現在、劇場上映中の東映Vシネクスト『暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー』は、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』と『機界戦隊ゼンカイジャー』という、超個性的な2つの「スーパー戦隊」がお互いの力をフルに発揮して、巨大な悪に立ち向かうスペシャルな作品である。
人間とキカイノイドで構成された『ゼンカイジャー』がファミリー的なチームワークを誇る戦隊だとすれば、『ドンブラザーズ』はリーダー格の桃井タロウをはじめ、メンバーそれぞれが宿命や弱点、悩み、苦しみ、問題点などを抱え、なかなかひとつにまとまらない戦隊として、その「一筋縄ではいかない」複雑なメンバー間の人間関係が興味深いドラマを生み出していた。
Vシネクスト上映記念インタビューの今回は、ドンモモタロウ/桃井タロウ役の樋口幸平と、ドンドラゴクウ・ドントラボルト/桃谷ジロウ役・石川雷蔵のスペシャル対談をお届けする。
『ドンブラザーズ』最終回でドンブラザーズとしての記憶をすべて失ったタロウ、そしてタロウに代わって新たにドンブラザーズのリーダーになったジロウが、どのような「再会」を果たし、ふたたびヒトツ鬼との戦いの道を歩むのか、または歩まないのか、さらに『機界戦隊ゼンカイジャー』と力を合わせて見事に戦うことができるのか……。全国各地をめぐってファンを熱狂させてきた「ファイナルライブツアー」で培った仲間との「絆」を含めて、2人に『ドンブラザーズ』の1年間をふりかえってもらうと同時に、Vシネクストにかけた思いを語ってもらった。
――ただいま映画が好評上映中ですが、樋口さん、石川さんは今まさに『ドンブラザーズ ファイナルライブツアー2023』の真っ只中。5月28日の大阪・千秋楽公演を目前に控えたところですね。テレビ放送が最終回を迎えた後、東京ドームシティシアターGロッソ公演を経て、全国ツアーに出演されている現在のご感想を聞かせてください。
樋口:ファイナルライブツアーのステージショーは通常、役者よりも変身後のヒーローがメインになるはずなのですが、『ドンブラザーズ』では変身前の僕らが8割くらい出ています。井上敏樹さんの台本はセリフの量もすごいですし、とても『ドンブラザーズ』らしい内容。現在まで各地を回ってきましたが、ファンのみなさんからの反応がすごく良く、手ごたえを感じています。
石川:ドンブラ感が満載の舞台ですし、普通に敵と戦っているところもカッコいい。戦っているときと、そうでないときの「差」がすごいですね(笑)。舞台ならではの魅力として、そのとき「面白いな」と感じたことや、こういう芝居がやりたいと思いついたことをパッとアドリブで出したら、共演者のみんながちゃんと僕の動きに乗っかってくれたり、ファンのみなさんが笑ってくれたり、反応をしてくださるのでとても楽しいです。
――テレビの撮影と違い、ステージだとみなさんが一緒にいる時間が今までより長くなったと思います。行動を共にすることで、お互いの良い部分が改めて見えてきたのではないでしょうか。
樋口:Gロッソやファイナルツアーでは、雷蔵に助けられることが本当に多く、ありがたいなと思っています。みんなで集まって、いいものを作ろうと思うと、いろいろな意見が出てひとつにまとまらないときがあります。そんなとき雷蔵は「幸平くんがこう思ってるんだから一回やってみよう」と、助け船を出してくれるんです。
石川:それは、幸平くんが優しくて、人の意見を否定しないからだよね(笑)。全体から見ると正しいと思えることでも、相手の勢いに押されてしまいがち。
樋口:みんなの意見を聞いているとなかなか自分の意見が言えなくなることがあるんです。
石川:みんなが熱くなって意見が交錯することって、よくあるじゃないですか。そんなとき、頭ごなしに否定をしない幸平くんの優しさがすばらしい。だからこそ、誰かが幸平くんを押さないといけないな、って思っていました。
――今回のVシネクスト『ドンブラザーズVSゼンカイジャー』の台本を読まれたときの率直な感想はいかがでしたか。
樋口:こんなにあっさり、タロウの記憶が甦るのか……という驚きですね。1年間かけて迎えた、あの切ない最終回は一体なんだったんだ(笑)。俺たちの50話はなんだったんだって(笑)。
石川:それは僕も思いました。すごく簡単なシチュエーションで思い出したよね。
樋口:でも、そういうのが『ドンブラザーズ』のいいところ。ファンの方たちは「これがドンブラザーズだよね」ってわかってくれますし、こういうノリがあるからこそ愛してくれたんじゃないかなと。
石川:うんうん。
樋口:井上さんの台本にみんなが助けられた。だから今回も自分はもらった台本を全力でまっとうするだけだ!と気合いを入れて読み込んでいました。
石川:僕もそうですよ。去っていくタロウさんに代わってジロウがドンブラザーズを任され、あんなに感動的に終わったのに、Vシネクストでのジロウは「お金」に動かされる存在になって、いろんなところを支配しているという……。これまで、イヤな奴として現れながらいろいろな出来事があって、いい青年になったと思ったのに。今までのジロウは何だったんだ(笑)!
樋口:まあ、そう思うよね(笑)。
石川:でも、こうなってしまうのも『ドンブラザーズ』だから、って思えるようになりました。最近、便利な言葉になってきました。「それってドンブラザーズだから」(笑)。何をやっても、どんな動きでも「ドンブラ」色に染められる。どんなハチャメチャな展開になっても、作品のテイストがまったく壊れないんです。こういう台本であるなら、これはこれで俺はやるしかない!と覚悟を決めましたけど、また子どもたちから嫌われたらイヤだなあ……(笑)。
樋口:精神的にすっかり変わってしまったお供たちに、一人ずつ会いに行くシーンは楽しく演技をさせてもらいました。お金の誘惑に負けるという生々しい部分が出てくるのはとても面白い。せっかくみんなと再会できたのに、自分(タロウ)との距離が開いちゃって悲しい、切ないといった気持ちを芝居に込めています。