第73期ALSOK杯王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は、一次予選の森内俊之九段―佐々木勇気八段戦が5月9日(火)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、103手で勝利した佐々木八段が二次予選進出まであと1勝としました。

鉄板流の雁木戦法

振り駒で先手となった佐々木八段が角換わりの序盤戦を志向したとき、角道を止めて角交換を拒否したのが後手の森内九段の注文。駒組みの結果、本局は「森内九段の雁木対佐々木八段の右四間飛車」という構図に落ち着きました。右桂を跳ねて臨戦態勢の佐々木八段に対し、森内九段はいつ仕掛けられてもいいよう慎重な駒組みを続けています。

森内九段が右銀を6筋に繰り出した手が開戦の合図となりました。中央が手薄になったのを見た佐々木八段はすぐに4筋の歩を突いて応戦。仕掛け以降の進行は2月に指された本棋戦一次予選の丸山忠久九段―森内九段戦と類似の進行となっていますが、本局では自陣の形の違いを重く見た森内九段が激しい攻め合いを回避して一段落を迎えました。

森内九段の攻勢続く

盤面全体を使った激しい攻防が続きます。2筋に放たれた後手の角を歩で捕獲したのは佐々木八段の大きな戦果ですが、これを取らせる間に森内九段も先手の玉頭にくさびを打ち込むことに成功。形勢は難解ながら、後手の森内九段が主導権を握って終盤戦に突入しました。後手の雁木囲いは崩れた形ながら金銀の連携が良く、即詰みの筋がないのが見逃せません。

攻勢を強める森内九段は先手陣に角を打ち込んで佐々木玉を右辺に追い出します。手に乗って3筋に飛車を成ったのは一間竜の寄せ形を築く好調子の王手でしたが、意外にもここで寄せの決め手がなかったのが森内九段の誤算でした。佐々木八段も負けを覚悟したと振り返りましたが、感想戦でも明快な決め手は見つかりませんでした。

決め手与えず佐々木八段が逆転勝利

既に持ち時間を使い切っていた森内九段は角を取って下駄を預けましたが、佐々木八段は周到な反撃を用意していました。いったん4筋に打った金をスライドして王手したのが寄せの決め手で、後手玉を1マス移動させたことでお手本のような一間竜の王手が決まりました。終局時刻は17時7分、自玉の即詰みを認めた森内九段が投了を告げて熱戦に幕が引かれました。

勝った佐々木八段はこれで一次予選決勝に進出。二次予選進出をかけて島朗九段―高野智史六段戦の勝者と対戦します。

  • 両者の対戦成績は佐々木八段から見て3勝1敗となった(写真は第30期竜王戦決勝トーナメントのもの 提供:日本将棋連盟)

    両者の対戦成績は佐々木八段から見て3勝1敗となった(写真は第30期竜王戦決勝トーナメントのもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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