし、完成品のジオラマとは別に、途中まで仕上げた途中完成品も受け付けているという。その場合は価格が21万7,800円に下がり、情景が完成していない部分はユーザーが自由に制作できる。その他、Nゲージレイアウト「江ノ電夏物語」のサンプル展示もあった。
今回、自動運転装置とその組込み例を新たに会場で展示。HOスケールで湘南色の小型電車が自動で往復するジオラマを参考出品として見ることができた。取材時点では、製品としての発売日・価格は未定とのこと。単純な往復やスイッチバックに対応し、装置単体、装置を組み込んだ状態のジオラマとも受注を受け付けるという。
ディディエフのジオラマ制作は基本的には受注生産となるため、導入を検討している法人・個人は一度相談してみると良いだろう。
車両・ストラクチャーともにさまざまなメーカーから多数の製品が展開されている鉄道模型だが、今回取り上げたように、大手メーカーが発売していない種類の車両・ストラクチャーも多い。自分の並べたい車両や、再現したい情景に応じてそれらを組み合わせることで、独自の世界観を実現させることができる。この中に気になる製品やメーカーなど見つかったら、ぜひ各社の公式サイトや通販ページなども確認してみてほしい。