食事の席などで使われる「お粗末様でした」という言葉ですが、詳しい意味や使い方がわからないという人も多いでしょう。

本記事では「お粗末様でした」の意味や正しい使い方と例文、返答方法を紹介します。言い換えや英語表現、語源もまとめました。

  • お粗末様でしたとは

    「お粗末様でした」の意味や使い方はもちろん、類語や英語表現、返事の仕方も紹介します

「お粗末様でした」の意味・語源とは

「お粗末様でした(おそまつさまでした)」とは、ホームパーティーや親戚の集まりといった場面で手料理を振る舞った際や、楽器の演奏を披露した際などに、自分が提供したものや労力について謙遜の気持ちを表現する言葉です。

主に「ごちそうさまでした」「ありがとうございました」などのお礼に対する返答に使われます。

「お粗末」という言葉は皮肉の気持ちを込めて使うこともあるため、一見するとネガティブなイメージがあり、「お粗末様でした」を目上の人に使うことをためらう方もいるかもしれません。

しかし自分の料理などに対して「お粗末様でした」を使うことは、へりくだった丁寧な表現であるため、目上の人に使っても問題ありません。

なお「お粗末様でした」は、日本人が大切にするおもてなしの心からきているといわれています。自分が相手に提供した料理が、たとえ素材にこだわり、何時間もの手間暇をかけて作られていたとしても、強く主張せず「大したものではありません」と謙遜する気持ちの表れです。

「お粗末様でした」の使い方・例文

  • 「お粗末様でした」の使い方・例文

ここでは「お粗末様でした」の使い方を、例文でご紹介します。食事のシーンだけでなく、食事以外のものを提供した際にも使われることがあります。

料理を振る舞った場合

「お粗末様でした」は、自宅などで料理を振る舞った場合に使用したり、外食に行った際にお店の人から言われたりすることが多い言葉です。

例文は以下の通りです。

【例文】自宅で料理を振る舞ったとき
食べ手:「ごちそうさまでした。とてもおいしかったです。」
作り手:「お粗末様でした。」

料理を食べた相手から「ごちそうさま」とお礼を言われた際の返答に使用します。「この程度のものしか出せませんが」「大したものではありませんが」など、控えめな姿勢を表す言葉です。

【例文】お店に食事をしに行ったとき
客側:「ごちそうさまでした。」
店側:「お粗末様でした。またいらしてくださいね。」

外食の際に、食事が終わった後や帰り際など、お店の方へ「ごちそうさまでした」と声を掛けた場合に、返答として使用されることもあります。

食事以外に、何か芸などを披露した場合

「お粗末様でした」は、食事以外でも自分が提供した芸などに対して使用するケースもあります。

例えば、知人をピアノの演奏会に招待したときの例を見てみましょう。

【例文】ピアノの演奏会が終わった後
招待された側:「本日はお招きいただきありがとうございます。素晴らしい演奏でした。」
招待した側:「こちらこそお越しいただきありがとうございます。お粗末様でした。」

ここでは、食事シーンと同様に、自分のピアノの腕前を謙遜して「お粗末様でした」を使用しています。

ちなみに、謙遜ではなく自嘲の意味合いで「お粗末」を使用するケースもあります。

【例文】
この作品はお粗末だから、次の作品展には出せない。

「お粗末」という言葉は、優れたものではない、技術的に劣ったものとして、謙遜だけでなく自嘲、冷やかしなどの気持ちを込めていう意味もあります。

この場合は自分の作品を自嘲し、シビアな評価をする意味で「お粗末」という言葉を使っています。周囲の評価に関係なく、自分自身が納得できていないことがわかります。

本人以外が言うと失礼に当たるので注意

  • 「お粗末様でした」を使用する際の注意点

「お粗末様でした」を使う場合に注意しなければいけない点は、料理などを提供した本人以外が言うと、提供した本人に対して失礼に当たることです。

自分が作った料理を謙遜して言うことはあっても、他人から「お粗末」と表現されるとなると不快に思うのは当然です。

例えば、自宅に知人を招いた際に、自身の妻が作った料理に対して、夫である自分が「お粗末様でした」と言うことは、夫婦げんかの原因となる可能性があります。

また、外食時に自分が食事代をおごった際に、おごった相手から「ごちそうさまでした」と言われることがあります。その際に「お粗末様でした」を使うことは不自然ですし、お店の人に不快な思いをさせるかもしれません。この場合は「どういたしまして」など、別の言葉に言い換えるといいでしょう。

なお「お粗末様でした」という言葉自体を嫌う人もいます。「つまらないものですが」などと同様に、「価値のないもの、自信がないものを自分に提供してきたのだろうか」と捉えられるケースもないわけではありません。

「お粗末様でした」と言われた人全員が、その謙虚さや控えめな姿勢を、前向きに受け取るわけではないということを理解しておきましょう。

「お粗末様でした」に対する返し方

食事のシーンで相手側から「お粗末様でした」と言われた場合の、主な返し方は以下の通りです。

  • おいしかったです
  • ありがとうございました

手料理や飲み物などを頂いたら、「おいしかったです」と味が良かったことを伝えましょう。具体的にどのようなところが良かったかを伝えると、作り手側により喜んでもらえるでしょう。

また、丁寧なおもてなしに対し「ありがとうございます」と感謝の意を伝えることもおすすめです。

「お粗末様でした」に対しては、「粗末なものではない」という気持ちを、褒め言葉やお礼にしてお返しするよう、意識してください。

「お粗末様でした」「粗末」の類語・言い換え表現

  • 「お粗末様でした」の類語・言い換え表現

「お粗末様でした」という言葉は、前述のように使う場面や相手によっては失礼に当たる可能性があるため、使う前に慎重に判断することが大切です。

ここでは「お粗末様でした」の言い換えに使える表現や、類語を紹介します。

お口に合いましたか

手料理を振る舞って、相手から「ごちそうさまでした」とお礼を言われたら、「お口に合いましたか」と返答するとコミュニケーションが深まります。

「口に合う」とは、料理の味付けが好みのものであることを表す言葉です。食事を終え、お礼やねぎらいの言葉を掛けられた際に使うと、料理の感想をスムーズに聞き出せます。

聞かれた側も「この料理がおいしかった」「作り方を教えてほしい」など会話がつながりやすく、楽しかった時間を共有できるためおすすめです。

料理を卑下しているわけでもなく、また他人の作った料理に対しても使えるので、外食でおごった際にお礼を言われたときなどにも使用できます。

どういたしまして

「どういたしまして」は、お礼を言われた際に幅広く使える挨拶の一つです。「どう」に、「する」の謙譲語である「いたす」、丁寧語の「ます」で構成された丁寧な表現です。

ただし、「どういたしまして」を目上の人に使うのは避けた方が無難です。「どういたしまして」には、「大したことはしていないから気を遣わないで」という意味があり、目上の方に使うと上から目線に聞こえる可能性があるからです。

よろしゅうおあがり(関西の言葉)

「お粗末様でした」の言い換え表現に、関西地方で使われている方言の「よろしゅうおあがり」があります。

「よろしゅうおあがり」は、「よく料理を食べてくれましたね」の意味です。振る舞った料理を相手が完食した際に主に使用されます。親が子どもへ、食後にこう声掛けする家庭もあるそうです。

ただし「よろしゅうおあがり」は関西の方言であるため、地域によっては意味が通じないケースもあります。

お草々様でした

「お粗末様でした」と似た表現に「お草々様でした」という言葉があります。読みは「おそうそうさまでした」です。「お草々」には、十分に行き届かず、客あしらいが粗略であるという意味があります。

「お粗末様でした」との違いは、食事についての言葉ではなく、対応についての言葉である点です。

おもてなしした相手からのお礼に対し、「十分なおもてなしができませんでしたが」と謙遜する意味を込めて「お草々様でした」と使用します。

至らぬ

「お粗末」の類義語としては「至らぬ」が挙げられます。ビジネスシーンでもよく使われる言葉で、「未熟である、不十分である、配慮が行き届かない」という意味です。

例えば「自分は未熟である」と謙遜して表現する場合に「至らぬ者ですが、今後ともどうぞよろしくお願い致します」などと使われます。

また「配慮が不十分で申し訳ない」という意味で、「至らぬ点が多く申し訳ございませんでした」などの形でも使用します。

「お粗末様でした」の英語表現

  • 「お粗末様でした」の英語表現

「お粗末様でした」は日本語特有の表現であるため、そのまま直訳できる英語表現はありません。

英語圏に住む人々はへりくだる表現はあまりしないので、感謝の気持ちを伝えられたり褒められたりしたら、素直に受け取り、こちらも「Thank you」と返すといいでしょう。

A:「That was so delicious!」(とてもおいしかった!)
B:「Thank you.」(ありがとう)

「お粗末様でした」は謙遜の気持ちを表す言葉

「お粗末様でした」という表現は、謙遜の気持ちを表す日本ならではの言葉です。主にお手製の料理を振る舞った際や、芸などを披露した際に、そのお礼に対する返答で使用します。

使う場面や相手によっては失礼に当たるケースがありますので、言葉の使い方に迷ったときはぜひこの記事を参考にしてください。