キリンホールディングスは4月13日、明治大学 中野キャンパスにて「大学生のためのお酒との付き合い方セミナー」を開催した。数年来のコロナ禍により、キャンパスには「そもそもサークルの新歓コンパを経験したことがない」という現役生も数多く在籍するのが現状。そこで大学側も、キリンのこうした啓発活動を歓迎している。

  • キリンホールディングスが「大学生のためのお酒との付き合い方セミナー」を開催

■”正しい飲み方”とは?

「大学生のためのお酒との付き合い方セミナー」は、同じ中野セントラルパークに本社を構えるキリンホールディングスが、酒類メーカーとしての知見を活用したセミナーの実施を大学側に提案して実現したもの。当日は大学で活動する13団体ほどのサークルから、幹事を中心にした40名ほどの学生が出席した。

  • 明治大学 中野キャンパス(東京都中野区中野4-21-1)

「大学としても新歓コンパは決して悪いものではなく、人と人を結ぶ、コミュニケーションを活発化させるものだと捉えています」と話すのは、明治大学 中野キャンパス事務部の藤嶋利生氏。新型コロナウイルスが蔓延したのは、現在の4年生が入学した2020年春のこと。したがって、ほとんどの学生が新歓コンパを経験していない。このことを念頭に「アルコールとの付き合い方など、今回のお話は学生にとって非常に参考になるのではないかと期待しています」と話した。

  • 配られた冊子に目を通す学生たち。アルコールのパッチテストも用意された

プレゼンには、キリンホールディングスから鈴木雅登氏が登壇した。その冒頭「まずは、ご自身のアルコール体質を確認してみましょう」と、パッチテストの実施を促す鈴木氏。全く飲めない人は赤、アルコールに弱い人はピンク、アルコールに強い人は色なし、というように判定色の出方で自身の体質を知ることができるという。

  • キリンホールディングス コーポレートコミュニケーション部 主務の鈴木雅登氏

  • アルコール体質チェックを実施。20分ほど待てば結果が現れる

そして”酔いのメカニズム”について丁寧に解説していった。アルコールは胃と小腸に吸収された後、血液によって全身をめぐり、肝臓に運ばれて分解されるが、その過程における「アルデヒド脱水素酵素」の働きが日本人は弱い、と鈴木氏。吸収されたアルコールが脳におよぼす影響についても触れ、深酔いしすぎるとマヒが脳全体に広がり、呼吸中枢(延髄)も危ない状態になる、と解説する。

  • 人はなぜ酔うのか? 酔いのメカニズム

  • パンフレットでも、アルコールが脳におよぼす影響について紹介

「20歳未満の飲酒は法律でも禁じられています。それは、人間の脳は思春期の間に大きく成長するから。具体的には、知性、理性、創造力が形成されていきます。でもその時期にアルコールを飲んでしまうと、脳の司令塔であり理性的な判断をつかさどる前頭前野、感情の中心である偏桃体に大きな影響をおよぼしてしまうんです」と鈴木氏。アルコールは新しい記憶を蓄える「海馬」の神経細胞にも障害を与えるため、思春期からアルコールを大量に飲み続けると記憶機能が低下する、と紹介した。

  • 未成年の飲酒は記憶機能を低下させる

  • サークルの上級生として、新入生の未成年飲酒をどのように防ぐか。そんな観点から参加している学生もいた

イッキ飲みのリスク、そして飲酒の強要に関わる罰則についても説明。急性アルコール中毒の搬送者は東京だけで年間2万人近くおり、皆さんにも身近な話です、と強調する。また女性はアルコール分解能力が(平均で)男性の約3/4しかないことも紹介し、女性の安全な飲酒量は男性の約半分と覚えておきましょう、と呼びかけた。

ここで、参加者のパッチテストの結果を確認。会場では半分くらいの学生が、判定色なし(アルコールに強い)という結果だった。

  • 半分くらいの学生が、飲んでも顔が赤くなりにくい「アルコールに強い」という結果に

日本人のアルコール耐性については、「普通に飲める」NN型が56%、「弱い」「ほどほどに飲める」ND型が40%、「飲めない」DD型が4%というデータも紹介。黒人、白人の100%がNN型であるのに対し、日本人は半数超しかアルコールに強くない、という事実に学生から驚きの声が漏れる。また酔いの程度は純アルコール量に比例するもので、アルコールの種類は関係ないこと、そして純アルコール量(g)は飲酒量(ml)×アルコール度数(%)×比重0.8で算出できることも解説。「ちなみにキリンビールではアルコールの有害摂取の根絶に向け、2023年末までに、国内で販売する主なアルコール商品については、含まれる純アルコール量を表示していきます」と紹介した。

  • 日本人のアルコール耐性について

  • 純アルコール量(g)の算出方法

最後に鈴木氏は「週に2日はお酒を飲まない休肝日をつくりましょう。また食べながら飲むことで、胃壁を荒らさず、肝臓の負担も軽減できます。料理を楽しみながら、ゆっくり飲むことをオススメします。脱水症状を防ぐため、水と交互に飲むことも忘れないでください」と”正しい飲み方”を紹介してセミナーを終えた。

  • キリンの提案する「スロードリンク」という飲み方

セミナーの終了後、サークルの幹事長を務めているという3年生の男子学生に話を聞いた。「(コロナ禍が落ち着いたことから)ようやく、少しずつ飲み会ができるようになってきました」と学生。お酒は好きなほうで、休日には友だちと飲むこともあります、と笑顔を見せる。

セミナーで学んだことについて聞くと、「最近はなくなったとは思いますが」としたうえで、「もしかしたらサークルのコンパでもイッキ飲みとか、コールとか、やる人が出てくるかも知れない。しっかり注意していきたいですし、常に水も用意できたらと思いました」。

”正しい飲み方”についてはサークルの皆んなとも共有したいとし、「もともと節度ある飲み会をしてきましたが、これからも無理な飲み会はしないように気を付けていけたらと思っています」と話してくれた。