女優の土屋太鳳が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、7日・14日の2週にわたって放送される『人力車に魅せられて 3 ~浅草 女たちの迷い道~』。東京・浅草で人力車に魅せられた女性たちの奮闘を追った作品だ。

厳しい修業の中で奮闘する姿に、強く共感したという土屋。また、彼女たちが人力車に魅せられたように、第1子を妊娠した今、「貴重な時間に魅せられています」とも語る――。

  • 『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当する土屋太鳳

    『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当する土屋太鳳

■ファンからもらった宝物の言葉「迷わなければ迷路から出ることはできない」

2人の乗客を乗せ、坂道を駆け上がらなくてはいけない人力車。操縦技術はもちろん、町の情報などを覚える必要があり、研修生の約7割が俥夫(しゃふ)になれず脱落してしまう厳しい世界だ。

その研修生の指導担当を務めるのが、大学4年生のミイさん(23)。かつては卒業試験に落ち続けた“問題児”だったが、「すぐに諦めてしまう自分を変えたい」と、歴代最長となる10カ月も研修生を続け、念願の俥夫となった。

ほかにも、諦めずに俥夫を目指す女性たちが登場するが、彼女たちに「とても共感しました」という土屋。「諦めることも時には本当に大切なことですが、諦めるときには、それまでの時間や思いも、一旦、手放す決意を持たなくてはなりません。私は仕事と大学の両立が難しく、8年という時間をかけて卒業しましたが、その時間はかなりつらいものでした。彼女たちも、カメラが捉えていないつらさや重さを持ち続けてこられたと思うんです」と想像し、「続けようとする勇気は、先が見えない分、本当にパワーが必要だと思います」と強調する。

何度も失敗し、もがき続ける研修生たちの姿には、自身の駆け出し時代を重ね合わせた。

「私が10代の頃は学園モノの作品がたくさんありました。作品を掛け持ちしていた人もいますが、だいたい1クラスほどの人数の“同級生”がいたことになります。その人たちが全員、今も同じ職業に就いているかというと、そうではない現実があります。才能だけでも努力だけでも続けることはできないし、急に何かのスイッチが入るわけではなく、毎日の積み重ねがスイッチになっていく…。その実感を、研修生の方々の姿から思い出しました」

そんな研修生を一人前に育てるのが、「東京力車」の西尾社長やダメ研修生の請負人・押木さん。彼らのように時に厳しく、温かく見守ってくれる存在を聞くと、「家族です。この存在がなかったら、間違いなく私は今ここにいないと思います」と断言する。

一方で、「家族でも届かない世界が仕事にはあって、そこをかき分けて支えてくれるのが友人だと思います。私の場合は友人という感覚の中に“ファンの方々”も入ります。SNSでしかやり取りできない方々もいらっしゃいますが、確実に心を支えてくださいました。『迷わなければ迷路から出ることはできない』という言葉は、SNSのコメントで頂いた宝物です」と教えてくれた。

  • 人力車を引くミイさん (C)フジテレビ

■新たな命を宿して気づいた「人の身体のすごさ」

かつて、人力車をめぐる人々を描いた短編映画『力俥 -RIKISHA- 鎌倉純愛編』(2013年)に出演した経験もあるが、「あの作品は、まさに私が迷っていた真っ最中に出会った作品でした。あの当時、私はお仕事がなく、年に1回ドラマか映画のオーディションに受かることが目標でした。その目標はかろうじてクリアしていたのですが、“職業”として選べるかどうか分からない。すごく悩んで『力俥 -RIKISHA-』の現場でもいろいろな方々に相談をしながら撮影をしました」と回想。

また、「あのとき出会った俥夫の方のプロ意識は、私の役作りの基本になっていると思います」といい、今回のドキュメンタリーは自身の原点を再確認する場にもなったようだ。

今回の番組タイトルは『人力車に魅せられて』だが、土屋が今“魅せられている”ものは、「人の身体のすごさ」。それは、自分の中に新たな命を宿したことで気づかされたものだった。

「今まで私は一般的な“成長”や“年齢”でしか自分の身体の変化を感じることがありませんでした。でも、こんなにも人は短期間で全身の状況や感覚が変わるのかと、日々驚いています。人の身体はすごいと思ってきたけれど、想像以上でした。そしてすごさのレベルがもっと小さくて、もっと多くて、もっと激しい。毎瞬毎瞬、奇跡の積み重ねでできているのが命なんだと実感しながら、その貴重な時間に魅せられています」

  • 研修生(左)を指導するミイさん (C)フジテレビ

●土屋太鳳
1995年生まれ、東京都出身。08年公開の映画『トウキョウソナタ』で女優デビュー、10年に大河ドラマ『龍馬伝』でドラマ初出演を果たした。翌年のドラマ『鈴木先生』での女子生徒役で注目を浴び、その後も連続テレビ小説『まれ』(15年)でヒロインを演じるなど、活躍を続けている。映画『orange -オレンジ-』(15年)で日本アカデミー賞新人俳優賞に輝き、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17年)では同優秀主演女優賞に選ばれた。今後は、映画『マッチング』の公開、舞台『印象派NEO vol.4 「The Last of Pinocchio ピノキオの終わり」』の上演が控える。